1. トップページ
  2. 新聞協会ニュース
  3. 若手のキャリア支援急務 技術者育成 人脈生かす採用例も <新聞協会デジタルセミナー>

若手のキャリア支援急務 技術者育成 人脈生かす採用例も <新聞協会デジタルセミナー>

 新聞協会は9月26、27の両日、第4回デジタルメディアセミナーを事務局会議室などで開いた。IT技術者の確保・育成について討議した2日目の分科会では、デジタル関連の業務が広がる中での若手のキャリア支援が課題に挙がった。人材確保のため、技術者同士の人脈をたどって勧誘しているとの報告もあった。

 朝日は、若手技術者を編集、営業部門に異動させるなどして連携を強める施策をとる。佐藤敦デジタル・イノベーション本部長は「技術者としての働き方の手本となる先輩社員が現場にいないことが課題だ」と述べた。助言役(メンター)制度を設けたほか、キャリア育成のための研修強化を検討している。

 日経は、デジタルサービスの開発を内製化するため技術者の数を増やしている。飯田展久デジタル編成ユニット長によると、技術者の転職市場は求人倍率が7~8倍。競争が激しく、採用者を定着させるのも簡単ではないという。

 そこで日経は技術者の人脈を通じた勧誘に力を入れる。目を付けた人と3回ほど面談し、現場の足りない技能を補える人材かどうか見極める。その上で正式な採用面接を実施。「採用活動を主な業務にしている技術者もいる」(飯田氏)。

 第5世代移動通信システム(5G)を使ったメディア事業に関する分科会には、スポニチの江端浩人特任執行役員が登壇した。高速大容量の5Gならではの事業モデルは「常に実験を続けないと成功例は見つからない」と指摘。デジタル収益の安定化には、有料サービスから離脱しないファン層を固めることが重要だと語った。

 江端氏はIT企業のマーケティング担当などを経て、スポニチの最高デジタル責任者に就いた。5Gが実用化されれば「双方向性がより拡大する」と展望する。画像や動画をより簡単に送受信でき、家電などのインターネット制御も広がるとみられる中で、どんな需要が生まれるかは「やってみないと分からない」。各社が異なる発想で取り組むことが業界全体の利益になると話した。

 デジタル事業では有料会員の確保が課題の一つ。江端氏は「離れない人をどれだけ作れるか」をポイントに挙げた。スポーツファンは「指向性が高い」ため、競技やチーム、選手ごとに深い情報を出せれば有料サービスへの支払いを続ける可能性があると述べた。

 初日はグーグル日本法人の平山竜執行役員事業開発統括が講演した。その後のパネル討議は「プラットフォームとニュース」がテーマ。LINEの藤沼正明ポータル事業グループ第2メディア局局長、三浦文夫関西大教授、神戸の大町聡取締役デジタル創造本部長が議論を交わした。進行役は奥村倫弘東京都市大教授が務めた。2日間で計59社163人が参加した。

(討議の詳細は「新聞研究」11月号に採録)

(2019年9月26日)

ページの先頭へ