NSK ニュースブレチン オンライン
2007年6月
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松岡農相自殺 新聞各社、夕刊・号外で速報

* アジアから欧米へ発信強化を――日経国際シンポジウム
* 言論はテロに屈しない――朝日・阪神支局襲撃から20年
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紙面連動型広告が登場――産経新聞
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松岡農相自殺  新聞各社、夕刊・号外で速報 

 5月28日午後零時20分ごろ、松岡利勝(まつおか・としかつ)農相(62)が東京・赤坂の議員宿舎で自殺を図り、午後2時に死亡が確認された。現憲法下では初となる現職閣僚の自殺を新聞各社は、夕刊の追いかけ版の制作や号外の発行で速報した。

 朝日新聞が夕刊4版の追いかけ版を西部本社で1000部発行し、熊本に輸送した。読売新聞東京本社も3版の追いかけ版を制作した。日経は全本社の4版のうち、75・0%を追いかけ版が占めた。

 号外は、朝日が2ページ全カラーを東京・大阪・北海道の3本支社合わせて7万2000部発行した。読売は、2ページ全カラーの号外を大阪・西部・中部の3本支社で3万4000部発行。毎日は1ページカラーの号外を東京・中部・北海道の3本支社で2万部、産経新聞大阪本社が2ページの号外を1万部、それぞれ配布した。

 共同通信社の調べによると、ブロック紙・地方紙のうち13社が号外を発行した。夕刊追いかけ版や通常の最終版の降版後、新たに版を制作して報じる社もあった。

 このうち松岡農相の地元熊本では、熊本日日新聞が1ページカラーの号外を1万3000部発行し、阿蘇市など農相の選挙区や主要駅で3時過ぎから配布した。夕刊追いかけ版も制作し、農相の自殺を速報した。

写真記者、右往左往――慶応病院

 自殺現場となった東京・永田町の衆議院第1議員会館204号室の松岡農相の事務所には、午後1時過ぎから報道陣が殺到、カメラは順番で撮影した。

 松岡農相は心肺停止の状態で信濃町の慶応大学病院に運ばれた。人気音楽ユニット「ZARD」の女性ボーカルが前日に死亡した同病院には、朝から取材陣がかけつけていた。しかし、農相の一報が入り、カメラマンを同病院から引き上げ、議員会館や議員宿舎に向かわせた社も。農相の搬送先をめぐり、カメラマンは右往左往した。

 慶応病院の取材場所は、正門内すぐ左側の一角に設けられた。2時30分には、カメラが10台以上並び、記者も40人を超した(写真)。正面玄関前にも30人ほどの記者が待機した。3時すぎには、「他の患者が写る可能性もある」と、病院構内での撮影は禁止された。






アジアから欧米へ発信強化を――日経国際シンポジウム

 5月23日、日本経済新聞社はシンポジウム「アジア・メディアの未来」を東京・内幸町の帝国ホテルで開催した。韓国や中国の大手紙幹部による基調講演に続き、「アジアにおけるメディア競争と協力の行方」と題したパネルディスカッションが行われた(写真)。インターネット社会において新聞が果たす役割などが議論されたほか、アジアから欧米へ向けた情報発信の強化が指摘された。

 基調講演のうち韓国・中央日報(JoongAng IIbo)の洪錫?(Seok Hyun HONG)会長兼最高経営責任者は、インターネットによりニュースがはんらんする状況を「情報がないのと同じ」と表現した。その上で「長年訓練を積んだジャーナリスト集団だけが重要な事件を分析し、順位を付け伝えられる」と語り、中央日報は「日付のあるニュースだけでなく、掘り下げた視点でも情報を伝えるようにしている」と紹介した。

 パネル討論は洪氏に加え、日経の杉田亮毅(すぎた・りょうき)代表取締役社長、シンガポール紙The Straits Timesのハン・フククワン(Han Fook Kwang)編集長、上海文広新聞伝媒集団(Shanghai Media Group)(SMG)の黎瑞剛(Li Ruigang)総裁の計4人がパネリストとして登壇。日経の高橋雄一(たかはし・ゆういち)取締役編集局長がモデレーターを務めた。

 ハン氏はネットを利用した新媒体に対し「信頼性に加え、読者の共感を得られる記事を発信できれば対抗できる」と述べた。杉田氏は、ネットの強みとして速報性、双方向性、ビジュアル性の3点を挙げ、「2年後をめどに、電子新聞を登場させたい」と表明した。コンテンツが有料で、最新技術を用いて収益を確保できる広告を掲載し、「レストランのアラカルトメニューのような機能があり、関連する情報にとべる電子新聞をデジタルテレビなどを通じ提供したい」と語った。

 台頭するアジアの情報を「アジアの視点で欧米に発信していくべきだ」との意見も相次いだ。黎氏は、SMGグループは米CNBCテレビと提携し「英語で1日4回、5分程度の経済情報を衛星を通じ米国でも放送している」と述べた。

 洪氏は「北東アジアの経済情報の需要は高まっている」として「各社の英語サイトをつなげ、世界に情報発信していきたい」と語った。杉田氏も「物事のとらえ方は文化や習慣によって異なるにもかかわらず、欧米の見方が世界中に伝えられている。ポータルサイトを開設するなどして、欧米にアジアの考え方を伝えよう」と訴えた。

言論はテロに屈しない――朝日・阪神支局襲撃から20年

 小尻知博(こじり・ともひろ)記者=当時29=が殺害されたのをはじめ、記者2人が散弾銃を持った男に殺傷された朝日新聞阪神支局襲撃事件から、今年の5月3日で20年となった。阪神支局3階の襲撃事件資料室では、事件発生の午後8時15分、秋山耿太郎(あきやま・こうたろう)代表取締役社長らが黙とうを捧げた。1日付朝刊には「言論はテロに屈しない」と題した社説を掲載し、「われわれは暴力を憎む。暴力によって筆をゆるめることはない」との決意を改めて表明した。4月28日には兵庫県西宮市の市立勤労会館で、言論の自由を考える公開の対談を開催。同日から5月3日まで、阪神支局資料室で「『みる・きく・はなす』はいま」展を開いた。

 5月1日付の社説は、言論の自由をうたった戦後においても、言論に対するテロや暴力はなくならなかったと指摘。メディアが暴力に敏感に反応し、政治家や経済人が即座に強い姿勢を示すことの重要性を訴えた。

 朝日は3日、襲撃現場となった阪神支局の1階に記帳・拝礼所を設置。市民ら約630人が訪れた。事件発生時刻には秋山社長ら約80人が1分間の黙とうを捧げた。

 阪神支局の資料室で行われた展示では、1990年の本島等(もとじま・ひとし)元長崎市長銃撃事件など、言論の自由と暴力が問われた20年間の事件に関する記事、写真パネル約80点が飾られた。襲撃事件のときに小尻記者が着ていた愛用のブルゾンも初めて公開された。訪れた市民らは6日間で1000人を超す。松浦和夫(まつうら・かずお)支局長は「関心の高さを感じた」と話した。

記者対談「攻撃に強く声上げて」

 4月28日の対談のタイトルは「『みる・きく・はなす』はいま」。言論の自由をめぐる問題を取り上げる連載シリーズの名称で、1987年の新聞週間に合わせ始まった。
 当日はフリージャーナリストの江川紹子(えがわ・しょうこ)氏と、朝日東京の臼井敏男(うすい・としお)論説副主幹が登壇。会場には約300人の市民らが集まった。江川氏は、新聞社や市民に言論への攻撃に対し、声を強くあげるよう訴えた。

 臼井氏は、取材にかかわった事件当時を「犯人を割り出せば撃たれるかもしれないという恐怖はあった。それでも犯人をつかまえたいとの思いは、取材記者全員に共通していた」と振り返った。その上で「重要なのは変わらないことだと考えた。事件前と同じように取材し、書くことが、テロに対する闘い方だ」と強調した。

 この20年の言論状況について、江川氏は「物を言う人たち全体が少しずつ変わった」との認識を示した。「従軍慰安婦問題をめぐり、日本に批判的な発言をすると『媚中派(びちゅうは)』とレッテルを張られる」などの例を挙げ「今の社会の『空気』に恐さを感じる」と述べた。

 江川氏は「フリーの記者など個人が狙われたとき、新聞社などは『言論に対する攻撃』ととらえて、強く声を上げてほしい」と話した。会場にも、言論に対するテロや暴力が起きたとき「『頑張れ、助けてやるぞ』と言ってくれることが、支えになる」と訴えた。


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もったいない展開催−ニュースパーク 毎日新聞社と共催

 神奈川県横浜市の新聞博物館(ニュースパーク)で4月29日から企画展「MOTTAINAI(もったいない)へ〜キャンペーン報道の力」が始まった。毎日新聞社との共催で、6月24日まで開催される。4月28日の開会式には、毎日新聞社の北村正任(きたむら・まさとう)代表取締役社長、ノーベル平和賞受賞者であるケニアのワンガリ・マータイ元環境副大臣らも出席した(写真)。

 北村社長は「環境を中心に、毎日新聞社が取り組んできた報道の意味や役割を知ってほしい」とあいさつ。マータイ氏は「モッタイナイは『感謝する』という意味もある素晴らしい言葉だ。世界中にモッタイナイ精神を伝えたい」と述べた。

 MOTTAINAIのキャンペーン・ソングなども披露されたほか、東京・上大崎の杉野服飾大学の学生がデザインしたレジ袋に代わる新しい買い物袋がマータイさんに贈呈された。

 企画展は、毎日新聞のMOTTAINAIキャンペーンのほか、過去のキャンペーン報道の紙面、マータイ氏が取り組むグリーンベルト運動をパネルなどで紹介している。エコ・ラッピング「風呂敷」の結び方教室や地球温暖化CO2を測る実験も開催されている。

 6月9日には毎日新聞の中井良則(なかい・よしのり)論説副委員長が「アメリカ大統領選挙と地球環境」を、23日には同社の水と緑の地球環境本部の真田和義(さなだ・かずよし)環境グループ委員が「旧石器発掘ねつ造からMOTTAINAIへ」をテーマにそれぞれ講演する。環境保全をテーマにした寄席、コンサート、再生繊維を用いたショッピングバッグの提案ショーなども開催されている。

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紙面連動型広告が登場――産経新聞
 記事と広告の連動を目指し、中小・地方企業の出稿増を図る−−産経新聞の5月8日付紙面に、面と広告を連動させた新しい広告スペース「NEWSPACE(ニュースペース)」が登場した。

 ニュースペースの受注、制作を手がけるのは、産経など3社で3月末に設立した広告会社「ニュースペース・コム」。

 ニュースペースは、ネット広告の主流となった「検索連動型広告」の機能を新聞に導入する。広告主は、読者に訴求したい商品・サービス内容に近い内容の記事が掲載される面を指定できる。経済、運動、文化などの面指定が可能。代表取締役社長を務める産経新聞東京本社の岳中純郎(たけなか・すみお)総務局長は「面と広告を連動させることで、広告効果を高めたい」と話す。

 料金は掲載面による違いはなく、制作費込み。
 将来的には、面の選択だけでなく、ニュースとの連動を目指す。グループ各紙や雑誌も含めた媒体のセット売りも検討中だという。ネットでの受注も10月をめどに始める予定。

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