新聞について聞きました!著名人インタビュー

新聞は「心の栄養」 2013年4月

片山善博・慶大教授

――大学で教べんをとっておられて、若い人の活字離れは深刻ですか。

 学生が新聞を読んでいる割合は随分と低いです。政治学を学ぶ学生が新聞を読まないのは論外で、必ず読むように言っています。

――情報はインターネットで十分でしょうか。

 紙の新聞は良識的価値観をもってニュースにアクセントをつけています。ゴシップも国際情勢も政治も断片的に羅列されたネットのニュースだと読む側が整理しないといけない。限られた時間の中で大切なものを把握するには、編集機能でろ過された記事を読むことが重要です。羅列されたものでは大事な情報が欠落する可能性があります。私の場合、紙の媒体にマーカーを引き、書き込みをすることが知的活動に非常に有効。専門の地方自治でも問題点の把握や改革の問題意識を持つきっかけとなるのは、日々の新聞です。

――新聞はどんな役割を果たすべきでしょうか。

 国民と政府が情報を共有して初めて政策の吟味や批判ができます。権力側は情報の独占を画策する人も多い。新聞には権力に迫り、情報公開をさせる役割があります。知事時代、県政で秘密にしなければいけない話は警察の捜査情報くらい。隠そうとする人は適正な手続きを経ずに政策を決め、そこを突かれたら困るのでしょう。

――紙面への注文はありますか。

 全国ニュースでは構成、取り上げる記事も似ています。国際政治に力点を置くとか、内政重視とか、特色があっていいと思います。

――消費税増税の際の新聞への軽減税率をどう思いますか。

 賛成です。さらに書籍も対象にすべきです。もっぱら低所得者対策として食料品への軽減税率適用が議論の対象となっていますが、活字にも特例は要ります。「身体の栄養」と「心の栄養」は両方必要で、心の栄養の部分である新聞、書籍が課税によって縁遠くなってはいけない。

 新聞、クオリティーの高い月刊誌、週刊誌を組み合わせて、初めてバランスの取れた情報を得られると思います。日本の将来のためにも、新聞や書籍を読むのにコストをかけないという政策は必要です。

片山善博(かたやま・よしひろ)
1951年生まれ。東大法学部を卒業し旧自治省に入省。鳥取県知事を2期。在任中は情報公開を進め「改革派知事」と呼ばれた。菅直人内閣で総務相。現在は慶応大学法学部教授。