新聞について聞きました!著名人インタビュー

社会とつながる教材 2013年4月

小原友行・NIE学会長

――NIEが教育現場に広がっていますね。

 小中学校に加え、4月からは高校でも学習指導要領に新聞の活用が導入されます。現場は教室だけにとどまりません。記事を家族の会話のきっかけなどにする「ファミリーフォーカス」という考え方も広まっていますし、地域コミュニティーが地域再生のヒントを得るのもNIEの取り組みの一環です。

――どのような効果がありますか。

 リアルタイムの課題を教材とするため、学ぶことが今の社会とつながっていると分かります。思考力だけでなく、興味や意欲を育てます。ただし病気のときの風邪薬とは違い、即効性はありません。新聞を読むことは、普段から健康な体をつくるようなもの。社会や人間への関心が高まれば、学習意欲も湧きます。

――新聞の強みは何でしょう。

 一番は、なぜ、どうしてを掘り下げることです。ニュースの背景を分析し未来へのメッセージのこもった記事は、必ず心に響きます。多くの授業を経て感じるのですが、子どもはたとえ漢字が分からなくても、記事は理解できています。

 また、私はよく「希望の物語を見つけ、希望の物語を届けること」と説明しています。東日本大震災でも、石巻日日新聞の壁新聞や小学生が作ったファイト新聞が人々に希望を与えました。

――NIEを充実させるには何が必要ですか。

 単なる資料として新聞を使うのではなく、生きる教材として読み解く力量が教師にも要る。そして、子どもにとって新聞が日常的に触れる環境にあることです。良い時期に良い出会いをしていると、力になります。

――新聞協会は新聞に軽減税率を求めています。

 情報は生活必需品と言えます。東日本大震災の際、食べ物などと同時に情報が求められたことからも分かります。NIEの観点から言えば、学びの場の保障という意味合いが大きいと思います。

 また、民主主義と平和を守り、担う人材を育てることは教育基本法の第1条にも記されています。欧米各国で新聞に低い税率が適用されているのは、そういう理由からでしょう。

小原友行(こばら・ともゆき)
1951年広島県尾道市(旧瀬戸田町)生まれ。79年、広島大大学院博士課程後期単位取得退学。高知大助手などを経て、97年から広島大教授、2001年から同大学院教授。専門は社会科教育。10年4月から日本NIE学会長を務める。