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2005年2月
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新聞協会が個人情報保護法に関し見解――適切な措置、自主的に講じる

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中部国際空港誕生――新聞・通信5社が支局設置

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-- 元朝日新聞社代表取締役専務の中馬清福(ちゅうま・きよふく)氏が信濃毎日新聞社の主筆に
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スマトラ沖地震・津波 外務省が被災者氏名を公表せず――メディア側は批判
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 新聞協会が個人情報保護法に関し見解――適切な措置、自主的に講じる

 新聞協会は1月19日、編集委員会名の「個人情報保護法の全面施行にあたっての見解」を公表した。

 編集委員会はこれまで同法の制定過程で6回にわたり、個人情報保護の重要性を指摘するとともに、報道・表現の自由を損なわないよう主張してきた。その結果、同法第50条1項で報道分野等は、同法に定める義務規定の適用から除外されている。一方、同条3項では適用除外の事業者について「個人情報の適正な取り扱いを確保するために必要な措置を自ら講じ、かつ、当該措置の内容を公表するよう努めなければならない」と定めている。

 見解は以下の通り。

 「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)が4月から全面的に施行される。

 われわれは、これまで一貫して、個人情報保護の重要性を指摘するとともに、表現の自由、報道の自由が損なわれることのないよう主張してきた。個人情報保護法は、報道・著述分野などについて義務規定の適用を除外しており、われわれは、個人情報を取り扱ううえで適切な措置を自主的に講じていく。当然ながら、法の運用にあたっては報道の自由が狭められることがあってはならない。

 報道の自由は、国民の「知る権利」に応えるために存し、憲法が基本的人権として保障する「表現の自由」の中核を成している。多様な理念や価値を認める民主主義社会の下では、時として、相異なる理念同士がぶつかり、報道の自由と個人情報の保護も、そうした関係になることが起こり得よう。そのとき、国民の信頼と理解が得られる接点を、われわれは自らの努力で見いだし、解決していく決意である。

 報道の責務を果たすためには、高い使命感と記者倫理が求められる。新聞倫理綱領は「自らを厳しく律し、品格を重んじなければならない」と前置きして、「人間の尊厳に最高の敬意を払い、個人の名誉を重んじプライバシーに配慮する」ことを掲げている。この綱領を踏まえ、報道倫理に基づいて自律的に個人情報を取り扱っていく考えである。


 

中部国際空港誕生――新聞・通信5社が支局設置

 日本で3番目の国際拠点空港となる「中部国際空港(愛称・セントレア)」が2月17日、愛知県常滑市に開港する。すでに、地元の中日新聞社など新聞・放送5社が空港内に支局あるいは報道室を設置。昨年末には新空港内に、この5社を中心とする新聞・通信・放送21社で構成する「中部国際航空記者クラブ」が発足している。

 新空港内には中日、朝日、毎日、読売が支局を、NHKが報道室を設置した。

 中日の常駐記者は1人で、支局長は社会部長が兼務。

 朝日は支局長以下2人が専任。支局長には成田国際空港での取材経験を持つ記者を配置した。

 毎日は支局長以下3人。常駐は1人で、支局長は報道センター副部長が兼務している。

 読売は支局長、支局員の2人体制で、支局員は常駐、支局長は社会部次長が兼務する。 

 NHKは、1人が常駐する中部空港報道室を設置した。

 新空港の取材拠点となる「中部国際航空記者クラブ」は、昨年12月28日に発足した。常駐は、空港に支局、報道室を設置した五社で、新空港の旅客ターミナルビル1階に置かれた記者室内の個室を確保している。非常駐16社。このうち共同通信は個室を、日経は机や電話などの備品が用意された共用スペースを借りている。また、民放5社は共同で部屋を確保し、機材などを置いている。



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元朝日新聞社代表取締役専務の中馬清福(ちゅうま・きよふく)氏が信濃毎日新聞社の主筆に

 信濃毎日新聞社(本社・長野市、朝刊約48万部、夕刊約5万部発行)は1月5日付朝刊で、ジャーナリストで元朝日新聞社代表取締役専務の中馬清福(ちゅうま・きよふく)氏を主筆に迎えると社告した。同社が主筆を置くのは1955年以来。主筆復活の狙いについて同社は「社論をいっそう揺るぎないものにしたいということに尽きる」と説明している。

 中馬氏は2月1日付で就任。住まいを長野市に移し、社説を執筆するほか、編集、論説全般にわたり社論の中心となる。

 主筆就任は小坂健介(こさか・けんすけ)代表取締役社長が要請。1月4日に開かれた同社の新年祝賀式の社長年頭あいさつで明らかにした。小坂社長は、新聞協会の新聞倫理綱領検討小委員会委員長を務め、現在の新聞倫理綱領をまとめた中馬氏のジャーナリストとしての見識や、新聞の在り方についての明快な考え方に共感したと述べたという。

 中馬氏は鹿児島市出身。60年に朝日新聞社に入社し、論説主幹、常務取締役大阪代表、代表取締役専務・編集担当などを経て、2003年9月まで常勤顧問を務めた。現在は中国・清華大客員教授で、早大非常勤講師も務める。

 中馬氏は「知る権利という言葉は定着したが、読者には一歩進んだ『考える権利』がある。メディアは考える材料を読者に提供してきただろうか。信濃毎日を舞台に、こうした角度から社論形成に尽力したい」と抱負を語った。

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スマトラ沖地震・津波   外務省が被災者氏名を公表せず――メディア側は批判

 

 昨年12月26日に発生したスマトラ沖地震による津波は、インドネシア、スリランカなどインド洋沿岸諸国に甚大な被害を引き起こした。死者は22万5000人以上に達すると報じられ、外務省によると日本人の被災者も、1月19日現在で死者25人、安否不明者35人に上る。しかし、同省は一部を除き被災者の氏名を公表せず、死者は年齢、性別のみの公表にとどめている。安否不明者についても、同省に照会のあった人数から安否が確認できた人数を除いた数字を発表しているだけだ。この状況にメディア側からは、批判の声が上がっている。

 外務省は基本的な考え方を、「外務省や現地の領事館が海外の日本人の死亡を確認し、外部に発表することは求められていないし、法でも定められていない」と説明している。

 海外の事件・事故で日本人が死亡した場合、大抵の国では現地の警察や病院が、被害者の氏名、年齢、性別など、主にパスポートから得られる情報を発表する。外務省では通常、現地の当局が既に発表しており日本の報道機関から照会があることを遺族に説明し、発表の了解を得る。

 しかし、今回のケースでは、津波により現地当局は機能しておらず、発表もない。外務省では、被災への関心の高さや公益性の観点から被災者の発表が必要だと考えたが、遺族の理解は得られず、当初は「邦人1名」などと発表し、報道各社から強い批判を浴びた。

 そこで外務省は再度検討し、「社会通念に照らして遺族に公表理由を説明できる『外務省の責任の範囲』で発表できないかと考え、性別・年齢のみを発表することにした」という。

 こうした匿名発表に、報道各社からは依然、不満の声が上がっている。事実を把握した上で、実名で報じるか、プライバシー保護に配慮して匿名にするかを自ら判断するというのがメディア側のスタンスだ。

 メディア関係者は「本当かどうかは疑問だが、“遺族の要請”と言われると、反論しにくい」と話し、「われわれも遺族が嫌がることを無理に載せようとは思わないが、問題は情報を確認しようがないことだ。情報隠しの方便に使われかねない」と懸念する。

 このほか

「匿名化が進み情報が抽象化することで、事実の検証ができなくなる。検証によって新たな情報が喚起され、確認の進展もあり得る」

「遺族の意向は尊重しなければならないが、人数だけでは被害の実態は描けない。命の重さは個々の犠牲者を描いてこそ伝わる」

 「被害の全容を明らかにするには、一つずつ調べて積み上げなければならないが、それらの確定が難しく、全体像に迫るのに支障がある」と話す。同氏はまた「外務省の情報収集力の無さが出ているのではないか」

「これほどの規模の災害で、名前が公表されなかったことは記憶にない。これが特殊なケースなのかどうかは、いずれ検証しなくてはならない」

 といった批判が上がっている。

 今回の災害は、遠隔地で発生した上に被災地が広範にわたり、被災者もけた外れに多い。その点で極めて特殊なケースであるとの認識は報道側にもあるが、一方で、「外務省に限って言えば、数年前から匿名発表が多くなってきた。米中枢同時テロの時に非常に目立った」「警察や消防の広報でも匿名化の傾向はある。その最たるものが外務省だ」との指摘もある。

 

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