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2008年8月
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* 北京オリンピック取材
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事業外収入探る報道各社
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北京オリンピック取材


 2008年8月8日、北京オリンピックが開幕した。アジアで開かれる夏季大会は、1964年の東京、1988年のソウルに続き20年ぶり3回目。報道各社は「スポーツイベント」としてだけでなく、中国の実情、変容を描き出す一つの契機ととらえている点が、近年のシドニー、アテネ大会などとは大きく異なる。

 共同の荻田則夫(おぎた・のりお)編集局次長は「経済発展著しい中国は、オリンピックを契機に名実ともに大国になろうとしている。競技取材とは別に、あらゆる側面を描くことをテーマにしている」と語る。昨春部際を越えた取材チームを設置。通常、五輪取材に当たる運動、社会、外信の各部のほか、政治、経済両部の記者も加えて対応する。

 朝日も、五輪を中国が変わる契機ととらえ「アテネ直後から準備を進めてきた」(佐藤吉雄(さとう・よしお)東京本社編集局長補佐)という。東京、ソウル両五輪の成功が日韓両国の飛躍に結びついたように、アジアで開かれる五輪としての位置付けにも注目する。

 佐藤氏はまた、五輪開催が結果として、閉鎖的だった中国の実情を報道する好機となったと指摘する。取材側では「中国が外国メディアに取材の自由らしきものを認め、従前より直接取材ができるようになった」点が大きい。

 新聞各社は取材カードを持たない記者も数人から十数人単位で派遣し、競技場外の取材に備える。各社、前回大会からは数割規模の増員となる。毎日東京の藤田健史(ふじた・たけし)運動部長は「オリンピックの成否は、閉会後の行く末にも影響が大きい」と見る。都市開催が原則にもかかわらず、ここまで国家が前面に出る五輪は近年では珍しいとし、「平和の祭典が変質されることはないか、チェックするのもメディアの役割。13億の民衆のエネルギーがどう出てくるかを分析し、伝えたい」としている。

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「北海道洞爺湖サミット」報道


  7月9日まで三日間にわたり北海道洞爺湖町のザ・ウィンザーホテル洞爺で開かれた第34回主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)には、国内外から数多くの記者が詰めかけた。しかしテロを想定した厳戒態勢が敷かれ、留寿都(ルスツ)町に設けられた国際メディアセンター(IMC)を拠点にした取材は、多国間会合の大半がホスト映像制作者や、外務省の公式カメラマンに限られたほか、事後説明もテレビ電話を通じて行われるなど、取材しにくさを指摘する声が相次いだ。

 今回のサミットは2001年の米同時多発テロ以降、初めて日本で開かれたサミットということで、厳重な警備が敷かれた。主要会合の多くの取材は、外務省公式カメラマンとNHKというホストスチルカメラマンとホストブロードキャスターに限られた。先だって開かれた閣僚級会合でも取材ヘリの飛行自粛要請が出され、新聞協会から警察庁に申し入れを行うなど、警備側と報道側でのやり取りが続いた。

 ホスト映像は国際放送センター(IBC)へ伝送され、各メディアの利用に供される仕組み。IMC内に設置されたモニターでも放送された。ホスト写真画像は、記者専用サイトで閲覧でき、ダウンロードのうえクレジットなしで使用できた。

 ホストカメラマンによる撮影を危惧する声も多かった。朝日東京の斎藤淳一(さいとう・じゅんいち)編集局長補佐は「外務省側は世界標準と説明するが、ある意味でお仕着せの画像が出される」と指摘した。

 社交行事や福田(ふくだ)首相による各国首脳の歓迎風景、二国間会談などは冒頭の数分間に限り、ペン、カメラの代表取材が認められた。行事ごとに人数が設定され、ペンは応募が多ければ抽選で、写真は東京写真記者協会で事前に調整のうえ、決められた。

 代表取材で不満の声が多かったのは、集合時間が行事開始の概ね3時間前に設定されたこと。移動やセキュリティーチェック以外に待機時間も長かったという。毎日東京の丸山雅也(まるやま・まさや)政治部副部長は「短い時間でも会議場の雰囲気が分かるなど、記者には良い経験になる。しかし、限られた人数の中で、記者が4〜5時間も拘束されるのは厳しい」と話す。

 会議終了後の外務省によるブリーフィングは、国内外のメディアそれぞれに対し行われた。霞クラブ(外務省担当の記者クラブ)加盟社には終了後時間を置かずに行われたものの、会場とIMCを結ぶテレビ電話が使われた。

 朝日の斎藤氏は「一刻も早く取材するためには仕方がない面もあるが、お互いの息遣いも分からなければ、終了後に囲んでニュアンスの確認もできない。取材は難しくなっている」と話す。各社、携帯電話で背景解説を求めざるを得ないなど苦労したようだ。

 毎日の丸山氏も「記者の足腰が弱る」と危惧する。「目の前に記者がいなければ答える方は楽。取材する側も同じだ。こうした取材が当たり前になるのは恐い」と話した。

 一方、外国プレス向けには、会議場からIMCの会見棟に報道官や担当者らが来て説明したものの、開始時間に注文が出される場面も見られた。気候変動を主な議題とした8日の主要8か国によるワーキング・ランチは、午後2時18分に終了。42分から福田首相が記者団のぶら下がりに応じIMC内でも映像が流された。

 しかし外国プレス向けの説明は午後5時を回ってから始まった。AP通信のコールマン東京支局長は「日本のメディアで気候変動の合意内容が報道されているのに、合意に関する英語の説明はなく、首相が突然モニターに登場し驚いた」と話していた。


「インターナショナルメディアセンターには、多くの海外メディアが詰めかけた」

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事業外収入探る報道各社 

 

 新聞社が保有する不動産を活用して、収益に結びつける動きが大都市を中心に進んでいる。建物の老朽化や本社機能の移転などによる再開発が直接のきっかけだが、販売・広告両収入で厳しい状況が続くなか、現在は新聞事業のために取得した不動産を利用して商業施設、オフィスビルなどを建設し、新聞発行事業を経営的に支えていくとの認識も各社に共通のものだ。利益を追求するだけでなく、地域の活性化に寄与し、文化・情報発信の拠点としての役割を担うなど、新聞社として公共性に配慮した取り組みが大きな特徴だ。

 新聞事業を支える不動産事業の成功例

 「新聞発行業を経営的に下支えすること」。毎日新聞社の木村泰史(きむら・やすし)資財本部次長は、新聞社の不動産事業の役割を、こう説明した。

 同氏によると、毎日新聞社の不動産収入は2007年度までの5年間で約5割増だという。最近の成功例に、名古屋駅前のミッドランドスクエア(MIDLAND SQUARE)を挙げた。トヨタ自動車などと共同開発し、07年春に開業。ブランドショップや飲食店などが並ぶ地上5階建ての建物と、47階建てのオフィス棟から成る。名古屋駅前の再開発の目玉のひとつとなった。貸室部分は、開業の数か月前にすべて埋まった。

 読売東京の荒木識(あらき・さとる)管財部次長も「不動産事業が固定的な安定収入であることは間違いない。経営陣も販売、広告に次ぐ第三の収入源と言っており、この考えは一貫しているのではないか」との見方を示す。
 同社は07年9月、初めての全館商業ビル「マロニエゲート」(MARRONNIER GATE)を東京・銀座に開業した。初日は約3万人が訪れた。地上12階建ての館内には、ファッションブランド店などが入居する。向かいには読売東京が出資する百貨店、プランタン銀座が位置しており、両施設の相乗効果を期待する。入居率は開業以来100%を維持する。

 地方紙を見ると、神戸新聞が複合商業施設「ミント神戸」を運営する。06年10月にオープン。阪神大震災で損壊した旧本社跡地に建設した。「震災からの復興のシンボルにしたい」との願いも込めた。
 織戸新(おりと・あらた)取締役経営企画室長によると、開業1年目は1200万人が訪れ、今年も900万人以上を見込む。業績も好調で、収入は新聞事業単体の1割強に及ぶ約28億円。「関連事業の連携を強化して、核である新聞事業を支えていきたい」と話した。

 

 今年秋以降も新開発計画が続く

 不動産事業の展開は、新聞社の収入を支えてきた販売・広告の両収入で厳しい状況が続くなか、今秋以降も続く。

 中日は今年10月、東京・品川の旧東京本社跡地に初めて、賃貸ビルの建設を始める。10年末に地上19階、地下3階のオフィスビルが完成する。

 朝日新聞は大阪本社がある大阪市・中之島の再開発で、高さ約200メートルの東西2棟からなる「中之島フェスティバルタワー(仮称)」を建設する予定。東地区の完成は2013年、西地区は2018年を予定する。「文化的で情報発信ができるビル」を目指す。
 朝日が不動産事業に着目したのは、この1〜2年だという。中之島の再開発がきっかけとなった。岡田信之(おかだ・のぶゆき)財務本部長補佐は「130年の歴史の中で、新聞事業を展開し、発展させるために土地を取得してきた。今度はその土地を生かして新聞事業を支えていきたい」と話す。しかしあくまでもその役割は「新聞に元気になってもらうために汗をかく」ことだと強調する。

 新聞社にとっての不動産事業

 では、新聞社にとり適正な不動産業の規模はどれくらいなのか。「新聞社が社会的使命を果たすために必要な規模を見極めるのは難しい」と、毎日の木村氏は話す。不動産事業にリスクが伴うことを理由に挙げた。保有経費だけでなく、地価の下落、原油高による建築資材の高騰、景気悪化によるテナント撤退など、社会情勢の変化により影響を受ける可能性も否定できない。木村氏は、バランスのいい戦略を描きたいとしつつ「会社の将来を託す魔法の杖では決してない」と指摘した。
 こうした目的に加え、不動産事業の役割には街のにぎわいや、文化・情報発信の拠点作りという側面があることも、各社から指摘された。毎日の木村氏は、「地域とのつながりを持つことが不動産事業の端的な意味だ。地域・都市への貢献では前面に立つ」と話す。

 地域社会の文化や公共に役立つことを重視

 毎日のミッドランドは名古屋駅前のにぎわいを作り出した。
 オフィス棟には、約200人を収容するホールも設けた。施設を文化拠点としてほしいとの名古屋市の要望も踏まえ、近隣の企業で働くビジネスマン向けに会員制の講演会を毎月1回開く。会員は現在、100社を超す。落語など文化事業でも力を注ぐとしている。

 神戸新聞の「ミント神戸」も文化施設と情報発信を重視するという。
 「日本の映画発祥地」とも言われる土地柄にもちなみ、複合映画館を誘致した。神戸新聞文化センターも入る。
 情報発信では大型LEDビジョンで、ニュースだけでなく、兵庫県内の観光地や特産品の情報なども放映する。NHKと協定を結び、地震など災害時には緊急放送も流す。織戸氏は「新聞社は情報産業。ビル全体を情報発信の拠点にしたかった」と狙いを語る。

 中日が品川に計画するオフィスビルには、低層の付属棟に50〜60人規模の保育所を誘致するほか、災害時には、本棟地下1階の多目的会議室を緊急避難場所として提供することにしている。
 小室紘之(こむろ・ひろゆき)取締役品川開発室長は「40年にわたり東京本社を構えていた土地でもあり、近隣住民も親近感を持っている」とした上で広場状公開空地や地元住民用の集会室を設けるなど「新聞社の事業として、近隣と公共に役立つこと」をコンセプトに挙げた。



「朝日新聞大阪本社が入る予定の中之島フェスティバルタワー完成
イメージ図=朝日新聞社提供」

 

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