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2006年8月
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新聞社の従業員数は全体で前年比0.8%減、女性は2.8%増加

* 第11回NIE大会開催――家庭・地域へ広がり目指す
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日本経済新聞の広告局員がインサイダー取引容疑で逮捕される
――法定公告の内容を密かに閲覧、社長が再発防止策表明

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今月の話題>>>
「性被害の事実を実名で書いて、再発防止のために」
――広島小学校1年生女児殺害事件の遺族が報道機関に要望、各社の対応は別れる

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新聞社の従業員数は全体で前年比0.8%減、女性は2.8%増加

 新聞協会はこのほど、協会加盟の新聞・通信102社を対象に実施した2006年「従業員数・労務構成調査」結果をまとめた。102社の従業員総数は14年連続で減少し、前年比0.8%減の52,262人だった(表1参照)。減率幅は前年より縮小。女性の比率が2.8%増加した。詳細な回答があった77社の年齢別構成は、20代の縮小傾向が続いており、10年間で5.9ポイント減少した。

 【従業員総数】(表1)

1997年からの10年間で9,584人(15.5%)減少している。2000年から6万人台を割っており、今回も、前年より421人減少した。

表1  従業員数総数の推移

2002 2003 2004 2005 2006
総数 (人) 57,105 55,806 54,436 52,683 52,262
前年比増減 (%) - 1.3 - 2.3 - 2.5 - 3.2 - 0.8
(各年とも新聞協会加盟の新聞・通信全社を対象に集計。)

 【部門別従業員数・構成】(表2)

部門別の従業員数が分かる詳細な回答を寄せた77社の従業員総数は4万9,668人で、人数が最も多い部門は「編集」(構成比で0.6ポイント拡大)の47.9%。以下、「営業」(同0.2ポイント拡大)、「製作・印刷・発送」(同2.4ポイント縮小)、「その他」(同1.8ポイント拡大)、「統括・管理」(同0.1ポイント縮小)、「出版・事業・電子メディア」(前年同率)と続く。

 十年間の推移では、1997年調査と比べ「編集」が6.7ポイント拡大した一方、「製作・印刷・発送」は13.1ポイント減少した。

 「編集」部門のうち、記者の総数は20,773人。女性記者は2,642人で、構成比は記者の12.7%。前年より0.7ポイント拡大した。

表2  部門別従業員数・構成(77社)

人数 男性 女性
編集 23,792 (47.9) 20,712 (41.7) 3,080 (6.2)
製作・印刷・発送 5,711 (11.5) 5,544 (11.2) 167 (0.3)
営業 7,484 (15.1) 6,594 (13.3) 890 (1.8)
出版・事業・電子メディア 3,321 (6.7) 2,709 (5.5) 612 (1.2)
統括・管理 3,971 (8.0) 3,034 (6.1) 937 (1.9)
その他 5,389 (10.9) 5,156 (10.4) 233 (0.5)
総数 49,668 (100.0) 43,749 (88.1) 5,919 (11.9)
(注)かっこ内は、総数の(男女計)を100とした場合の構成比(%)

 

【年齢段階別従業員構成】(表3)

この項目は、77社のうち回答未整備の1社を対象から除外して集計。「55〜59歳」が最も多く前年と同率。以下、「35〜39歳」「40〜44歳」が続く。

 この10年で最も拡大した世代は30代で4.2ポイント増。次いで、40代が1.1ポイント増。20代は縮小傾向が続いている。

表3  年齢段階別従業員構成比率の推移(単位:%)

2002 2003 2004 2005
2006
社数 76 81 79 70 76
 20歳未満 0.1 0.0 0.1 0.1 0.1
20〜24 4.0 3.9 3.4 3.2 3.4
25〜29 11.8 11.5 11.1 10.5 10.3
30〜34 14.3 14.1 13.9 13.8 13.6
35〜39 13.7 14.9 15.4 15.3 15.1
40〜44 12.4 12.5 13.0 14.3 15.1
45〜49 10.7 10.7 11.3 11.7 12.1
50〜54 16.4 15.2 13.5 12.4 11.8
55〜59 14.9 15.6 16.3 16.7 16.7
60歳以上 1.7 1.7 2.0 1.9 1.8

 【採用・退職状況】(表4)

2005年4月2日から1年間の新規採用者数は、男性856人(構成比69.5%)、女性376人(同30.5%)。年間採用率(在籍従業員に占める新規採用者の割合)は2.5%となり、前年から0.7ポイント減少した。

 同年4月1日から1年間の退職者数は、男性1,968人(同88.6%)、女性253人(同11.4%)。年間退職率(在籍従業員に占める退職者の割合)は4.5%で、前年から0.4ポイント減少。

表4  新規採用者数と退職者数の推移

2002 2003 2004 2005 2006
社数 76 81 79 71 77
従業員数 54,015 53,488 51,761 49,523 49,668
(5,606) (5,785) (5,695) (5,631) (5,919)
新規採用者数 1,332 1,177 1,134 1,569 1,232
(330) (292) (296) (350) (376)
退職者 2,735 2,364 2,542 2,417 2,221
(284) (282) (265) (248) (253)
(注)かっこ内は女性の人数

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11回NIE大会開催――家庭・地域へ広がり目指す

 新聞教育文化財団が主催する第11回NIE全国大会が7月27、28の両日、水戸市で開かれ、全国から教育関係者、新聞関係者ら860が参加した。「学校から家庭・地域へ広めようNIE」をスローガンに、初日は基調提案、記念講演やパネルディスカッションが行われた。「家庭NIE」「地域NIE」という新たな概念とその重要性を提唱。生涯学習の視点から、学校と家庭、地域、新聞社が連携したNIEの在り方を議論した。2日目は、小中高の校種別に「新聞に親しむ家庭・地域活動」を加えた各分科会で公開授業、研究協議会などが行われた。新聞社が果たすべき役割を考えるパネルも開かれた。

 開会あいさつで同財団の北村正任理事長(きたむら・まさとう)は、「NIE実践校は今年度、過去最高の490校に達し、着実に広がりを見せている。若者の活字離れ、社会離れの問題が生じているが、こうした問題にNIEは非常に有効だと確信している」と述べた。また、開催地の茨城県を「古くから新聞を教育で活用してきたNIE先進県」と評価した。

 基調提案は、小美玉市立小川南中(おみたましりつおがわみなみちゅう)の石島光夫(いしじま・みつお)校長の「茨城からの提案」。同氏は「都市化や少子化、地縁的つながりの希薄化などが進み、家庭の教育力低下が指摘されている」とし、新聞は「親自身が父親力、母親力をつけ、子どもが親とのつながりを通して人間性豊かに成長していく」ために有効だと主張。親子でともに新聞を読み、家庭新聞を作るなどの活動を例示した。また、地域で子どもと大人が新聞に親しむことで、子どもたちの社会や人間への関心を高めるとともに、地域の人間関係を深め、地域のさまざまな問題を考えることもできると主張。図書館や公民館での新聞利用や地域新聞の発行など、地域NIEの重要性を訴えた。

 パネルディスカッションのテーマは、「明日のNIEを考えよう〜地域NIE・家庭NIEの展望」。「まずは学校でのNIE活動を充実させることが大事だ。NIEの授業を受けた子どもたちを通して、家庭の中で新聞について話し合い、地域に情報が発信され、大人たちを動かすことが出来る」などの意見が出された。

日本経済新聞の広告局員がインサイダー取引容疑で逮捕される
――法定公告の内容を密かに閲覧、社長が再発防止策表明

 東京地検特捜部は7月25日、証券取引等監視委員会の告発を受け、日本経済新聞社の東京本社広告局金融広告部社員を証券取引法違反(インサイダー取引)容疑で逮捕した。この問題は2月に発覚。日経は同日付でこの社員を懲戒解雇した。杉田亮毅(すぎた・りょうき)社長は同日午後の記者会見で声明を発表。「言論報道機関としてあってはならない不祥事であり、読者、広告主、投資家はもとより広く国民の皆さまの信頼を裏切る結果となったことを深くおわびする」などと陳謝するとともに、法定公告業務の見直しとシステム改善、社員教育の徹底、株取引の自粛などの再発防止策に取り組むことを明らかにした。

逮捕された広告部員は、西松屋チェーンなど上場五社の株式分割の法定公告が、日経新聞に掲載されることを業務を通じて事前に把握。2005年12月から06年1月にかけて各社の株式9万4000株を約2億4000万円で購入し、約3千万円の利益を不当に得た疑いが持たれている。

 日経の社内調査結果によると、この広告部員は金融広告部で業務として使っていた広告管理システムの専用端末を操作し、法定公告の申し込み情報を閲覧していた。この中から、紙面掲載後に値上がりが見込める「株式分割」公告を掲載する銘柄を選び株式を売買した。専用端末の使用には各部に割り当てられた本人確認のためのIDとパスワードが必要だが、広告部員は02年3月まで同部に置かれていた「IR(投資家向け広報)チーム」のID・パスワードを使っていた。同チームはIR広告の企画・立案という業務上、幅広いアクセス権を与えられていた。この広告部員は1999年入社。大阪本社広告局産業流通広告部に配属され、2003年から東京本社金融広告部に在籍していた。動機については「趣味が株取引」「ゲーム感覚だった」などとしており、売却益の使途は「特に何かに使ったことはない」などと話しているという。

 日経では再発防止策として、法定公告に関する営業活動を中止するほか、申し込み受け付けを東京本社広告局に一元化し、取り扱う社員を今まで以上に限定する。システムのID・パスワードの管理を徹底し、情報の閲覧も厳しく制限する。

 また、1989年に「インサイダー取引規制に関する規定」を設け、全社員に同取引の規制法規順守を義務づけていたにもかかわらず、今回の事件が起きたことから、あらためて社員のコンプライアンス教育を徹底。全社員に年1回、インサイダー関連研修の受講を義務化する。

 株取引については、これまでも重要情報を扱う部局では内規で短期売買を禁じてきたが、事件を機に内規を新設・拡充。関連会社への出向者やアルバイトを含む全社員を対象に、短期売買を原則禁止する。取締役については、3月末の取締役会で株取引にかかわらないことを決議している。さらに、広告・編集・販売各局と論説委員会の社員には、期間を限定せず株取引を全面的に停止するよう社長名で要請。広告局社員には、株取引にかかわらないとの誓約書を提出させた。

法定公告とは

株式会社は、決算の貸借対照表や新株発行、株式分割などを株主や投資家らに周知するための「公告」が法令で義務付けられている。公告は官報か日刊新聞、インターネットのホームページなどに掲載する。日本経済新聞には経済紙という性格上、従来、多くの法定公告が掲載されている。

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ニュースパークで企画展「昭和史の風景」始まる

 


 横浜市の日本新聞博物館(ニュースパーク)で8月1日、企画展「昭和史の風景 江成常夫(えなり・つねお)写真展『偽満州国(にせまんしゅうこく)・鬼哭(きこく)の島』」および「神奈川新聞は戦争をどう伝えたか」が始まった。9月24日まで。

 15年戦争の残像を追い続ける写真家・江成常夫氏の作品、戦争中の神奈川新聞の紙面などを展示し、歴史の教訓や平和の尊さ、新聞の役割を考える。

 オープニングセレモニーで江成氏は、戦後日本の在り方を「戦争の記憶」から問い続けてきた自身の活動をもとに、「いま進行する時間を正確に読み取り、明日の道標を見出す上では、経てきた時間に学ぶことが非常に大きい」と話した。

 展示は三つのセクションで構成する。中国東北部に今も残る満州国の建物や跡を写した「偽満州国」。レイテ島など太平洋戦争の戦跡地、惨劇の島を写した「鬼哭の島」。これら2つは江成氏の写真105点で構成。「神奈川新聞は『戦争』をどう伝えたか」のセクションでは、満州事変や一県一紙の新聞統制、戦後の南方での遺骨収集など、歴史の節目を伝えた新聞紙面30点を展示した。

 

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今月の話題>>>
「性被害の事実を実名で書いて、再発防止のために」
――広島小学校1年生女児殺害事件の遺族が報道機関に要望、各社の対応は分かれる

 2005年11月に起きた広島小1女児殺害事件で、女児の父親が7月4日の判決公判を前に報道機関の取材に応じ、「マスコミが性的被害の描写を避けることで、残酷な犯罪の実態が社会に伝わっていない。再発防止のためにも、性的被害の事実をできる範囲で、実名で報道してほしい」などと要望した。発生当時、父親は報道機関に取材自粛を申し入れていた。報道各社も従来、性犯罪では被害者の人権や遺族感情への配慮から、具体的表現を避けてきたが、要望を受けて今回、被害内容まで踏み込んだ記述をする社もあった。

 父親の要望は、朝日新聞が6月24日付朝刊で報道。翌日付朝刊以降、中国新聞、読売新聞、時事通信などもそれぞれ報じた。一方、報道機関に思いを伝えたいという父親の意向が、勤務する自衛隊を通じて広島法曹記者クラブに伝えられ、26日に共同取材が行われた。先駆けて報じた朝日新聞によると「遺族が全く心を閉ざしているわけではないと受けとめ、折に触れ手紙などで直接取材を要請し続けてきた」という。

 同事件で女児が性的暴行を受けた可能性が高まって以降、匿名で報じてきた毎日新聞と時事通信も、今回の要望は実名で報道。時事通信の編集責任者は「父親が実名を求める理由がよく理解できた。報道についての考えもはっきりしていたので意思をくんだ」と話す。毎日新聞の報道責任者も「性犯罪被害者の匿名化は、被害者の人権やプライバシー、遺族感情を考えてのことだ。『おことわり』を入れることで読者への説明はできると考えた」としている。

 朝日新聞、読売新聞、産経新聞、共同通信、中国新聞は事件のその後を報じる際、被害者名を実名で報じてきたが、遺族感情に配慮し、記事に最初に出てくる時に限ったり、起訴、初公判など節目の報道に限ったりするなどの対応を取ってきた。産経新聞の報道責任者は「近年、実名を出す回数をできるだけ減らしてきた。実名化の意向があれば尊重するが、アピールがない場合にどうするかは悩ましい」と話す。

 性的暴行に関する表現の記述では各社対応が分かれた。朝日、毎日は直接的な記述にまで踏み込んで報じた。

朝日新聞の報道責任者は「遺族のメッセージを受け止め社会に発信し、多くの人に考えてもらうことを目的とする今回の記事で、具体的内容を全く書かないという選択は取りづらかった。読者の受け止め方などを考え、『下半身を触って自慰行為をしたこと、下半身に指で傷つけられたような跡が残っていたことなどが明らかになった』という表現にした」と話している。

 毎日大阪の報道責任者は「父親の思いに応えるには、父親自らが例として挙げた『下半身に指で暴行を加えながら自慰行為をした』という検察側の描写に触れることが欠かせないと判断した」と話す。読者からは「遺族のつらい思いが分かった」など、肯定的な評価が相次いだという。

 共同通信は「指で触るなど」と描写するにとどめた。報道責任者は「読めば分かるぎりぎりの範囲。要望を尊重し最大限、事実を書きたいが、性犯罪ではすべては書けない。他の遺族の考えもある。要望を受け入れていいものか難しい」と話す。

 中国新聞、読売新聞、産経新聞、時事通信などは直接表現は避けた。中国新聞の報道責任者は「現場の記者が要望をどう受け止めるかを重視した。従来のスタンスを変える必要があるか否かをデスクとの間で議論してもらった」と話す。その上で、初報では遺族の意思を伝えるにとどめ、その後、共同取材後の記事で内容を詳述しない方針を読者に説明した。

 読売新聞は、性犯罪の方法や状況は書かないとの原則に従った。「記事中でも触れているが、遺族や社会への影響を考えた結果」という。

 産経新聞の報道責任者は「要望は分かるが、事細かく知りたくない読者もいる。要望の趣旨は、『いたずら』『殺人などの罪』といった逃げた表現ではなく、強制わいせつを受けたという事実の報道だと理解している。その点は応えたい」と語る。

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