2010年度 新聞広告クリエーティブコンテスト

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2010年度「新聞広告クリエーティブコンテスト」結果発表

 日本新聞協会広告委員会が今年度「元気」をテーマに実施した「新聞広告クリエーティブコンテスト」に1,209作品のご応募をいただきありがとうございました。本コンテストは、若いクリエーターの皆さんに、新聞広告の可能性を広げるような独創的で斬新な作品を作ってほしいとの趣旨で実施しています。 クリエーターの副田高行、一倉宏、児島令子、佐藤可士和、服部一成、前田知巳の各氏と新聞協会広告委員会の今井秀和委員長、大橋善光、安藤靖彦、白石真古人の各副委員長の10人による審査会を経て、最優秀賞をはじめとする5賞5作品を決定しました。

 最優秀賞の「元気にさせるハンコ」は、「課題に対する回答として丁寧につくられており、新聞に掲載された際に、コピーが非常に高いメッセージ性を持つ作品」として、高く評価されました。入賞作品は、日本新聞博物館(横浜市中区)で11月から展示します。

入賞作品 テーマ:「元気」

※画像をクリックすると拡大されます。
[略号凡例]
CD:クリエーティブディレクション・AD:アートディレクション・C:コピー ・D:デザイン ・I :イラスト
最優秀賞
受賞者「元気にさせるハンコ」
武重浩介さん
(電通)

CD・C= 武重浩介さん(写真左)
AD= 三上智広さん(ジェ・シー・スパーク/写真中央)
D= 高木誠二さん(ジェ・シー・スパーク/写真右)

 

○コメント
「たいへんよくできました」というハンコ。それが象徴するようにたった一つの答えにたどりつくことが正解だと教えられて育ってきました。でも人生において正解を求めても幸せにはなれないんですよね。そもそも正解なんてないんですから。私たち一人ひとりが身近に元気になれる要素をもっているはず。そんな身近にある幸せに気づいて元気になってほしい。そんな思いをこめて制作しました。いろいろ言いましたがざっくり言うと、「出来の悪い自分が元気になれる原稿」をつくろうと思いました。「たいへんよくできなくてもいいんです」この言葉が新聞紙上に掲載されることが純粋にうれしいです。選んでいただき、ありがとうございました。

○プロフィル
1978年生まれ。電通入社後、営業局、海外勤務を経て第2クリエーティブ局所属。コピーライター。

優秀賞

受賞者「元気がでることわざ」
岡崎勝男さん
(イラストレーター)

 

○コメント
サッカー・ワールドカップで日本チームが快進撃を見せていたころ、ニュースで岡田監督の座右の銘は「人間万事塞翁が馬」であると伝えていました。
翌日の新聞でそのことわざが紹介されていました。
簡単に言えば、人生、山あり谷ありのような意味ですが、まさにその時の岡田監督の心境にぴったりだと感じました。
これが作品のヒントです。
新聞を開いて、よく耳にすることわざが載っていれば、みんな読んでくれるのではないかと。
読んだあと、少しでも明るい気分になればと思い制作しました。
今回の受賞は私を元気にしてくれました!ありがとうございました。

○プロフィル
1956年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。イラストレーター。

コピー賞

受賞者「エコと元気」
福島崇憲さん
(コピーライター)

AD= 辻昇一さん(エーイー/写真中央)
C= 福島崇憲さん(写真左)
D= 辻昇一さん(エーイー)、安部和昌さん(エーイー/写真右)

 

○コメント
今回、選んでいただきありがとうございました。
この広告を一緒に制作した辻さんは元気をこよなく愛する人です。
「元気が一番、元気に感謝」とよく言っています。
なので、テーマがすごく私たちに合っていたんだと思います。
制作過程で「どうしたら元気が出るんだろう・・」「そもそも元気って何?」というところから徹底的に話し合いました。
エコって確かにいいことなんだけど・・・・・
どこかその言葉自体が疲労しているのではないかというのが共通認識。
コピーはそんな視点に元気を絡めて書かせていただきました。
そして、辻さんのデザインで一気に広告へと昇華させてもらいました。
本当にありがとうございます。もちろん安部さんにも感謝です!

○プロフィル
1981年生まれ。アルフォックスを経て、現在、コピーライター。

デザイン賞

受賞者「気合い」
長尾聡一郎さん
( ジェイアール東海エージェンシー)

CD・C= 長尾聡一郎さん(写真左)
AD・D=

津田高穂さん(サン/写真中央)

I= 荒巻美佐さん(サン/写真右)

 

○コメント
元気って理屈じゃないよなぁ。
ハチャメチャだったり、アホっぽかったり、意味不明なものだったり…。
説明できないけどなんか元気が出る。そんな広告をまずは目指しました。
そして論理的思考や美意識、広告の作法はすべて(トイレで排出物を流すみたいに)捨ててみました。
その結果が、この結果。
これもデザイナーの津田さんと、まだ直接お会いしたことのない奇才・イラストレーターの荒巻さんのおかげです。
日ごろから広告で見る人に元気を与えたい。広告とはそうあるべきだ、と考えているので今回のテーマで賞をいただけたことはとても喜ばしいし、自信につながります。僕自身もまわりの人に元気を与えられる、そんな存在でありたいです。

○プロフィル
1977年生まれ。広島県出身。ジェイアール東海エージェンシー制作部に所属。コピーライター。OCC賞新人賞、愛知広告協会賞新人賞、宣伝会議賞協賛企業賞など受賞。

学生賞
受賞者「ひとは、ひとりじゃげんきになれない」
杉江早紀さん
(名古屋総合デザイン専門学校グラフィックデザイン科)

 

○コメント
すばらしい賞をいただき、ありがとうございます。
難しいテーマでしたが、自分が元気になるときはどういうときだろう?と考えて制作しました。
嫌なことがあって落ち込んでいるとき、大切な人に話を聞いてもらうだけでほっとして、元気になる。
また、逆に相手が落ち込んだ様子で、どうしたんだろうって心配に思っているときに、話をしてくれるとほっとして元気になる。
きっと人は誰かとの会話で元気をもらうんだと思います。
それを思い出させてくれたコンテストでした。

○プロフィル
1986年生まれ。名古屋総合デザイン専門学校グラフィックデザイン科在学中。

クリエーター6氏と新聞協会広告委員会正副委員長による審査会-

審査講評
審査委員長
副田 高行氏
右肩上がりが難しい現代社会で、価値観をどこに持って行くか。最優秀賞の「元気にさせるハンコ」は、すべてが100点満点である必要はなく、物差しはひとつではないというメッセージを出しています。「元気」に対する色々な考えが出ていたのが、今の時代を反映しているのかもしれませんね。
審査委員
一倉 宏氏

今の状況下では、「なぜ元気を出さなくちゃいけないの? 僕らも大変なのに、頑張ってるのに」と感じている若者が多いのかもしれませんね。そんな中、最優秀賞「元気にさせるハンコ」は、競争社会へのアンチテーゼ、掛け声よりも暖かい肯定など、やはり時代の体温をうまく表したメッセージだと思います。

審査委員
児島 令子氏

「元気」をど真ん中に表現したものよりも、優しさや人との関係を重視して、「愛」「絆(きずな)」といった過去のテーマに通じる表現が、応募作全体に多かったのが印象的です。なかでも学生賞の「ひとは、ひとりじゃげんきになれない」は、本当に心を元気にするのは何かという気づきを得られた作品です。

審査委員
佐藤 可士和
「元気」というテーマは難しかったようですが、入賞した作品は視点が通常とは異なったものが選ばれたと思います。広告は視点を提示するものであり、切り口が普通と違わないと、読者の目には留まらない。最優秀賞の「元気にさせるハンコ」は課題に対する回答を丁寧に作っていたと思いますね。
審査委員
服部 一成氏

優秀賞の「元気がでることわざ」は、辞典のような客観的な説明文だけで作っていながら、ことわざの選択ひとつにも作者の「元気」のとらえ方が表れていて、知恵を感じます。デザイン賞の「気合い」は、深く考え込まずに、あえて乱暴に言い切った身体的な表現方法がいいと思いました。

審査委員
前田 知巳氏
企業の業績とか生活とか、あまり明るいとはいえない記事が多い紙面の中で、「元気にさせるハンコ」が実際に掲載されたら、読者はちょっと気が軽くなるのではないでしょうか。他の広告媒体とは違って新聞広告だからこそ広げられるメッセージ表現の、一つの良い例だと思います。