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2002年1月

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2002年日本の新聞界展望
「取材報道の自由への不当な制約には断固闘う」
  渡辺恒雄新聞協会会長新年あいさつから
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*日本の新聞総発行部数は5368万部
*集団的過熱取材で新聞協会が見解発表
*日米記者交換計画日程概要決まる
*Topics
--信毎、新工場本格稼働
--写真記者協会2001年度の協会賞作品決まる
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今月の話題>>>
 高額化したメディアの損害賠償額/2001年マスコミ関連訴訟から
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2002年日本の新聞界展望
「取材報道の自由への不当な制約には断固闘う

          渡辺恒雄新聞協会会長
新年あいさつから


 prsnt.watanabe波乱の幕開けとなった新世紀。米同時多発テロは世界中に最大級の衝撃を与え、一方で深刻な経済不況の危機を招来した。日本にあっても外交・安全保障の新たな局面に入り、経済環境も猶予ならない事態にたちいたっている。この時代環境にあって、新聞の役割はますます重大である。

 日本においては近年、メディアの集団的過熱取材や、報道によるプライバシー等の人権侵害に対する批判が高まり、個人情報保護法案、人権救済機関の設置に関する提言、青少年有害社会環境対策基本法案など、取材・報道を規制する動きが顕著になっている。

 これに対し新聞各社では、新たに記者憲章を制定したり、報道の検証や苦情処理のため第三者機関を設置するなど、主体的取り組みが広がっている。新聞協会でも、2001年末には、編集委員会が集団的過熱取材の問題を、自主的に解決するという認識のもとに、見解と対応策をまとめている。記者クラブのあり方についても、編集委員会は小委員会を設けて、従来の見解を全面的に見直しているところである。

取材・報道の自由を不当に制約する動きには、断固として反対するという新聞界の基本的な立場を、ここであらためて確認しておきたい。

 新聞の意義と新聞界の努力を、広く国民・読者に理解してもらう新聞総合PR計画「Read Me.」キャンペーンは、今年三年目を迎える。新聞協会の販売、広告両委員会とも、積極的に参画・連動する構えで、この計画への新聞界の総力をあげた取り組みが、喫緊の課題である。

 小泉首相が掲げる「改革の時代」の波は、新聞社自体にも押し寄せてきている。新聞事業、新聞経営のあり方から、記者をはじめとする人材の確保と育成、読者の信頼と支持を得られる紙面づくり、激変するメディア環境への対応など、新聞界全体で取り組むべきテーマも山積している。

 21世紀にあっても、新聞協会加盟社が新しい新聞倫理綱領、新聞販売綱領のもとに、国民・読者の要望にこたえ、新聞が報道メディアの中核であり続けられるよう、いっそうの努力をしていきたい。

日本の新聞総発行部数は5368万部

新聞協会調査による2001年10月現在の「新聞の発行部数と普及度」によると、日本の新聞の発行部数は5368万0753部で、前年比0.1%減だった。

 減少が大きかったのはスポーツ紙で前年比2.9%減(18万5461部減)の612万1701部、一方、一般紙は0.3%増(15万7383部増)の4755万9052部となった。米国同時多発テロ以降の緊迫する国際情勢をうけ、一般紙の部数が前年の減率から増率に転じたのが今回調査の特徴といえる。セット紙の部数が減少し、朝刊紙が増える傾向は、今回も変わりがなかった。調査対象紙は前年より2紙増えて124紙。

 また、総発行部数で前年を下回ったため、1世帯あたりの普及率は1.12部(前年比0.01部減)に減少。朝夕刊セット部数を2部として計算した部数は7169万4148部(同20万2181部減)、人口1000人あたり普及部数は567部(同3部減)だった。

 


<関連するデータは以下からリンクされています>
●新聞の日刊紙の発行部数と世帯数の推移
●地域別発行部数の推移、1部あたり人口、1世帯あたり部数
●新聞の戸別配達率



集団的過熱取材で新聞協会が見解発表

日本新聞協会は編集委員会(新聞、通信社など58社の編集局長、報道局長で構成)は、12月6日「集団的過熱取材(メディアスクラム)」について、取材者が守るべきガイドラインラインなどまとめた「見解」を発表した。

事件や事故の当事者、関係者に多数のメディアが殺到し、社会生活を妨げたり、プライバシーを不当に侵害するメディアスクラムについては、かねて批判があった。

新聞協会は「メディアがこの問題を樹種的に解決していくことが、報道の自由を守り、国民の知る権利にこたえることにつながる」とし、放送、雑誌などにも働きかける。

「見解」では、すべての取材者が最低限守るべきルールとして、?嫌がる当事者や関係者を集団で強引に包囲した状態で取材しない?通夜や葬儀、遺体搬送の取材では遺族らの心情を踏みにじらない?住宅街や学校、病院などの取材では静寂を阻害しない――などを挙げている。

一方、民間放送連盟も12月20日、集団的過熱取材による被害防止や問題解決のため、新聞協会とも連携を図ることなどを骨子とする留意点と対応策をまとめた。



日米記者交換計画日程概要決まる

   米中枢同時テロの影響で日程を再調整していた新聞協会の2001年度日米記者交流計画の概要が決まった。同計画は新聞協会と米国ワシントンにある記者研修組織ICFJ(International Center for Journalists)との協力プロジェクト。双方の記者は2月の13日から17日間の日程相手国を訪れる。日本側の参加記者はワシントン、ニューヨーク、アトランタ、シアトルなどを訪問、ワシントンポスト外務部次長とのテロ取材に関する討論、国連やCNN訪問などを予定している。

   米国からの参加記者は、日本の有力政治家や財界人、外務省、NTTドコモなどを取材、日程後半には沖縄を訪問、米軍基地や地元新聞社を訪れる予定。2月27日にはハワイの東西センターで双方の記者が合流し、総括討議を行う。


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信濃毎日新聞
40ページフルカラー体制の新工場が本格稼働

 長野県で発行されている信濃毎日新聞社(発行部数約47万部)の新しい印刷拠「長野製作センター」が12月10日、本格稼働した。日本で初の40ページフルカラー印刷体制を整えたほか、製版工程を省略化するCTP(コンピューター・トゥー・プレート)を導入した。稼働に伴い、長野市南県町の本社工場は閉鎖した。朝刊28万部、夕刊3万6千部を印刷する。

 製作センターの延べ床面積は約7,500平方?。東京機械のシャフトレス輪転機を5台ずつ2セット設置、40ページフルカラー印刷体制を整えた。どの面にもカラーが入れられる構成になっている。フィルム出力の工程を省略し、コンピューターから直接、刷版をつくるCTPの導入は、国内で日経、高知に次ぎ3番目となる。

 また、環境に配慮し新聞界で初めて、新聞を包装結束するビニールとポリプロピレン(PP)バンドを「紙と紙バンド」に転換した。結束機は東京機械製。


写真記者協会2001年度の協会賞作品決まる

 新聞・放送各社で構成される写真記者協会2001年度受賞作品が順次決まっている。

 写真記者協会は、東京、関西、北海道、東北、中部、九州の地区で活動しており、このほか関西スポーツ紙写真部長会がある。ここでは、東京、北海道の各写真記者協会賞と関西スポーツ紙写真部長会の3作品を紹介する。

東京写真記者協会受賞作品
受賞者=原田浩司記者(共同通信社)

北部同盟のカブール制圧で、外国通信社に先駆けて最初に現地入りして捕らえた「カブール陥落」


北海道写真記者協会賞受賞作品
受賞者=佐藤俊和記者(読売新聞北海支社記者)

狂牛病の安全宣言後も値がつかない牛を連れ帰る畜産農家の人と、厳しい表情の市場関係者(北海道最大の畜産基地十勝の家畜市場で)


関西スポーツ紙写真部長会
受賞者=荒木甫浩記者(共同通信社大阪支社)

カナダ・モントリオールでのニューヨーク・メッツ対モントリオール・エクスポズ戦でメッツの新庄剛志選手が捕球しようとした瞬間をとらえた「打球に飛びつく新庄」















今月の話題>>>

 高額化したメディアの損害賠償額/2001年マスコミ関連訴訟から

 2001年は、報道にかかわる名誉毀損訴訟などで500万円を超える損害賠償を命じる判決が相次ぎ、注目を集めた。日本におけるメディアへの損害賠償額はこれまで100万円以下から300万円程度だったが、2001年の判決のなかには、プロ野球の読売巨人軍の清原和博選手が「週刊ポスト」(小学館)を訴え、1000万円の支払いが命じられるケースもあった。メディアに対する読者・視聴者の不信や人権意識の高まりを背景に、高額化を容認する意見もあるが、公人である政治家への高額賠償を認めたケースなどについては、報道の規制につながるとの批判もある。

 日本の場合、名誉毀損の慰謝料の相場は1965年ごろから最近まで100万円以下から300万円程度で、かねて損害賠償額が欧米に比べ低いという議論があったが、米国などとの安易な比較には警鐘を鳴らす意見もある。米国では、日本に比べてはるかに広く表現の自由が保障されており、特に政治家などの公人の場合、「現実的悪意」が報道側にあることを公人の側が立証しなければならないという法理が確立している。

 日本の裁判所は、有名人や公人は名誉が一般人より高いため、毀損された際の被害は大きいと判断し、高額賠償額を容認する傾向にあり、これを大きな問題と指摘する意見も多い。

 訴えられるメディアは週刊誌が多いが、日本では、民事の名誉毀損訴訟で、懲罰的あるいは制裁を与えて再発を防ぐことを目的に賠償を命じることは許されていない(1997年の最高裁判決)。一方、マスメディアの報道による人権侵害や名誉毀損が「報道被害」と批判されている現状がある。「報道被害」が政府与党のメディア規制の口実に使われている昨今の状況も考えると、週刊誌の名誉毀損に対する高額賠償が、新聞も含めたメディア全体への批判を正当化することにもつながりかねず、高額化の影響は大きい。

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