企業研修の事業化検討を 対話能力育成に需要 人事向けサイト運営の寺沢氏 《NIB講座》
新聞協会は11月27日、NIBセミナーを事務局会議室で開いた。企業の人事担当者向けサイトを運営するProFuture(東京都港区)の寺沢康介社長は、社員の対話能力向上を求める企業が多いとし、新聞社の知見が役立つと語った。新聞社は購読促進を目的とするよりも、研修自体の事業化を目指すべきだと提起した。熊本日日の今村浩読者・NIEセンター長は、若手警察官に新聞閲読の有用性を伝える警察学校での活動例を報告した。交番の新聞購読再開にも結びついたという。
寺沢氏によると、企業が求めるのは「変化に対応できる組織や人材」。リーダー層の育成や対話能力の向上を重視する傾向が強い。聞く力、伝える力の育成には新聞社のノウハウが生きるとみる。
寺沢氏は新聞社ならではの研修プログラムとして、経営者インタビューの教材化や、ニュースを扱った課題リポートの添削などを挙げた。新聞社が持つネットワークを生かし、複数の企業による合同研修会なども開催できるのではないかと語った。研修をきっかけに新聞の固定読者を増やすのは難しいとし、研修自体の事業化を進めるべきだとの考えを示した。
熊本日日は2018年から警察学校の社会教養講座を受け持つ。読者・NIEセンターの専門委員や警察取材を経験した社会部記者が講師となり、新聞が社会性や対話能力の向上に役立つと伝えている。今村氏は「若手警察官が新聞に触れる習慣が定着し、記者に対するアレルギー反応も緩和された」と評価する。
16年の熊本地震後、県の経費削減の影響で、交番がほぼ一斉に新聞購読をやめた。その後の県警との話し合いで若手警察官の新聞閲読を薦めたところ、警察学校での講義を提案されたという。
講座は今年7月までに4回開き、計146人が受講。交番の半数程度が新聞購読を再開した。
出前講座の講師は再雇用の専門委員が務めることが多い。今村氏は「持続可能な体制作りが喫緊の課題だ」と語った。
(2019年11月27日)