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捜査側の情報偏重 検証を 江川紹子氏、ゴーン氏の報道巡り講演<紙面審査懇>

 新聞協会は5月30日、第59回紙面審査全国懇談会を事務局会議室で開いた。フリージャーナリストの江川紹子氏が、自動車大手日産のカルロス・ゴーン前会長の逮捕を巡る司法や報道の課題について講演した。事件報道で容疑者・被告側から得られる情報が少ない場合、捜査当局側の情報の垂れ流しになってしまう恐れがあるとし、報道を検証する必要があると述べた。

 江川氏によると、昨年11月のゴーン氏逮捕直後は弁護人側からの情報発信が少なかった。このため各紙が「退任後の報酬50億円隠蔽か」「私的損失 日産に転嫁か」など「見出しに『か』を付けて検察の見立てを洪水のように報道していた」。

 厚生労働省の局長が無罪になった郵便不正事件では、大阪地検特捜部の証拠改ざんが明らかになった。当時は真相と異なる報道も多かったとし「大きな事件が起きると当時の反省を忘れてしまうことはないか。ある時点で報道を振り返ることが必要だ」と話した。

 事件の容疑者が逮捕されたときは、容疑だけでなく逮捕の必要性についても報道してほしいと訴えた。東京・池袋で4月、旧通産省の工業技術院長だった87歳男性が車を暴走させ、12人の死傷者を出した。

 男性は入院し、証拠隠滅や逃亡の恐れがなくなったため逮捕されなかった。しかしインターネット上では「元高級官僚だからか」といった批判が沸き起こった。

 こうした批判は、逮捕を懲罰の一環だと捉えている人が多いことの表れだとみる。「日々の事件報道で、どういう捜査がされ、裁判所がどのように判断したのかを伝えることは大切だと痛感した」と述べた。

 「記者のモチベーション・アップ」をテーマに据えた討議では、朝日東京の江木慎吾記事審査室長が「今日の一本」として紙面を顕彰する取り組みを紹介した。記事審査に関わる6~7人で、記事や写真、図のほか紙面レイアウトの中から印象に残ったものを選ぶ。

 厳しい指摘をすることも多い記事審査リポートの中で紹介。江木氏によると「若い人はへこみやすい。現場のやる気をなくすようなリポートをしないでほしい」との意見が寄せられたのを機に始めたという。

 43社55人が参加した。

(2019年5月30日)

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