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2007年4月
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電子部門の機構改革相次ぐ日本の新聞界――SNS、3社が提供

* ボーン・上田賞を朝日新聞の坂尻氏と共同通信の太田氏に授賞
* 山梨日日新聞が社説を再開――署名を付けて執筆の責任を明確化
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オートロックマンション内への配達成功例を集約――新聞協会
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電子部門の機構改革相次ぐ日本の新聞界――SNS、3社が提供

 新聞協会はこのほど、2007年「新聞・通信社の電子・電波メディア現況調査」結果をまとめた。前回(06年)より1社多い86社が、168のウェブサイトを開設している。電子部門の分社化を含め機構改革・組織再編も相次いだ。今回から調査項目に新設されたSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)については、3社が提供するなど、利用者の相互交流を後押しする取り組みが目立ち始めている。

 調査は1997年以降、毎年1月1日現在で新聞協会加盟新聞・通信各社の電子・電波メディアへの参入状況などを尋ねている。86社が回答した。

 結果概要によると、各社で電子部門の分社化を含め機構改革・組織再編が相次いだ。日本経済新聞、産経新聞、日刊工業新聞、京都新聞が、分社化ないし分社化に伴う機構改革を実施。中国新聞は本社と関連会社との役割分担を見直した。

 このほか、朝日、読売、報知、時事、秋田魁、山梨日日、名タイ、岐阜、新潟、福井、山陽、山陰中央、西日本、長崎、熊本日日など多くの新聞社が組織改編を行った。

 調査期間中に新たに開設されたサイトは9サイト。会員制サービスの提供は、30社51サイトから、38社64サイトに増加した。読売、福島民報などが、読者・閲覧者サービスの一環としての会員制サイトを新たに開設した。

 動画コンテンツは、前回調査から8社増の42社が提供する。提供情報は、ニュースや地元の祭事が中心。記者の独自取材や、記者が登場してのニュース報道などを紹介するサイトも増加傾向にある。

 音声のポッドキャスティングを行っているのは4社増え10社。前回調査では実施されていなかったビデオポッドキャスティングの提供も、読売、日経、産経、北海道、大分合同の5社が開始している。

 サイト更新情報を随時配信するRSSを公開しているのは26社。前回の11社から倍以上増加した。配信ジャンルは、一般、社会、スポーツ、地域ニュースなどに加え、社説、特集・連載、コラム、動画ニュースなど、新聞社の発信する幅広い分野の情報に広がっている。

 ブログを開設している社も前回の13社から倍以上増え29社となった。執筆者は、記者のほか、評論家、スポーツ選手、タレントから一般人までと多岐にわたる。地元のプロスポーツチームを取り上げたブログなど、地域に根ざしたテーマのブログも増加した。

 新聞社が利用者の相互交流を後押しする取り組みも目立つ。ブログでは、産経、静岡、山陰中央が、一般の会員登録者がサイト内にブログを開設できるサービスを始めた。SNSも、新たに日経、日刊工業、佐賀が開始している。

 検索・ポータルサイトなど外部事業者に情報提供しているのは、前回と変わらず46社。内容は一般、芸能・スポーツなどが中心となっている。紙面イメージの提供は1社増えて10社、携帯・固定端末向けの情報提供は3社増えて66社、同動画情報提供は1社増えて14社になった。

ボーン・上田賞を朝日新聞の坂尻氏と共同通信の太田氏に授賞

 「ボーン・上田記念国際記者賞」選考委員会は3月12日、2006年度の同賞を朝日新聞中国総局の坂尻信義(さかじり・のぶよし)氏と共同通信外信部(元ワシントン支局員)の太田昌克(おおた・まさかつ)氏に授与すると発表した。

 同賞は、優れた報道活動で国際理解に貢献したジャーナリスト個人に贈られる。両氏の授賞理由と略歴は以下の通り。


【坂尻信義氏】北朝鮮問題をめぐる6か国協議に関連し、一貫して見通しの確かな報道を続けたほか、中国の胡錦濤国家主席の初のインド訪問(06年11月7日付朝刊)を特報したことなどが評価された。

 〈略歴〉1989年入社。香港支局、アメリカ総局などを経て05年から中国総局。41歳。



【太田昌克氏】米国立公文書館や議会図書館の資料をもとに、戦中、戦後の隠れた史実を発掘、特報したほか、北朝鮮の核実験失敗との米政府の見方をいち早く伝える(06年10月14日配信)など、核をめぐる問題でも優れた報道を続けてきたことが評価された。

 〈略歴〉1992年入社。外信部、政治部、ワシントン支局などを経て07年より外信部。38歳。


山梨日日新聞が社説を再開――署名を付けて執筆の責任を明確化

 山梨日日新聞社は4月1日付紙面で、社説盗用問題に関連し休止していた社説を、「論説」「時標」などとして1日から再開すると社告した。読者の信頼回復に向け、署名を入れて執筆者の責任を明確にするほか、社外の有識者による寄稿も定期的に掲載する。

 山梨日日の論説委員は毎週火〜金曜、「論説」を執筆する。共同配信の評論記事も随時掲載する。共同通信の記者も含め、筆者の氏名を明示する。

 土、日曜は、社外の学識経験者や経済人らが、社会の動きなどについて意見や提言を述べる「時標」を新設する。取り上げる問題に応じて、執筆を外部の有識者に依頼する。

 月曜には、これまで日曜に掲載していたレギュラー執筆陣による「論壇」を移す。23日付からは「2007 視座」にタイトルを変更し、執筆陣も交代する。

 再開に当たり、専任で担当する論説委員を、2人から3人に増員した。執筆に当たっては、論説委員による議論を活発にし、全員で根拠にした資料を確認して内容を確認するなど、チェック方法を改善する。萩原満治論説委員長は「今後は、地域の身近な問題を重点的に取り上げていきたい。山梨県は現在、医師や看護師の不足、中山間地の人口流出などの問題を抱えている。こうしたテーマを長期的な視野で考えていきたい」と話している。

 同社は2月6日に前論説委員による社説盗用があったと発表。社内調査の結果、計15本の盗用があったとして、同21日から社説を休止していた。


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新聞博物館で従軍記者が講演――守られながらの取材、報道の中立性に悩み

開戦から4年が過ぎたイラク戦争の従軍報道について、米軍にエンベッド取材した朝日東京の野嶋剛記者(のじま・つよし)(38)が3月24日、横浜市の新聞博物館で講演した。朝鮮戦争に国連特派員として従軍した江越壽雄氏(えごし・としお)(79)も登壇。約80人を前に、戦場取材への想いや報道の中立性などをめぐり、お互いの経験を語った。

野嶋氏は戦場から見た戦争を「井戸の底から眺める空」と表現した。従軍取材で伝えられるのは、戦争の全体像ではなく、戦場で米兵が直面する現実だという。

しかし、米兵に守られながらの取材は「恐怖や喜びも共有するので、自然に感情を移入する」と話した。激戦に巻き込まれ、荷台で無事を祈ったこともあった。このため、報道の中立性との狭間で思い悩んだ。

こうした葛藤を、日本を含まない「国連軍」に従軍した江越氏は持たなかった。しかし、軍隊が出兵する国の記者が、第三者の視点を維持するのは難しいと指摘した。

 それでも野嶋氏は「また従軍したい」として述べた。「ニュースの真っ只中に身を置けるのは、記者冥利に尽きる」からだ。

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オートロックマンション内への配達成功例を集約――新聞協会
新聞協会はこのほど、中高層マンション内への配達に関する「成功事例集」をまとめた。近年、防犯のためにオートロック方式が増え、各室への新聞の配達ができないケースがふえていることから、新聞協会は対策委員会を作り検討を進めてきた。今回、対策モデル地区である東京地区を中心に、2007年3月末現在の成功事例14件を紹介している。新聞協会は「マンションの販売会社、管理会社など、関係者と友好的な関係を築きつつ、住民から支持・理解を得ることが重要だ」とし、各戸玄関までの配達の利便性や重要性が住民に理解され、すべてのマンションで実現されるよう取り組んでいく。

 06年3月から入居が始まった山形市のマンションでは、同地域の新聞販売所のうち1店を選び、そこの専属社員が、顔写真入りの身分証明書、腕章を着用のうえ、各紙をまとめて午前5時から6時の間に階上配達している。夕刊は午後4時から5時の間に1階の集合ポストに入れる。

 山形市内の販売店主会の代表と山形新聞社の販売局が05年、マンションのデベロッパーと管理会社に共同集金・配達システムの実現を要望。06年2月に店主会の窓口を一本化し、共通の購読申込書をデベロッパー担当者から各入居者に配布する取り決めを結んだ。営業行為は行わず、マンションのフロアカウンターに統一購読申込案内書を置き、ファクスや電話で購読申し込みを受け付ける。

 また、デベロッパーが各戸への配達を入居者サービスと位置づけた例もある。東京都内のあるマンションでは、販売開始前に管理会社との交渉で階上配達の実施を決定。デベロッパー側も階上配達を顧客満足向上サービスととらえ、入居者へのPRを徹底した。その結果、推定8割程度という高い購読率につながった。

 配達に当たっては、同地区の5販売所から2人ずつ合計10人がICカードキーを貸与され、防災センターに常駐する警備員の目視確認を受けて入館する。

 都内の別のマンションでは、不動産会社や管理会社が各戸への配達に慎重な姿勢だった。しかし、入居者への説明会で新聞社の社員が配達方法を説明し、2時間にわたる質疑を行った。朝刊配達時に寝室と接する非常階段を使わないなど住民の細かい要望にも応え、階上配達を実現させた。

 このほか、1棟の成功が同じ業者の扱う他物件に波及した例や、事業主側から各戸配達を働きかけられた例、高いセキュリティーを売り物にした物件での成功事例などが紹介されている。

 東京地区で新聞販売店側が主要マンション事業主やデベロッパーに働きかけ、入居説明会などで新聞購読の受付を実施した物件は36に上る。東京地区では、マンション事業者・販売業者と新聞界の信頼関係が築かれつつあるようだ。

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