新聞はアイデアの源 2015年10月
松浦茂樹・スマートニュース社メディアコミュニケーションディレクター
毎朝、iPad(アイパッド)で新聞のアプリを読む。社内の一角には、新聞各紙やさまざまな雑誌を置いた「ニューススタンド」を設けてあるので、そこで読む時もある。個人的に新聞を取らないのは、紙がたまるのがつらいから。新聞の紙が、捨てずに何度も使える電子ペーパーになるような技術革新を待っている。
ニュースメディアでも、紙媒体と、パソコンやスマートフォンなどで読むデジタル媒体では、それぞれ特性が違う。書籍や雑誌など紙媒体の中では、紙の新聞は面積が最も大きい。ページの見開きを使って大きな写真や画像を配置できる。この迫力あるサイズ感は、デジタルでは表現しにくい。
それと紙の新聞は、ノイズ(探していたものではない情報)を含め、いろいろな情報が目に入ってくるのが強みだ。ノイズとの出合いは、新しいアイデアを得るために欠かせない。
同じニュースを扱っても、紙の新聞とデジタル媒体では記事の書き方や画像の使い方も違ってくる。デジタルの中でも、パソコンの広い画面とスマホの小さい画面では表現方法も異なる。それぞれの特徴に合った「味付け」を考えるべきだ。
地方のイシュー(論点、問題)はやっぱり地方紙が強い。沖縄の話題なら「琉球新報」と「沖縄タイムス」。私の地元、北海道では来年の新幹線開業が話題だが、その裏にある物語を描く力があるのは「北海道新聞」だ。そういった地方の話題をウェブを通して全国に届けるために、われわれも一緒にやっていきたい。
情報はウェブで無料でも入手できるようになった。「紙の新聞はなくなる」という悲観論もあるが、音楽業界が先行例として参考になるのでは。「アナログレコードは駆逐される」と散々言われてきたが、最近、売り上げが底打ちし、持ち直した。情報でも価値を感じるものに、お金を払う一定の層はあるはずだ。
よく「スマートニュースのライバルはどこですか」と聞かれるが、新聞や雑誌、テレビやラジオ、他のニュース閲覧アプリではない。ゲームだ。「ニュースを見るよりゲームをしている方が楽しい」と言われてしまったら、それまで。みんなでニュースの魅力を発信していかないといけないと思う。
- 松浦茂樹(まつうら・しげき)
- 1974年北海道生まれ。東京理科大卒。複数のIT企業、米ニュースサイト「ハフィントン・ポスト」日本版初代編集長を経て現職。スマートフォンとタブレット端末向けにニュース閲覧アプリを提供するスマートニュース社で、各メディアとの橋渡し役の責任者を務める。