朝日新聞が編集局の部を廃止――記者行動基準も策定
朝日新聞社は12月1日付で、東京、大阪両本社編集局の部制を廃止し、グループ、センター制への移行を柱とする組織改革を実施した。昨年の総選挙報道をめぐる「虚偽メモ問題」の発生以降、検討を続けていた編集改革の一環。また、併せて取材活動の指針となる「朝日新聞記者行動基準」を策定した。
組織改革では、既に部制を廃止している名古屋、西部両本社を含む四本社の編集局の部員全員を「編集局員」とし、持ち場としての「グループ」「センター」に配置する。
東京、大阪の両編集局には、ゼネラルエディター(GE)と連携して一定のテーマ領域の報道を統括する「エディター」を置く。エディターは、各テーマを担う取材記者の集団である「グループ」を指揮する。
東京本社の編集局の出稿部門は外報、政治、経済、社会、教育、地域報道、文化、生活、労働、医療、科学、スポーツの12グループに再編した。このうち外報、政治、経済の3グループは、2007年9月1日付で外交・国際、政治、経済政策、産業・金融の4グループに移行する予定。大阪本社の編集局は経済、社会、地域報道、生活文化、科学医療、スポーツの6グループとした。
固有の媒体を受け持つチームを編集グループとし、有識者の意見などを載せるオピニオン編集、別刷りのbe編集、読者投稿欄の「声」編集の各グループを置く。
また、特別な技能を要する記者の集合体を「センター」とし、職場管理者として「センター長」または「マネジャー」を置く。
東京本社編集局には編集(従来の整理部)、写真、デザイン、世論調査、校閲、航空の6センターを、大阪本社編集局には編集(同)、写真、校閲の3センターを設ける。北海道支社の報道部は北海道報道センターに改称する。
同社は組織改革の狙いについて(1)時代の流れや読者の関心などの変化に、迅速に対応できる柔軟な組織への改編(2)エディターシップの強化(3)各部への過剰な所属意識の解消――の3点を挙げ、「より質の高い、読者の期待に応えられる紙面作りという目標へのインフラ整備だ」などと説明した。
記者行動基準は「虚偽メモ問題」など過去の教訓を踏まえ、現場の意見を集めながら策定した。朝日新聞の記者だけでなく、同社が発行・制作する媒体の報道・編集にかかわる社員以外のスタッフにも適用する。
その内容は記者の責務、独立と公正、人権の尊重、読者への説明――を柱とする「基本姿勢」のほか、「取材方法」「公正な報道」「取材先との付き合い」「目的外使用の禁止」「社外活動」「情報や資料の管理」などで構成する。同社のウェブサイトで閲覧できる。
同社は「内部の規定だが、取材環境が厳しくなるなか、メディアの自律を示す必要があると考えて公開した。いたずらに記者を縛るものではない。新聞の信頼を御高め、記者の行動の自由を確保したい」などと説明している。