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2004年4月
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* イラクでの自衛隊取材で「申し合わせ」――新聞協会と民放連
* 新聞協会事務局長に今田氏が就任
* 「外国記者の会見参加に協力を」――新聞協会編集委員会が各記者クラブに要請
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-- 読売新聞と英・タイムズが特約提携に調印
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今月の話題>>>
教科書における「メディアに関する記述」(2)――新聞協会報が連載
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イラクでの自衛隊取材で「申し合わせ」――新聞協会と民放連

 新聞協会編集委員会は3月11日、イラクでの自衛隊活動の取材ルールに関し「イラク人道復興支援活動現地における取材に関する申し合わせ」と「確認事項」(2面参照)を決めた。イラクでの自衛隊活動の取材ルールについては、編集委員会と民放連・報道小委員会が合同で設置した「イラク取材問題小委員会」が窓口となり、防衛庁と協議を続けていた。

さらに、申し合わせの運用に関して、新聞協会、民放連、防衛庁の3者で確認事項を定めた。また、「イラク及びクウェートに所在する自衛隊に係る立入制限区域への立入取材申請書」の内容についても、報道側の意向を最大限尊重するよう防衛庁に求めて協議を続け、合意に達した。

確認事項の運用に問題が生じた場合は、まず現地部隊と報道側派遣要員で協議し、解決が困難な場合には、新聞協会と民放連合同のイラク取材問題小委員会と防衛庁で協議・調整する。

「申し合わせ」事項

 日本新聞協会および日本民間放送連盟は、防衛庁の北原巌男<Kitahara Iwao>長官官房長らとの数次にわたる協議の結果に基づき、自衛隊の人道復興支援活動をありのまま国民に伝えるという政府の説明責任が、自由公正な取材および報道を通じて適切に果たされることと、自衛隊員および報道関係者の安全ならびに部隊の円滑な任務遂行を図ることとの両立を追求するため、下記の申し合わせを行う。

 本申し合わせの運用に関しては別途、新聞協会、民放連、防衛庁の3者により確認事項を定める。

 また、この申し合わせは、自衛隊のサマワ宿営地が完成し、イラク人道復興支援活動が完全に軌道に乗った時期以降を対象にする別途の申し合わせについて、なんら制約するものではない。


 新聞協会および民放連加盟社の、標記にかかわる取材活動は、以下の基本原則の下で行われる。

1.政府の説明責任

憲法の基礎である国民主権の理念にのっとり、国政を信託した主権者である国民に対して自衛隊のイラク人道復興支援活動の状況を具体的に明らかにし、説明するという責務(説明責任)を政府は負う。

2.表現、報道の自由の尊重

憲法の認める表現の自由に属する報道の自由、報道のための取材の自由について、政府は最大限尊重する。

3.自衛隊員、報道関係者の安全確保

イラク人道復興支援活動の現地(次項において「現地」という。)で活動する自衛隊員および報道関係者の生命および安全の確保について、派遣元組織および被派遣者の自己責任の原則の下、可能な範囲で最大限配慮する。

4.自衛隊部隊の円滑な任務遂行

現地の自衛隊部隊の円滑な任務遂行に支障を与えないよう留意する。


新聞協会事務局長に今田氏が就任

 新聞協会回理事会は3月17日付で今田昭<Imada Akira>・事務局次長(理事待遇、日本新聞教育文化財団事務局長)を事務局長とする人事を承認した。

 深沢亘<Fukasawa Wataru>事務局長(理事待遇)が3月15日、食道がんのため死去したことに伴う人事で、定款に基づき、箱島信一<Hakosima Shinichi>会長から任命された。

 今田 昭(いまだ・あきら)氏略歴=東京都出身、立教大卒。1969年新聞協会入職。92年経営部長、96年総務部長などを経て、2003年理事待遇・事務局次長兼日本新聞教育文化財団事務局長。60歳。



「外国記者の会見参加に協力を」――新聞協会編集委員会が各記者クラブに要請

 新聞協会編集委員会は3月29日、外務省発行の記者証を持つ外国メディア記者の公式記者会見への参加に関し、協力を求める文書を、各記者クラブ幹事あてに送付した。日本に拠点を置く外国メディアの正確な情報発信を支援する必要性などの観点から、(1)公的機関で行われる公式記者会見に、外務省発行の記者証を持つ外国メディアの記者が参加できるとの原則の周知徹底(2)会見場のスペースが十分でない場合でも、各クラブの事情が許す限り、代表取材などの形での外国メディアの会見参加を支援する――の2点を要請している。

 外務省が公的機関に送付する同趣旨の文書も、参考資料として同封した。

 記者クラブと外国メディアに関しては、欧州連合(EU)の駐日欧州委員会代表部が2002年10月、「日本の規制改革に関する優先提案」(EU提案)で、日本政府に「記者クラブ制度の廃止」を求めてきたことから、新聞協会編集委員会は記者クラブ問題検討小委員会を再発足させ、検討を始めた。EU側は03年10月の提案でも再度、制度撤廃を盛り込んだため、同小委はあらためて対応を協議。昨年12月に「(制度を)廃止する必要は全くない」などとする見解を公表した。

 その後、外務省から「連名で、外務省記者証を持った記者の公式記者会見への出席を認めさせるよう、各記者クラブに要請できないか」との提案が外務省からあり、編集委員会で協議の結果、新聞協会は独自に、各記者クラブにその旨要請することを決めていた。

 これらの経緯を受け、EU側からは「制度の廃止が趣旨ではなく、記者のアクセスを除外するクラブの在り方を改めてほしい」「新聞協会からの要請に効果が見られれば、EU提案に盛り込んだ『記者クラブ制度の廃止』は取り下げることになるだろう」などとの発言が出されていた。


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読売新聞と英・タイムズが特約提携に調印

 読売新聞社は3月25日、英紙タイムズと記事使用に関し提携する合意文書に調印した。 タイムズは1785年の創刊で、発行部数は約60万部。昨年11月、タブロイドサイズの「コンパクト判」を創刊し話題となった。今回の提携で読売新聞は、タイムズの配信記事を本紙に翻訳掲載できるほか、読売が発行する英字紙デイリー・ヨミウリに、タイムズが編集する7ページの特別面を、4月4日から毎週日曜日に掲載している。

 読売はこれまで、英紙ではガーディアン、インディペンデントの2紙と特約関係を結んでいたが、これを機に5月末でインディペンデントとの提携を解消する。タイムズ側も3月末をもって朝日新聞社との提携関係を終了した。

 今回の提携について、読売新聞の担当者は「国際ネットワーク作りの一環だ。提携相手としては、左派のインディペンデントより、保守系紙のタイムズの方がしっくりくるだろう。良い記事があればどんどん紹介していきたい」と話している。

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教科書における「メディアに関する記述」(2)――新聞協会報が連載
◇国語科に見る情報教育

 「情報活用能力」の育成――これが情報教育の目標である。文部科学省は、この「情報活用能力」について、「情報活用の実践力」「情報の科学的な理解」「情報社会に参画する態度」の三要素から構成されると説明する。「メディア評論」を題材にした、中学校国語科の中の情報教育を中心に報告する。

 国語科の目標には「国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し、伝え合う力を高める」ことが掲げられている。これは「情報活用の実践力」の育成とも言える。中でも、情報を取捨選択し内容を要約する能力、さまざまな情報を活用し自分の考えを適切に表現する能力などは、メディアリテラシーとも共通する能力だ。このような関係から、社会科同様、国語科教科書でも「マスメディア」が題材に取り上げられている。

 子どもの発達段階に合わせ、小学校の国語科では主に表現能力育成の観点からマスメディアが教科書に登場する。各メディアが持つ表現方法の特徴、新聞であれば、逆三角形の文体や五W一Hを含む文章などが紹介される。

 中学校の国語で主に「メディア」が登場するのは三年生の教科書。発行する5社すべての教科書で、情報に関連する記述が見られる。各メディアの表現方法が持つ利点だけでなく、その問題点まで考えさせるなど、よりメディアリテラシー教育に近づく。中でも、光村図書出版の「国語3」(採択率38.2%)、三省堂の「現代の国語3」(同24.5%)、東京書籍の「新しい国語3」(同16.5%)の3冊は「マスメディア」を大きく取り上げている。

 「国語3」では「情報社会を見つめる」の章で、「マスメディアを通した現実世界」(著・池田謙一<Ikeda Kenichi>氏)との評論を取り上げる。初の「日米間テレビ宇宙中継」となったケネディ米大統領暗殺のニュースと、その情報を人づてに知った人々がテレビで確認しようとした行動を例に、マスメディアは「共有性の保証人であり、地球村を支える屋台骨」だとその役割を説明。

一方で、マスメディアが選択し加工した現実を伝えていることにわれわれが気づかず、それを「忠実な『現実の鏡』として見がち」だとの問題点も紹介している。そして、情報の受け手である「わたしたちが考えなければならない」ことは、マスメディアにはそのような問題点があることを念頭に置くことであり、情報を「自分なりに取捨選択し、自分にとっての現実の像を構成していく」うえで「他者との語り合いという共同作業」が重要になってくることだとまとめている。

 「現代の国語3」では、「情報と向き合う」の章で評論「メディアとわたしたち」(著・見城武秀<Kenjo Takehide氏)を教材に使用。テレビと新聞を例にそれぞれの表現方法を比較、各メディアには得意な表現方法があり、それを支える約束事があると解説する。同時にメディアはそれぞれの表現方法にあった編集を行っていることを説明し、情報の編集が持つ功罪を指摘。メディアをよく理解した上で、あらためて付き合い方を考え直そう、としている。

 「新しい国語3」では、「イメージからの発想」(著・森本哲郎氏)で情報を伝える側の問題も取り上げている。人は対象を自分のイメージで見ており、「取材とは、ある意味では、自分の抱くイメージとの戦い」であり、「ジャーナリストにとっては、物事についての自分のイメージを、ことあるごとに反省するということが大切」と言及。情報を発信する際の問題を考えさせる。

 国語科の教材には、以前から「マスメディア」が取り上げられているという。光村図書出版の鷲巣学<Wasizu Manabu>・執行役員編集本部長は「功罪がはっきりしているマスメディアの問題は評論文として扱いやすい」と説明。「情報活用能力育成の面でも、その社会的影響力の上からも、マスメディアは今後も取り上げたいテーマだ」とも話した。

 これまで、義務教育課程の教科書で主に「マスメディア」を取り上げている社会科と国語科での記述について見てきた。このような現状を、新聞関係者らはどう見るのか。マスメディアの役割に関する中学校社会科での記述を中心に話を聞いた。

 熊本日日新聞社の田川憲生<Tagawa Kensei>・取締役編集局長は、以前と比べ教科書の記述が「変化した」と話す。1980年度検定の「新しい社会」(東京書籍)では、「人々は、マスコミによらずに、国内、国外の政治や社会のようすを知ることはできない。それだけに、マスコミに対して国家が干渉することは許されない」と記述されていると指摘。「『国家はマスコミに干渉してはならない』と断言していた教科書が、現在はマスコミの情報を批判的に受け止めなければならないと記述している。この違いは大きい」と話す。

 教科書会社のある担当者もマスメディアに関する記述は、量的にも「ここ十年ほどの間で少なくなってきている」と話す。マスメディアが唯一の情報伝達手段だった時代とは異なり、インターネットが社会や授業の中でも当たり前に使われるようになった現状が教科書にも反映されているという。その担当者は「以前は情報をいかに入手するかが課題だったが、今はあふれている情報をどう分別するかに変わってきている」と語る。

 また、記述の減少は情報化社会の進展だけでなく「ゆとり教育」の影響もあるようだ。渡辺氏は「授業時間数の削減で、以前に比べ教科書中で知る権利などの『人権』に割いていたスペースが減った」と話す。

 「朝日新聞社の津山昭英<Tuyama Akihide>・編集局長補佐は「表現の自由が、人にとって最も基本的な権利であることをもっとしっかり教えるべきだ」と指摘する。「真実の発掘や人権の擁護、権力の監視といった、報道が果たしてきた積極的な役割をもっと紹介すべきだ」とも話す。現状の記述にそうした「ジャーナリズムの視点が抜けている」点は田川、津山両氏ともに指摘するところだ。

 津山氏は「情報過多の時代に、新聞が報道倫理を守り、確かな情報を伝えるためにいかに努力しているかを伝える記述が不足している」とも話す。ただ、教科書の記述を「批判するだけではなく、今の社会のマスメディアに対する見方の一端を表していると受け止め、こちらの主張を社会に訴えていく必要がある」と話す。

 田川氏は一方、若年層の新聞離れも、「教科書での取り扱いがその一因と言っていいのではないか」と言及。自衛隊のイラク派遣問題の際の動きなど、最近の報道規制の動きにも触れ「新聞界ではNIE運動を展開しているが、一方で教科書のこうした現実をしっかり受け止め、新聞協会で対処すべきだ。報道機関もその責務や使命をより強く意識することが大切だろう」と語っている。

(新聞協会報では、今後、高校の教科書でのメディアに関する記述などについても特集していく予定。まとまり次第、NSK News Bulletine にも転載する)

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