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2002年2月

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*新聞協会が記者クラブ「新見解」発表
*「ニュース配信サービスの抗弁」で最高裁が初判断 記事掲載新聞社にも責任
*法務省が人権擁護法案の大綱発表 取材行為も対象
*新聞博物館で2001年号外展開催
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*Topics
--日経が4月から文字拡大
--朝日・川崎工場が環境管理の国際規格(ISO)取得
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今月の話題>>>
 2002年の新聞販売界 販売競争激化の兆し 
 新聞各社で報道検証組織  外部有識者招き設置相次ぐ
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新聞協会が記者クラブ「新見解」発表

 日本新聞協会編集委員会は1月17日、全国の記者クラブの基本的指針となる見解を、1997年見解から4年ぶりに改定し、新見解をまとめた。同見解は1月23日開催の日本新聞協会理事会の了承を得た。記者クラブは、新聞・放送各社の記者によって構成される組織で、官邸、日銀はじめ全国の公共機関(中央行政官庁、都道府県や市、警察本部)などの建物内に置かれた記者室を取材拠点としている。

 記者クラブの発端は1890年(明治23年)帝国議会が開会した際に傍聴取材を要求する記者たちが結成した「議会出入り記者団」。第2次大戦後、占領軍の意向で「記者の親睦団体」と位置づけられたが、以後記者クラブの性格や意義をめぐるさまざまな議論があり、編集委員会は時に応じてクラブの性格、運営方針について「見解」を発表してきた。

 この間、新聞・放送以外の報道機関の記者やフリーランスのジャーナリスト、外国人記者などからは、記者クラブは閉鎖的であり、取材の自由を妨げているなどとする、いわゆる記者クラブ批判もあった。

 このたび、報道界に対する国民の信頼を維持し記者クラブの目的や役割について広く理解を得るため、1997年見解を総合的に見直し、記者クラブを「公的機関を継続的に取材するための自主的な組織」と位置付けた。また、一定の条件を備えた、協会加盟社の記者以外のジャーナリストにも門戸を開いた。新見解の要旨は以下のとおり。

▼公権力に情報公開を迫る組織として誕生した記者クラブの役割は、(1)公的情報の迅速・的確な報道(2)公権力の監視と情報公開の促進?誘拐報道時など人命・人権にかかわる取材・報道上の調整(3)市民からの情報提供窓口――などである。

▼記者クラブは、「日本新聞協会加盟社とこれに準ずる報道機関から派遣された記者など」で構成するものとし、報道活動に長く携わり一定の実績を有するジャーナリストにも門戸は開かれる。加盟要件として、(1)報道という公共的な目的を共有?クラブの運営に一定の責任を負う(2)報道倫理の厳守、を挙げ、なかでも新聞倫理綱領で定める報道倫理の厳守を強く求める。

▼公的機関の記者クラブにかかわる記者会見は、公的機関側の恣意(しい)的運用を防ぐため、記者クラブが主催することが重要だが、公的機関主催の記者会見を一律には否定しない。そのうえで、クラブ構成員以外も参加できるよう、より開かれた記者会見を目指す。

▼記者室は、報道機関と公的機関それぞれの責務である「国民の知る権利に応える」ために必要な、公的機関内に設けられたジャーナリストのワーキングルームである。記者室の維持費、経費については、報道側も応分の負担をすることを基本とする。

◎ 編集委員会=新聞協会加盟の新聞・通信・放送58社の編集・報道局長で構成。


「ニュース配信サービスの抗弁」で最高裁が初判断
記事掲載新聞社にも責任

 いわゆるロス疑惑事件で殺人罪などに問われた三浦和義氏が、共同通信の配信記事で名誉を傷つけられたとして、共同通信と記事を掲載した新聞社に損害賠償を求めていた訴訟で、最高裁判所は1月29日、通信社の配信記事というだけで掲載新聞社が損害賠償責任を免れることはできないとする判断を示した。

 ロス疑惑事件は、三浦氏の一美夫人が1981年8月、ロサンゼルス市のホテルで頭を殴られてけがをし、11月には同市内で銃撃され、1年後に死亡した事件。85年に殴打事件で、88年には殺人容疑で三浦氏らが逮捕され、これを報じるメディアの競争は過熱した。三浦氏は同事件を報じたメディアの報道で名誉を棄損されたとして、多くの損害賠償訴訟を起こしていた(三浦氏は殴打事件で有罪が確定、銃撃事件では2審が無罪だったため検察側が上告中)。

 今回の判断の対象になった訴訟でメディア側は、その記事を配信した通信社が責任を負い、掲載新聞社は免責される「配信サービスの抗弁」を主張していたが、下級審では判断が分かれていた。

最高裁の判断は「わが国の現状に照らすと、社会の関心と興味をひく私人の犯罪行為やスキャンダルないしこれに関連する事実を内容とする分野における報道については、通信社からの配信記事を含めて、報道が過熱するあまり、取材に慎重さを欠いた真実でない内容の報道がまま見られる。私人の犯罪やスキャンダルに関する内容で、他人の名誉を棄損する場合は、配信記事を真実と信じるについて相当の理由があるとは言えない」と配信サービスの抗弁を認めなかったもので、最高裁としての初めての判断。

 一方、「私人の犯罪・スキャンダル報道以外の分野の記事では配信サービスの抗弁の法理を採用し得る余地がある」などと、配信サービスの抗弁の法理にも一定の理解を見せた。

 最高裁判決について、共同通信の新居誠編集局長は「配信記事をそのまま掲載することに一定の制約を課しており、国民の知る権利との関係で問題がある」と話している。


法務省が人権擁護法案の大綱発表 
取材行為も対象

 法務省は1月30日、報道機関の取材活動も対象にした人権擁護法案の大綱を発表した。

 2003年6月をめどに委員長と4人の委員で構成する人権委員会を法務省の外局として設置する。深刻な被害を伴う差別、虐待に対応するため「特別救済手続き」を設け、報道機関による犯罪被害者へのプライバシー侵害等もこの対象にした。過料の制裁は伴わないが、調停、報道機関のj自主的な取り組みに配慮しつつ、仲裁、勧告・公表、訴訟援助を行う。同法案は3月上旬、通常国会に提出される予定。

 大綱は、報道機関による人権侵害について?犯罪被害者やその家族、被告人の家族、未成年の犯罪者に対する報道によるプライバシー侵害?取材を拒否している上記犯罪被害者等に対して反復・継続して行われる待ち伏せその他の過剰な取材-――と定めている。

 法務省は、1997年に人権擁護推進審議会(会長:塩野宏東亜大通信制大学院教授)を発足、99年11月以降、報道による人権侵害救済に関心を深め、2000年11月、メディアも対象とした人権救済のための独立機関の設置を提案した中間報告を発表、2001年5月には過剰取材を積極救済する考えを盛り込んだ最終答申を明らかにした。

 新聞協会は、2001年1月と6月の二度にわたって「報道にかかわる問題は、表現の自由を守る見地から、あくまでメディアの自主解決を基本とすべきだ」との意見書を審議会に提出していた。

 報道界は、人権擁護法案について、かねてから個人情報保護法案、青少年有害社会環境対策基本法とともに、「いい内容」と思わせる法案名称を装いながら、表現の自由を侵犯する恐れのある法案「3点セット」として、警戒を強めてきた。今回の大綱について、報道関係者や有識者は、政府与党のメディア規制を加速し、行政機関による事前検閲、メディアに対する直接の任意調査が容認されることになると一斉に批判した。


新聞博物館で2001年号外展開催

  

 日本新聞博物館(NEWSPARK)は、1月29日から「2001年“その時”――号外紙面で蘇る大事件」展を開催している。

 21世紀最初の年に起こったさまざまな出来事を、国内外210点の号外・紙面で振り返る内容。日本の新聞・号外は約100点で、2001年元日号の各紙の社説が21世紀の始まりをどう展望しているかを紹介し、参議院選挙、米同時多発テロ、アフガン空爆、新宿・歌舞伎町ビル火災、長島茂雄巨人軍監督退任、雅子妃殿下出産など、実際のニュースに際して発行された号外を展示している。

 米国テロ事件関係は米国、中国、英国、韓国、香港、ドイツ、フランス、ロシア、スイス、シンガポール、パキスタン、インド、イスラエル、ポルトガルなど海外22の地域・国の新聞も多数展示した。

 この企画展は、3月10日まで行われる。以降、ピュリツァー賞受賞カメラマン、沢田教一と酒井淑夫の作品展、デジタル報道写真の取材・送稿・編集などの歴史、現状を写真機材の展示を通じて検証するデジタルフォトジャーナリズム展を予定。

 新聞博物館 http://www.pressnet.or.jp/newspark/index.html は、新聞文化の継承と教育への貢献を目指し、2000年10月に開館した。神奈川県横浜市の横浜情報文化センター(地上12階地下3階)の2階から5階部分が新聞博物館。横浜市は日刊新聞の発祥の地。

 館内は、新聞の発生から今日までの歩みをたどる「歴史ゾーン」「新聞社の多彩な活動を紹介する「現代ゾーン」を中心に、言論の自由をテーマにしたドラマを上映する「ニュース・パークシアター」、来館者が実際にミニコミ紙を作れる「新聞製作工房」などで構成する。

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日経が4月から文字拡大

 日本経済新聞社は、4月から日経新聞、日経産業新聞、日経金融新聞、日系流通新聞の基本文字を大きくする。1文字当たりの面積は21.1%拡大し、1行当たりの字数は12字から11字、1段の行数は82行から78行になる。併せて、4月から、これまで週1回だった44ページ紙面を2回にし、来年以降も48ページ印刷体制を生かし、段階的に増ページする予定。

 日本の新聞はブランケット版の紙面を15段に区分けしており、鉛版と鉛の活字で新聞を作っていた時代は1段15字だった。その後、読みやすさのために次第に文字拡大が進み、昨年は多くの新聞社が1段12字から11字に移行した。

 文字拡大による情報量の減少を食い止めるため、各社は記事の簡略化やレイアウトの工夫をさらに追求している。


朝日・川崎工場が環境管理の国際規格(ISO14001)取得

 朝日新聞社の子会社、朝日川崎プリンテック(川崎市中原区)は12月12日、環境管理に関する国際規格ISO14001の認証を取得した。同社の印刷業務体制が国際基準に適合することが、審査機関の日本環境認証機構に認定された。

 同規格の認証取得は国内の新聞関係では、2000年9月に取得した長野日報社、2001年8月に取得した北海道新聞社の子会社、道新オフセット(札幌)に次いで3例目。

 川崎プリンテックは昨年2月から、認証取得に取り組み、刷り損紙の削減、電力使用の抑制、廃棄物のリサイクル、環境への負荷が少ない資材等の購入、工場内の緑地の充実などに取り組んだ。


今月の話題>>>1

2002年の新聞販売界
販売競争激化の兆し


 日本の新聞社の収入構造は、販売収入が50%、広告収入が36%、その他出版・事業収入などが14%である(2000年)。景気動向の影響を受けやすい広告収入より、宅配制度によって安定した収入を得ることができる販売収入のウエートを高く維持することで、新聞経営の安定性を確保している。充実した宅配制度は、日本の新聞販売の大きな特徴である。

 日本で発行される日刊新聞5368万部(朝・夕刊セット紙は1部と計算)の93%は、新聞販売店によって直接読者の手元まで届けられている。新聞販売店は独立事業者であり、新聞社とは売買取引契約を結び、読者を獲得し、新聞を届け、集金を行う、などの業務を行っている。独立事業者とはいえ、新聞の社会的・公共的使命を達成するため、発行本社と一体になって、配達業務に当たる。

日本の新聞販売において特徴的なのが、新聞に対して定められている独占禁止法上の特例であろう。独占禁止法は新聞の販売について、「地域または相手方により、異なる定価を付し、定価を割り引いて販売すること」を不公正な取引方法として禁止している。そして独禁法上違法とされる再販売価格維持契約については、新聞など著作物に関してはこれを違法としないことが定められている。同じ新聞はどこで購読しても同じ価格であり、新聞社が決めた新聞定価は、すべての取引において守られる体制ができている。これが、新聞の販売収入の安定性を担保している訳である。

 独禁法を所管する公正取引委員会は、著作物の再販制度廃止を検討していたが、2000年3月、当面の間、存置することを決めた。定価の安定性は、いつでもどこでも誰でもが、同じ条件で新聞に接することができるという点で読者のニーズにかなうものであり、一方で新聞社経営の安定をもたらす点で公共的使命の遂行に資するものである。公取委の決定は、こうした点に関する世論や新聞業界の声に配慮したものといえる。

 再販制度の存続は決まったが、日本の新聞販売の環境は厳しい環境に置かれている。

 まず、販売部数の伸び悩み。1世帯あたり部数が1.12部、人口1000人あたり567部という普及率から見れば、今後、大きな伸びは期待できない。しかし、世帯の伸び率に届かない発行部数の伸び、若者層や単身世帯で新聞非購読現象が広がっている。これは新聞界挙げて対応を迫られている課題である。だが現実的には、新規の読者を開拓するより、他紙の既存の読者を自紙の読者にするほうが、自紙の発行部数の伸びに貢献しやすい。新聞は日本全国どこでも、全国紙5紙と地元地方紙が発行され、読者はこの中から好きな新聞を購読できる。ここに、日本の新聞販売市場で激しい競争が生まれる素地がある

 また、朝刊と夕刊を一連の編集で発行するセット紙が日本の新聞発行の特徴といえるが、夕刊の読者減少が深刻な問題となっている。産経新聞は東京本社発行の夕刊を4月から休止することになった。朝刊単独となる同紙の存在は、首都圏におけるセット紙市場の混乱を招きかねない要素を含む。

 景気が停滞し、広告収入に大きな伸びが期待できない中で、新聞販売の世界は、これまで以上の激しい競争が始まろうとしている。



今月の話題>>>2

新聞各社で報道検証組織
外部有識者招き設置相次ぐ


 読者の信頼を深めるために、外部有識者らによる報道のチェックや苦情処理のための第三者委員会を設置する動きが、昨年来活発だ。

宮崎日日新聞社は、1月1日、社外の有識者に報道紙面について意見を聞く「宮日報道と読者委員会」を設置した。読者に開かれた新聞作りを目指し、報道の質の向上を図るのが狙い。委員会は社長への提言期間で、年3回開催する。人権/プライバシー問題や取材の在り方、記事全般について討議する。また、読者相談室に寄せられた編集に関する苦情への社の対応も検証する。

 同趣旨の委員会は、2000年10月に毎日新聞が設置したのを皮切りに、最近の宮日までで23社の新聞・通信社が創設した。各社は、委員会の独立性を確保するため編集局から切り離し、社長直属機関あるいは提言機関と位置付け、苦情処理に透明性を持たせている。委員は研究者など、外部有識者で構成される。

 委員会での審議案件を、記事による名誉毀損や人権侵害問題に限定している社もあるが、多くは、取材・報道の在り方全般について意見交換している。委員会は年2〜6回開催、すべての社が原則として審議内容を紙面で公開している。

 設置の背景には、読者の人権意識が高まり、記事によるプライバシー侵害などが問題視されるようになってきたことや、個人情報保護法案、人権委員会設置法案など、人権・プライバシー保護を盾に、メディア規制強化を内包する法律を作ろうとする動きがある。一方で、弁護士会などは、第三者組織として各種メディアを横断する人権救済機関を作るべきだと主張している。

 こうした状況を踏まえ、報道による人権侵害の訴えや疑いがある場合に社外委員に公正に判断してもらい、さらには読者との双方向的な関係を強化するために、各社は委員会を設置した。

 報道と人権については、日本雑誌協会が(Japan Magazine Publishers Association 加盟89社、理事長=角川歴彦角川書店社長)1月18日、雑誌記事による人権侵害の苦情を受け付ける「雑誌人権ボックス」(Magazine human rights box)を3月から設置することを明らかにした。対象となるのは、雑誌協会加盟の出版社が発行する雑誌記事により個人や団体の名誉や、信用、プライバシーが侵害されたケース。申立人は氏名、住所、雑誌名、問題となる内容などを明記し、雑誌協会に設ける専用ファクスに送るか文書で郵送する。出版社は責任を持って対応し、2週間以内に申立人に回答し、交渉過程や回答内容を雑誌協会に報告することが義務付けられている。

 放送については、1997年5月、放送事業者やその関係者を除く各界の有識者8人で構成される「放送と人権等権利に関する委員会」(Broadcast and Human Rights/Other Related Rights Committee )が発足している。

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