防衛施設の飛行禁止反対 知る権利「著しく侵害」 ドローン規制で新聞協会
新聞協会は2月8日、小型無人機(ドローン)の安全対策立法化に反対する意見書を政府に提出した。防衛施設周辺上空の飛行を禁止する方針について「自衛隊および米軍への取材活動を大きく制限し、国民の知る権利を著しく侵害する」と訴えた。意見書は菅義偉内閣官房長官宛て。編集委員会の井口文彦代表幹事(産経東京)が緒方禎己内閣審議官に手渡した。緒方氏は「趣旨は理解した。関係部局や省庁に伝え、検討したい」と応じた。
政府はテロ対策を主眼にドローンの飛行制限について検討している。昨年12月の報告書では、防衛施設周辺や、ラグビーワールドカップ(W杯)、東京五輪・パラリンピックの開催時に会場および空港周辺での飛行を禁止する方針を示した。政府は通常国会での法案提出を目指している。
意見書はテロを未然に防ぐため立法化の必要性は理解できるものの、身元が明らかな報道機関のドローンを一律に規制すれば取材活動に大きな影響を与えると指摘。行き過ぎたテロ対策によって取材・報道の自由を阻害しないよう求めた。
防衛施設には自衛隊や米軍の関連施設が含まれる。意見書は対象施設や範囲が不明瞭だとした上で「その時の防衛相の恣意(しい)的な判断や、施設ごとの自衛隊員の拡大解釈により禁止区域が不適切に広がり、不当に取り締まられることが懸念される」と伝えた。特に米軍への取材活動への制約が大きいとし、当局の発表に対する真偽の検証もできなくなる恐れが強いと指摘した。
万一立法化する場合は、報道機関のドローンを対象から外すよう求めた。さらに指定施設は必要最小限にとどめ、異議申し立ての手続きや見直し要望の窓口を設けるべきだとした。
ラグビーW杯、東京五輪開催時の飛行制限については、報道機関に例外措置を設ける方針を評価した。ただし会場周辺で事件・事故が起きた場合、迅速な取材対応が阻害される懸念が残るとして、飛行禁止区域や期間は必要最小限とするよう要望した。
(2019年2月8日)