一般社団法人 日本新聞協会

EXILEのパフォーマー兼三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEリーダー。
パフォーマーとして活躍するほか、ウォッシュ・ウエストモアランド監督Netflixオリジナル映画『アースクエイクバード』(2019年)、ショートフィルムのCINEMA FIGHTERS projectで行定勲監督『海風』(2019年)に出演するなど、俳優としても活動する。2021年11月24日に初の自伝的エッセー本『選択と奇跡 あの日、僕の名字はEXILEになった』を出版。

EXILEのパフォーマー兼
三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEリーダー。
パフォーマーとして活躍するほか、ウォッシュ・ウエストモアランド監督Netflixオリジナル映画『アースクエイクバード』(2019年)、ショートフィルムのCINEMA FIGHTERS projectで行定勲監督『海風』(2019年)に出演するなど、俳優としても活動する。2021年11月24日に初の自伝的エッセー本『選択と奇跡 あの日、僕の名字はEXILEになった』を出版。

EXILEや三代目 J SOUL BROTHERSのパフォーマーとして、そして役者として、幅広く活躍する小林直己さんに、少年時代に経験した新聞配達の思い出やエピソードを語っていただきました。毎朝どのような景色を見ていたのか。その経験は、今、どのように生きているのか。新聞を配達する日々が、初の自伝的エッセー出版へとつながるまでの“選択と奇跡”について、たっぷりお話しいただきました。

夜明けの仕事は
人をポジティブにする

新聞配達を始めたのは15歳の頃。理由はすごく単純で、「自由に使えるお金を稼ぎたい」から。なぜ新聞配達かというと、母や兄が新聞配達をしていてその仕事が身近だったこと、“夜明け”という時間帯に働けることの二つ。友達と遊ぶ時間を削りたくなかった僕にとっては、夜から朝にかけて働ける新聞配達がぴったりでした。

いざ始めてみると、自分に向いていると思えるポイントが他にもたくさんありました。まず体を動かせること。運転免許証を取得するまでは自転車で配達していたのですが、それがすごくいい運動になりマンションの5階まで一気に駆け上がっては、「昨日よりも何秒早く上がれた」と達成感を得て楽しんでいました(笑)。同じ販売所の人たちと配達スピードを競うこともありましたし、とにかく体を動かすことが好きだった少年時代の僕にとって、新聞配達がいいエネルギー発散になっていました。

そしてもう一つは、朝の美しい景色のなかで働きながら、いろいろと考え事ができたこと。10代の頃ってつい考え込んでしまいがちですよね。当時は思春期で、学校生活のこと、将来のことなど、悶々(もんもん)とする時間が多かった。そういう時は家だと、なかなかモヤモヤから抜け出せないのですが、新聞を配達して体を動かしながら考えていると、自然と前向きになれてパッと心が晴れるんですよね。街が動き出す最初の時間帯に足を踏み入れる神聖な感覚や、明るく変化していく空、凛とした空気、そういった夜明けの風景すべてが、思考をポジティブにしてくれるんです。

当時、自分が配達していたマンションの最上階から外を見ると、ちょうど太陽が昇る寸前で、地平線の向こうが白んでくるところでした。その光景が、とてもきれいで、貴くて。その瞬間、「今、見えている景色の向こう側を見てみたい」と感じたんです。初めて自分のこの先が楽しみに思えた、いわば“希望”に似た感覚。あの美しさは特別な思い出として今も心に残っています。

責任を求められることで
社会の一員であると実感

高校の頃、一時期、学校に行かなかったことがあったんですが、その時期も新聞配達は続けていました。家以外の場所で社会とのつながりを感じることはすごく大切ですが、僕にとってはそれが新聞配達という仕事であり、販売所だったのだと思います。アルバイトとはいえ仕事ですから、毎朝かならず配り切らなくてはならないし、雨の日になると濡らさないようにビニールをかけてから配る。チラシが入っていないと電話があれば、そのチラシ1枚を届けに行くこともありました。こうした責任を求められる場面があるたびに、社会に参加しているという実感がわいたし、大人への階段を昇るためには必要な経験でした。

だから今でも新聞は、僕にとって大切な存在。大人になってからも新聞の取材はうれしいですし、「新聞に自分が載っている」と思うと、なんだかくすぐったいような不思議な気持ちになります。

新聞はもっとも身近な
ドキュメンタリー

僕は、新聞は一番身近なドキュメンタリー作品だと考えています。昨日起きたことが今日にはもうまとまって載っている新鮮さ・ニュース性は、やっぱり読んでいて面白いですよ。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、社会の“当たり前”だったことが、ガラッと変わりました。僕が身を置くエンタメの世界もそれは顕著で、表現する場がなくなり、ファンの方々との接点もなくなるなか、ステイホームを迫られていたときは、「僕の存在意義ってなんだろう」と分からなくなったことがありました。

でもそんな状況から僕を救ってくれたのも、やっぱりエンタメだったんです。ふと流れる音楽でちょっと心が軽くなったり、海外の映画を見てチャレンジ精神が生まれたり。あらためて音楽をはじめとするエンタメの力のすごさに気づいて、リモートでの交流やSNS発信などコロナ禍でもできる表現を始めたところ、コメントなどの反応が返ってきて、その反応に救われたんです。「自分はここにいていいんだ」って。

コロナ禍で立ち止まったことが、自分のこれまでを振り返るきっかけになり、そしてその振り返りが、今回出版した半自伝的エッセー『選択と奇跡 あの日、僕の名字はEXILEになった』につながっています。新聞のように、新しい日常に直面し、葛藤(かっとう)する自分のドキュメンタリーが詰まった本になりました。『選択と奇跡』は、大きい、小さいは関係なく、生活のあらゆる場面に“選択”があり、その結果、いいことも悪いことも含めて“奇跡”が起きていて、その奇跡を拾い集めて今、生きているんだと思ったので、タイトルにしました。

夜明けの美しさや澄んだ空気、販売所の方が「お疲れさま」とくれる栄養ドリンクの甘さ、自分が配った新聞が誰かの生活を豊かに彩っているのだという手応えもすべて、「新聞配達をする」選択をしたからこそ出合えた小さな奇跡。その奇跡のかけらが集まって、今の自分を作っているのだと思っています。

一般社団法人 日本新聞協会