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2007年10月
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新聞文化賞(Newspaper Culture Award)決まる

* 2007年度新聞協会賞決まる−編集部門4件,技術1件、経営・業務2件
* 朝日、読売、日経が配達で提携
* 「ウェブ・ファースト」打ち出す――産経新聞、MSと新サイト
* 毎日新聞が新サイト「毎日jp」――信頼のオープンサイト」目指す
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新聞文化賞(Newspaper Culture Award)決まる

 新聞協会は9月5日、2007年度の新聞文化賞を渡邉恒雄(わたなべ・つねお)読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆と中江利忠(なかえ・としただ)元朝日新聞社代表取締役社長に贈る事を決めた。10月16日に長野市で開催する第60回新聞大会式典で授賞式を行う。新聞文化賞の授賞は、1995年の広岡知男(ひろおか・ともお)氏以来、12年ぶり。

 新聞文化賞は、言論ならびに新聞事業を通じて社会文化に顕著な功績のあった新聞人に贈られる。1951年に創設された。渡邉、中江両氏の受賞で、受賞者は21人となった。

 授賞理由によると、渡邉氏は、半世紀余りにわたって新聞記者、新聞経営者として社業に尽くし、新聞界の発展および安定に力を注いだ。卓越した経営手腕によって、読売新聞の発展に尽力し、社論の確立に強力なリーダーシップを発揮したほか、日本の文化水準の維持・向上のため活字文化の振興に積極的に取り組み、民主主義社会における新聞の役割を広く社会に浸透させた。
 新聞協会長としては、新聞経営の根幹にかかわる再販制度の存続を果たすとともに、21世紀に向け新聞倫理水準の一層の向上をはかるため、新たな新聞倫理綱領を制定するなど、新聞界に果たした功績が高く評価された。

 中江氏は、編集幹部、経営責任者として、言論の自由の確保とそれを支える新聞倫理の向上に尽力した。
 新聞協会の会長在任中は、内外ともに激しく変化する環境のなか、新聞の公共性や文化性を維持すべく、陣頭にたって再販堅持、販売正常化を推進した。また、「新聞メディアの強化に関する委員会」を新設するなど、新聞の役割を読者にアピールする活動に力を注いだ。国際新聞編集者協会(IPI=International Press Institute)など国際団体の活動に積極的に協力するとともに、各国新聞界との交流拡大に努め、日本の新聞界の評価を高めるなど、新聞界に果たした功績が高く評価された。



渡邉恒雄(わたなべ・つねお)氏略歴

東京都出身。1926年5月30日生まれ。81歳。東京大学文学部哲学科卒業。1950年読売新聞社入社。政治部記者、ワシントン支局長、編集局次長兼政治部長などを経て1979年取締役・論説委員長。常務取締役・論説委員長、専務取締役・主筆兼論説委員長、代表取締役副社長・主筆などを歴任後、2004年1月から代表取締役会長・主筆(現職)。

日本新聞協会では1988年から2003年まで理事。この間、1999年から2003年まで会長を務めた。



中江利忠(なかえ・としただ)氏略歴

千葉県出身。1929年10月4日生まれ。77歳。東京大学文学部社会学科卒業。1953年朝日新聞社入社。名古屋本社経済部長兼論説委員、東京本社経済部長などを経て、1978年12月東京本社編集局長、1982年取締役東京本社編集局長。1989年代表取締役社長。2005年6月社友。

日本新聞協会では1989年から1996年まで理事。この間、1991年から1995年まで会長を務めた。


2007年度新聞協会賞決まる−編集部門4件,技術1件、経営・業務2件

 新聞協会は9月5日、2007年度の新聞協会賞の受賞作として編集部門4件、技術部門1件、経営・業務部門2件を決定した。10月16日に長野市で開催する第60回新聞大会式典で授賞式を行う。新聞協会賞の3部門そろっての授賞は96年以来、11年ぶりとなる。

 新聞協会賞は新聞界(通信・放送を含む)全体の権威と信用を高める活動の促進を目的に、1957年に創設された。編集、技術、経営・業務の各部門で顕著な功績があった新聞協会加盟社所属の新聞人に贈られる。

 今年は編集部門に72件、技術部門に2件、経営・業務部門に7件の応募があった。各部門の選考委員会での審議を経て、5日の選考委員会に、編集部門4件、技術部門1件、経営・業務部門2件が選考分科会から上申された。選考委員会は、上申通り7件に授賞を決めた。
 技術部門は3年連続、経営・業務部門は5年ぶりの授賞となった。

 受賞者と受賞作は次の通り(敬称略)

 【編集部門】

〈ニュース〉
北日本新聞社(KITANIPPON SHIMBUN)高岡支社編集部・笹谷泰(ささたに・やすし)=「高校必修科目未履修」の特報

 〈写真・映像〉
毎日新聞西部本社編集局報道部(前長崎支局)・長澤潤一郎(ながさわ・じゅんいちろう)=長崎市長銃撃事件の写真報道

 〈企画〉
信濃毎日新聞社(SHINANO MAINICHI SHIMBUN)「民が立つ」取材班(代表)編集局報道部次長・小市昭夫(こいち・あきお)=連載企画「民(たみ)が立つ」▽日本放送協会(NIPPON HOSO KYOKAI (NHK))「ワーキングプア」取材班(代表)報道局取材センター社会部副部長・中嶋太一(なかじま・たいち)=NHKスペシャル「ワーキングプア」

 【技術部門】

西日本新聞社(THE NISHI-NIPPON SHIMBUN)新編集システム推進本部(代表)総合工程管理室長兼新編集システム推進本部事務局長・矢野正美(やの・まさみ)=創造と改革 マルチユースと究極の効率化を求めて 新編集システム全面稼働 6つの基本システムを同時並行構築

 【経営・業務部門】

東奥日報社(TO-O NIPPO)(代表)代表取締役社長・主筆・塩越隆雄(しおこし・たかお)=「動く新聞 聞こえる新聞」

静岡新聞社(SHIZUOKA SHIMBUN)(代表)編集局次長兼出稿部長・鈴木理久(すずき・まさひさ)、社長室次長兼経営戦略推進部長・渡邊治彦(わたなべ・はるひこ)=「静岡かがく特捜隊」の取り組み


朝日、読売、日経が配達で提携

 朝日新聞社、読売新聞グループ本社、日本経済新聞社の三社は10月1日、販売・インターネット両事業で業務提携することで合意したと発表した。災害時等の新聞発行をめぐる相互援助についても覚書を締結した。全国紙三社による広範囲な業務提携は異例。読者に正確で迅速な報道と多様な言論を提供し、新聞事業を今後も発展させたいとしている。

 提携は、朝日・秋山耿太郎(あきやま・こうたろう)、読売グループ本社・内山斉(うちやま・ひとし)、日経・杉田亮毅(すぎた・りょうき)の各代表取締役社長が会見し、発表された。杉田氏は冒頭、三社を代表し、今回の提携について「メディアの多様化が進むなか、新聞が最も信頼性の高いメディアであり続けたいと考えた」と説明。その上で「読者に正確で迅速な報道と多様な言論を提供し、社会の公器としての新聞の重要な役割を今後も果たしたい」と述べた。

 販売分野での提携は、配達などの共同化を進める。戸別配達網の維持・強化を図る狙い。住民の高齢化や都市部への人口集中、山間部の過疎化が進み、戸別配達網の維持が難しくなってきている現状が理由に挙げられた。秋山氏は「個別社で専売店を維持することが厳しい地区が出てきている」と話す。今回の提携で、読者に引き続き多様な言論を提供することを目指す。

朝日と読売は既に、北海道の十数か所で共同配達を実験的に始めており、朝日から読売に全国展開の申し出があったという。漸次、地域を広げていくことで合意。山間へき地を中心に、都市部でも普及率の低い地域で実施する。北海道のほか、大阪本社管内では大阪市内の一部、西部本社管内ではモデル県とした鹿児島県内を手始めとする。

 三社は、他の全国紙やブロック紙・地方紙の参加も妨げないとした。内山氏は「戸別配達網を長期にわたり維持するには、現場での協力が必要だ。他社を駆逐したいのでも、販売店を減らしたいのでもない」と語った。

 また、杉田氏は各社の販売政策は尊重するとし、「各社と幅広く協力する、従来の基本方針は動かさない」と強調した。

 一方、ネット分野では、共同ニュースサイトを開設し、各社が単独では展開できないサービスを提供するという。新聞社が発信する報道や解説、評論の価値をネットの世界でも高めるのが狙い。

 ネット上で流通するニュースの大半を新聞記者が取材しており、ネット社会に果たす新聞社の役割を改めて認識してもらう。杉田氏は「真のニュース発信者として、ネット社会での発言力を一層高めたい」と述べた。他の新聞社の参加は妨げないとしている。

 共同サイトは、2008年初めのサービス開始を目指す。三社の主要記事や社説の読み比べなどもできるようにする。閲覧は無料で、広告収入で運営する。事業主体は、民法上の組合の設立を検討。事業費は数億円規模を予定し、三社が均等に負担する。3年での黒字化を目指す。

 提携は、各社が独自に展開するネット事業については妨げない。既存のポータルサイトへの記事提供について、内山氏は「現時点では、ヤフーへの配信停止は考えていない」と語った。


ウェブ・ファースト」打ち出す――産経新聞、MSと新サイト

 産経デジタルとマイクロソフト日本法人は10月1日、「MSN産経ニュース」を開始した。ニュースは産経新聞社が提供。紙とウェブの編集体制を統合し、スクープも紙媒体の発行を待たずウェブに掲載する「ウェブ・ファースト」を目指す。

 開設にあたり産経は8月、編集局にウェブ編集長を新設した。4人の編集長が交代で紙面とウェブのニュースを編集する。

 9月25日に開かれた記者会見で住田良能(すみだ・ながよし)代表取締役社長は「ウェブ・ファーストを目指す」と表明。「紙かネットか二者択一の議論ではなく、ネット時代に報道機関としての使命を果たしたい」と話した。「ネットと紙の間にある高く厚い壁を壊し、取材記者の意識改革を加速させたい」とも述べた。速報性に加え、質・量とも充実した「ウェブ・パーフェクト」を志向するという。

 産経デジタルの阿部雅美(あべ・まさみ)代表取締役社長は事件報道で障害があるときなどを除き「ウェブ・ファースト」を実施していきたいと述べた。

 サイトは、利用者の関心が高いニュースを「トピックス」として掲載する。事件や話題など200以上のトピックスを設け、関連情報やリンクを集約する。

 産経デジタルの近藤哲司(こんどう・てつじ)取締役は「記事の掲載期間を2か月から原則6か月に延長する」と述べた。一部の記事には掲載期限を設けない。重大事件の判決文や、政治家の会見内容を全文掲載することもあるとした。

 ウェブ用書き下ろし連載「インターネットが変えたもの」「記者は見た 世紀の事件」も10月1日からスタートさせた。一部は後日、産経の紙面で掲載する。

毎日新聞が新サイト「毎日jp」――信頼のオープンサイト」目指す

 毎日新聞社は10月1日、総合情報サイト「毎日jp」をスタートさせた。ヤフーやリクルートが出資するネット会社オールアバウトと提携し、ニュース報道に加え、暮らしに役立つ情報を豊富に盛り込む。「開かれたサイト」を目指し、著名なブロガーらとの連携も強化するとしている。

 9月18日の記者会見で、朝比奈豊(あさひな・ゆたか)常務取締役は「MSNと提携した3年半で、多くのことを学んだ。更に自由で多様な情報提供をし、信頼のオープンサイトを目指したい」と語った。

 毎日jpは、情報を「ニュースセレクト」「エンターテインメント」「ライフスタイル」の3つに分類し表示する。幅広い分野からお勧めのブログを紹介するほか、ブロガーらの参加協力も求めていく。広告面では、オールアバウトと協力するという。

 9月末までマイクロソフト日本法人と提携し、運営していた「MSN毎日インタラクティブ」は、ページビュー(PV)が月間3〜4億に上ったという。提携解消でPVの半減が見込まれるものの、2年間で現在の水準に戻したいとしている。

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公開事業で「はがき新聞」作り――新聞教育支援センター代表ら、利点討議

 「長生きしてね」「リレーの選手になりました」――。先生が見出しの言葉を尋ねると、子供たちの声が教室に響いた。東京都小平市立第7小学校で9月12日、総合的な学習の時間に行われた「はがき新聞」作りでの1コマ(写真)。

 「はがき新聞」は、地域の特別養護老人ホームのお年寄りあてに制作された。敬老の日に向け、長寿をお祝いするとともに、運動会に招待する記事を執筆。見出しを付け、はがきの上に新聞形式で配置する。

 当日は、小平市小学校の公開授業として、20人の教師が見学。

 終了後の研究会では、授業を行った斉藤眞弓(さいとう・まゆみ)教諭が「はがきサイズだと、文章が苦手な子も取り組みやすい」と述べた。新聞教育支援センター代表の吉成勝好(よしなり・かつよし)氏は「建設的な批判や考える力が要求される『PISA型読解力』向上のためには、新聞教育が有用だ」と話し、総合学習に「新聞」を取り入れた事例を紹介した。はがき新聞についても、双方向性などの利点を挙げた。

 新聞教育支援センターは、今年7月に設立。新聞を使った教育に熱心な小中高校の元教師や元記者が参加。新聞教育の実践・研修を支援している。

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