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2006年11月
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YouTube が日本の放送局などの要請に応じ動画3万件を削除

* 相互理解への役割討議――日韓編集セミナー開催
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日本の新聞・通信社が中国内の取材体制を強化――増える特派員、広がる支局網
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YouTube が日本の放送局などの要請に応じ動画3万件を削除

 NHK、民放連、民放各局をはじめとする放送、映画、音楽など日本の23団体・事業者は10月20日、米国の動画投稿サイト「YouTube」に著作権侵害となる約3万件のファイルの削除を要請し、YouTubeが応じたと発表した。

 23団体・事業者は「YouTubeに、テレビ番組をはじめ膨大な量の動画が許諾のないまま投稿、掲載されている事態は深刻だ」として、9月8日に意見交換会を開くなど対応を協議。日本音楽著作権協会を取りまとめ役に、10月2日から6日までの5日間を「ユーチューブ対策強化週間」と定め、集中的に削除要請を行った。

 権利者や一般からの情報提供などをもとに、違法投稿約3万件を指摘した。YouTubeは直ちにすべての削除に応じたという。

 権利者団体側は「本来であればYouTube自身が、十分な対策を講じた上でビジネスを行うべきだ。国内のインターネット利用者に対し、権利侵害につながる動画投稿をしないよう協力を求めていく」としている。

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相互理解への役割討議――日韓編集セミナー開催

 第43回日韓編集セミナーが10月25日、東京都内で開かれ、日本側から14社24人、韓国側から13社15人が参加した。「日韓関係の再構築に向けて−−メディアが果たす役割」をテーマに、日韓の双方が基調報告した後、北朝鮮の核実験問題などについて自由に討議した。

 今回は、議長を日本側が朝日の北山憲治(きたやま・けんじ)アジアネットワーク事務局長(Director/Asahi Shimbun Asia Network)が、韓国側は朝鮮日報(CHOSUN ILBO)の金昌基(Kim,Chang Gi)編集局副局長(Deputy Editor in Chief)がそれぞれ務めた。

 冒頭の基調報告で東亜日報(DONG-A ILBO)の李東官(Lee,Dong Kwan)論説委員(EditorialWriter)は、両国関係について「どんな政治的な対立も、大河のような民間交流の力を超えられない段階になった」との見方を示した。

 政治が民間交流の足を引っ張っている関係を回復する上でも、両国の記者による相互理解の増進が必須だと指摘。2002年のサッカーワールドカップ日韓大会以降、全体的に縮小している記者交換や記事交流などの相互交流を質的、量的に拡大させることを提言した。

 その上で、マスコミが大きな意味での国益を求める未来志向を掲げ、メディアをはじめさまざまな分野で相互理解を深めることを通じて、国同士の望まれる関係が見えてくるとし、「両国関係の回復に向け、遅れている政治の世界を引っ張っていこう」と訴えた。

 日本側の基調報告を行った毎日の堀信一郎(ほり・しんいちろう)外信部副部長(Deputy Editor/Foreign News Department) も「文化交流の壁はほとんどなくなった。日韓関係の屋台骨になるべき土台はできあがった」と評価した。

 一方、政治的には「日韓関係は『普通の関係』になる過渡期」との考えを示した。盧武鉉政権には、経済協力を優先する考えはなく、「互いに同じ背丈で国益を主張できる健全な関係になりつつある」と述べた。

 そして両国が良い関係を築くには、「相手を思いやる姿勢が報道には必要だ。薄皮を一枚一枚はがしていく努力が必要になる」と話した。

 この後の自由討議を踏まえ、日本側議長の北山氏が「政府間の関係に左右されない土台作りが、民間やメディアに求められる」と話した。韓国側議長の金氏は「韓日のマスコミが世界的な普遍性を持った報道をしていくことで、さまざまな問題を解決できるだろう」と総括した。

 また、今回初めて4点の合意事項が確認された。その内容は(1)日韓メディア間の交流を拡大する(2)日韓各メディアによる共同企画、共同取材、紙面の共同製作を試みる(3)日韓関係改善をリードするアジェンダを作る(4)両国政府に対し、相手国メディアへの取材アクセスの拡大を求める−−の各点。参加者間の努力目標となる。

 
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10月創刊の「朝日新書」が好調な滑り出し

 朝日新聞社は10月13日、教養新書「朝日新書」を創刊した。既に創刊ラインアップ12点のうち、外岡秀俊(そとおか・ひでとし)東京本社編集局長の「情報のさばき方」、姜尚中(かん・さんじゅん)東大教授の「愛国の作法」など7点が重版となるなど、順調な滑り出しを見せている。新書とは、173×105mm、およびそれに近い判型の本である。

 同社は一流の執筆陣と、第一線で活躍する記者らのルポを朝日新書のセールスポイントに挙げる。同社出版販売部は「世界に広がる情報ネットワークと、新聞記者というジャーナリスト集団を持つ朝日の総合力を生かしたラインアップを作る。あらゆるジャンルに挑戦する」などとしている。価格は800円程度。今後、毎月5冊ずつ刊行する。

朝日新聞社の書籍部門ではこれまで、文芸書、ノンフィクション、選書、文庫などを出版していたが、新書は扱っていなかった。新書市場は、厳しい状況が続く出版業界の中で、ベストセラーも出るなど、他の市場に比べて好調。同社ではノンフィクション系のハードカバーが苦戦している現状もあり、新書市場への新規参入を決めた。

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日本の新聞・通信社が中国内の取材体制を強化――増える特派員、広がる支局網

 中国を取材する日本の新聞・通信各社の特派員数の増加が、この5年間で顕著だ。支局の新設も相次いだ。中国は国内総生産(GDP)が世界第4位まで急速に拡大し、社会の変容も著しい。国際政治の上での存在感も増すなか、北京は米国、欧州の総局と並ぶ海外の取材拠点にも位置づけられる。北東アジアの安全保障に影響を及ぼす北朝鮮の核問題をめぐる動きを取材する役割も大きい。2008年の北京五輪に向け、中国報道の重みは増している。

北朝鮮ウオッチの役割増す――北京

 日本の新聞・通信社の中国特派員の人数を5年前と比べると、22人増の53人(香港・台湾を除く)と増加が著しい。各社単位で見ると、増員数は朝日・共同が4人、読売・日経が3人などとなっている。

 支局の配置も、朝日が広州と瀋陽、読売が瀋陽、日経は重慶、毎日・産経は上海と、多方面に展開する。

 これと対象的なのは、ロシアや中立国。五年前は2〜3人だった各社のモスクワ特派員は1〜2人に減った。チューリヒから日経が、冷戦時代は東欧への窓口だったウィーンからは時事・北海道・中日の各社がそれぞれ撤退した。

 新聞・通信各社の中国に対する積極的な姿勢の背景については、「特に経済は国内総生産(GDP)は世界第4位まで発展し、日本とは相互依存の関係にある」「2001年の世界貿易機関(WTO)加盟で、中国経済は西側に組み込まれた」などとの指摘がある。

 経済力の拡大を背景に、北京五輪(2008年)、上海万博(2010年)と、国際的な催しも目白押し。国際政治の上でも存在感を増す。地下核実験の成功を発表して国際的な関心を集める北朝鮮の問題でも、歴史的な関係に加え、6か国協議の議長国として目を離せない。

 各社には「01年の北京五輪の開催決定、WTO加盟以降、北朝鮮の核開発をめぐる問題もあり、重要性は増している」「今や中国は欧州、米国の総局と並ぶ拠点に位置づけられる」との認識もある。

 総勢38人と最も多い特派員が常駐する北京の中国総局の役割は、中国国内の政治・社会の取材にとどまらない。

「北朝鮮問題の仕事は年々増える一方だった。現在は四割以上を占めるのではないか」といった見方もある。

 共同は1999年から、中国総局に朝鮮半島の問題を専門に担当する記者を置いている。9月に開設した平壌支局の支局長も、中国総局長が兼ねる。

 また、北京五輪を前に、運動部の記者が北京に配置する動きも活発だ。読売は昨年8月に置いた。五輪の開会まで3年あったものの、「中国語の習得を含め、五輪報道の準備のために派遣した。社会主義国なので、取材手続きなどに時間を要する可能性も考慮した」という。

急成長と社会の変容追う――上海・広州・重慶

 世界的な経済都市である上海には今年に入り、毎日、産経の両紙が相次いで支局を開設した。これまでの上海支局の特派員は、経済部から派遣されることも少なくなかった。しかし両紙はともに、経済部ではない。

 産経は「上海は経済成長を象徴する都市」と位置づけた上で、「それゆえに起きる汚職や環境などの社会問題も追いたい」という。毎日も、万博開催を前に経済が急速に拡大した中国社会の変容を取材テーマに挙げる。閉鎖した香港支局に代わり、中国南部をカバーする役割も担う。

 一方、広州には朝日と日経が経済部門の記者を常駐させている。両紙は「広州は製造業も多く経済の中心地」、「経済を通して社会全体を見るため」としている。重慶に日本の報道機関で唯一、支局を置く日経は「経済発展は沿海部が中心。内陸部にも拠点を設け、中国の光と影をバランスよく取材したかった」と説明する。

厳しい取材制約。改善求める

 経済的には改革・開放政策を進める中国での取材上の制約の厳しさは、よく聞かれる。特派員経験者からは、当局の対応に改善を求める声が出されている。その上で規制を乗り越え、現場取材に力を注ぐ必要性が指摘されている。

 1984年に初めて北京に赴任した特派員は「一般市民の自宅で取材すれば、翌日には取材先と私の両方に公安の担当者が来た」と振り返る。情報源を守るため、自転車を使うなど、外国人の訪問を周りに悟られないよう注意した。また、88年に着任した特派員も、尾行や盗聴は日常茶飯事だったと語る。

 しかし90年代に入ると変化の兆しも表れる。当局の許可がなくても、市民への取材はできるようになり、自宅では共産党幹部の批判も耳にしたという。だが「当局の対応は依然、報道の意義を理解していなかった」。

 2002年秋から中国を席巻した新型肺炎(SARS)の取材で、当時、特派員だった人物は「当局にとり都合の悪い質問をする日本人の記者は、会見で指名されなかった」と話す。

 外国人記者が駐在都市の外へ取材に行く際は取材計画について、当局の許可を事前に得なければならないが、申請がすぐ受理されるわけではなく、「例えば公害問題のため、ある工場の取材を申請すると、しばらくして、環境対策について、別の工場なら取材を認めるとの返事が来ることもある」という。


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