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2007年1月
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朝日新聞が編集局の部を廃止――記者行動基準も策定

* 日本経済新聞社が事業持ち株会社に――出版とメディア局を分社に
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新聞協会研修委員会が「実名と報道」を刊行――匿名発表の問題点を指摘

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朝日新聞が編集局の部を廃止――記者行動基準も策定

 朝日新聞社は12月1日付で、東京、大阪両本社編集局の部制を廃止し、グループ、センター制への移行を柱とする組織改革を実施した。昨年の総選挙報道をめぐる「虚偽メモ問題」の発生以降、検討を続けていた編集改革の一環。また、併せて取材活動の指針となる「朝日新聞記者行動基準」を策定した。

 組織改革では、既に部制を廃止している名古屋、西部両本社を含む四本社の編集局の部員全員を「編集局員」とし、持ち場としての「グループ」「センター」に配置する。

 東京、大阪の両編集局には、ゼネラルエディター(GE)と連携して一定のテーマ領域の報道を統括する「エディター」を置く。エディターは、各テーマを担う取材記者の集団である「グループ」を指揮する。

 東京本社の編集局の出稿部門は外報、政治、経済、社会、教育、地域報道、文化、生活、労働、医療、科学、スポーツの12グループに再編した。このうち外報、政治、経済の3グループは、2007年9月1日付で外交・国際、政治、経済政策、産業・金融の4グループに移行する予定。大阪本社の編集局は経済、社会、地域報道、生活文化、科学医療、スポーツの6グループとした。

 固有の媒体を受け持つチームを編集グループとし、有識者の意見などを載せるオピニオン編集、別刷りのbe編集、読者投稿欄の「声」編集の各グループを置く。

 また、特別な技能を要する記者の集合体を「センター」とし、職場管理者として「センター長」または「マネジャー」を置く。

 東京本社編集局には編集(従来の整理部)、写真、デザイン、世論調査、校閲、航空の6センターを、大阪本社編集局には編集(同)、写真、校閲の3センターを設ける。北海道支社の報道部は北海道報道センターに改称する。

 同社は組織改革の狙いについて(1)時代の流れや読者の関心などの変化に、迅速に対応できる柔軟な組織への改編(2)エディターシップの強化(3)各部への過剰な所属意識の解消――の3点を挙げ、「より質の高い、読者の期待に応えられる紙面作りという目標へのインフラ整備だ」などと説明した。

 記者行動基準は「虚偽メモ問題」など過去の教訓を踏まえ、現場の意見を集めながら策定した。朝日新聞の記者だけでなく、同社が発行・制作する媒体の報道・編集にかかわる社員以外のスタッフにも適用する。

 その内容は記者の責務、独立と公正、人権の尊重、読者への説明――を柱とする「基本姿勢」のほか、「取材方法」「公正な報道」「取材先との付き合い」「目的外使用の禁止」「社外活動」「情報や資料の管理」などで構成する。同社のウェブサイトで閲覧できる。

 同社は「内部の規定だが、取材環境が厳しくなるなか、メディアの自律を示す必要があると考えて公開した。いたずらに記者を縛るものではない。新聞の信頼を御高め、記者の行動の自由を確保したい」などと説明している。

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日本経済新聞社が事業持ち株会社に――出版とメディア局を分社に

 日本経済新聞社は12月20日、出版局と電子メディア局の会社分割による分社と、日経本社の新聞を中核とする事業持ち株会社への移行を発表した。いずれも2007年1月1日付。今回のグループ経営改革の狙いについて同社は、経営の機動性を高め、言論報道機関を軸とするメディアグループとしての経営基盤の強化を図ることを挙げている。

 電子メディア局を分社して設立する「日本経済新聞デジタルメディア」(資本金4億円、従業員約160人)は、「NIKKEI NET」の運営などを引き継ぐ。

 出版局は「日本経済新聞出版社」(資本金1億円、従業員約60人)となる。

 分社により独立採算制を強める。いずれも日経本社の完全子会社で、従業員は日経本社から出向する。

 日経本社は新聞事業に加え、グループ全体の戦略立案や事業調整などを統括する事業持ち株会社に移行する。持ち株会社機能はコーポレート部門が担う。

 グループには新聞、出版、デジタル、放送の4事業部門を設ける。グループ会社約70社を傘下に集約し、事業部門ごとの戦略や連携を強化する。

 このうち、デジタル、出版の両事業部門では、両新社に置かれる「グループ代表」が、本社の方針の下、部門全体の運営権限と責任を負う。

 同社は「グループ各社で経営資源が重なる部分が出てきており、メディア大競争時代を生き残るために見直した。コーポレート部門によるグループ全体の戦略立案、事業調整の下、各事業部門が協力し、シナジー効果を出すことが狙い」と説明する。新聞事業を本社に残したことについては「新聞は言論報道機関の存立基盤として中核をなす事業部門であり、本社と一体化して運営する」と話している。

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YouTubeに著作権侵害防止策を求める――日本の放送局・映画。音楽など23団体

 NHK、民放連、民放各局をはじめとする放送、映画、音楽など23団体・事業者は12月4日、米国の動画投稿サイト「YouTube」に対し、多数の映像作品が権利者に無断で掲載される著作権侵害行為に関し、未然に防ぐ具体策を実施するよう要請した。これに対し、YouTube側は12月15日、「上級社員を訪日させて話し合いたい」と回答した。23団体・事業者は同22日に意見交換会を開き、「内容が不十分ではあるものの、協議を進める」との対応を決めた。

 また、23団体・事業者が求めていた暫定措置に対してYouTubeは、(1)著作権の尊重に関する注意事項を日本語で掲載する用意がある(2)利用者認証については改善に努力する−−などと回答した。

 23団体・事業者は要望書で、権利者が違法映像を発見・通知し、YouTubeが削除する現在の手続きが、「大量の違法投稿のために機能していない」と指摘。同社には権利者からの手続きを待たず、侵害行為を予防・回避する責任があるとして、侵害行為の排除と予防システムの実現を要請していた。

 また、暫定措置として、(1)サイトに日本語で違法行為への注意喚起を掲示する(2)投稿にあたり氏名・住所を登録させる(3)違法作品を投稿した利用者のアカウントを無効とする−−の三点を挙げていた。

 23団体・事業者は10月、著作権侵害となるファイル約3万件の削除を要請。YouTubeはこれに応じたが、その後も多数の違法投稿が続いていた。

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新聞協会編集委員会が「実名と報道」を刊行――匿名発表の問題点を指摘

 編集委員会は12月7日、冊子「実名と報道」を刊行した。個人情報保護法や犯罪被害者等基本計画を背景に、行政機関や警察などによる匿名発表が増加傾向にあるなか、実名発表の意義について考え方をまとめた。実名発表を記者が現場で求める上での指針とするとともに、発表当局のほか、犯罪被害者や読者・視聴者の理解を求めるのが狙い。各省庁、犯罪被害者団体や弁護士会などに送付した。

 冊子は(1)報道機関の使命と実名(2)匿名発表の広がりと弊害(3)実名発表と実名報道(4)報道側の配慮(5)報道機関の課題−−の5章で構成する。

 冒頭の「はじめに」では、この冊子が、若い記者が取材で直面する匿名発表を「突破する手助け」になるよう期待を込めた。警察、官公庁には、実名発表と報道の違いに触れた上で「報道したことで起きるすべての問題の責任は、私たちが引き受ける」との決意を表明。「最も重要な読者と考えているのはすべての国民」として、実名発表を求める報道側の考えに理解を求めた。

 第1章では、国民の「知る権利」に奉仕する報道の使命を果たすため、実名が持つ重要性をあらためて訴える。

 第2章は、警察の匿名発表に「消極型」「積極型」の二つがあるとし、積極型を(1)過剰配慮型(2)独善型(3)身びいき型(4)事実加工型−−に類型化した。また、個人情報保護を理由に各省庁で進む匿名化の実例などをもとに、問題点を指摘した。

 第3章では、実名発表を求める理由について、実名が「事実の核心」であり、「取材の起点」となることを挙げたほか、「真実性の担保」の重要性を指摘。実名があれば「発表する側はいい加減な発表や意図的な情報操作はできなくなる。実名は発表内容の信頼性を高める」と述べた。その上で、社会全体が匿名化することによる危険性を指摘し、実名が公表されることの必要性を訴えた。

 第4章は報道側の配慮について説明する。メディアスクラム状況を避けるための取材現場の取り組みを紹介。名前を知られることの不利益が「人格権の侵害」と見なし得る場合は匿名報道としている対応、第三者機関を設置し、自ら取材・報道の検証に取り組んでいることなどを説明した。

 報道機関の課題を展望する第5章では、「人権を守るための報道」が持つ意義をあらためて主張する。報道には今後、「共感の輪を広げる媒介者としての役割」も求められるとした。「メディアが事件、事故報道の使命、役割を十分に果たし、国民に信頼される存在となるためには、記者一人ひとりの意識向上が不可欠だ」と強調する。

 冊子データは2007年1月以降、新聞協会のウェブサイト(http://www.pressnet.or.jp/)からダウンロードできる。

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