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荒天時の増便 判断的確に 輸送車のGPS搭載で講演 《新聞製作講座》

 新聞協会は11月27、28の両日、第66回新聞製作講座をTOC有明(東京都江東区)で開いた。下流では、衛星利用測位システム(GPS)を使った輸送トラックの動態管理システムの導入成果や課題について朝日、読売、日経の担当者が講演。荒天時の運行状況がリアルタイムで分かるため、追加便を出すかどうかを判断しやすいとの指摘があった。課題に共同輸送便の位置情報把握が挙がった。

 朝日はナビタイムジャパン(東京都港区)製のシステムを使う。関東・甲信地方を襲った大雪で2014年2月、トラックが立ち往生して販売所から問い合わせが殺到したことがきっかけだった。

 車両には専用アプリを取り込んだスマートフォンを搭載。発行本社は全車両、運送会社は自社の車両の位置情報をパソコンで見ることができる。販売所は自店に向かう車両の現状をスマホで閲覧できる。

 三岡修司工程管理部次長によると、動態管理システムは追加便を出すかどうかの判断に役立つ。台風19号が接近していた10月12日付朝刊の輸送では「静岡の3コースが渋滞に巻き込まれた」との情報が運送会社から入った。運行監視画面で状況を確認し、解消の見込みがないと判断。別ルートを通った追加便が先行便より早く店に着いたという。

 三岡氏は、改正道交法(12月1日施行)で運転中の携帯電話使用が厳罰化されることを挙げ「動態管理システムは運転手に電話で問い合わせる必要がない。需要が伸びるのではないか」と述べた。

 日経が15年2月に取り入れたパスコ(東京都目黒区)製のシステムは、店着を判定できるのが特徴。トラックが販売所付近で一定時間とどまると「店着済み」と判断し、監視画面の表示が書き換わる。遅れが見込まれる販売所は赤い色で表示されるという。

 日経は全車両の位置情報を見ることができる。各運送業者は自社の車両のみ閲覧可能。前田学技術部次長は「パスコのサービスは使う機能に応じて課金される。不要なオプションを削ぎ落とせば費用を抑えられるのが利点だ」と話した。共同輸送便の状況を把握できるよう、各社が使うシステム間の連携を課題に挙げた。

 読売東京の田久保俊章技術二部次長は、スマホやタブレットを用いたシステムを自社開発し、12月から使っていると話した。従来のシステムが供給側の都合で使えなくなり、内製化して性能向上を図った。

新技術で作業効率化 新聞3社講演 費用削減の壁高く

 上流では「働き方改革に向けた業務支援ツールの活用」をテーマに読売、日経、産経の担当者が講演した。読売は、情報共有のためのグループウエア導入で引き継ぎや資料の確認の時間を減らした事例を紹介。ロボットによる業務効率化(RPA)を取り入れた日経の田村裕之情報技術本部部長は、新聞社の業務は多岐にわたるため「技術で個別の定型業務を効率化しても、費用削減効果を生むのは難しい」と指摘した。

 読売は2018年10月、グループチャットなどができるソフトウエア「マイクロソフトチームズ」を取り入れた。同じ業務に取り組む社員でグループを作り、情報を共有する。

 野中武生情報管理委員会事務局長は、グループチャットの導入でメールの誤送信が防げると述べた。メンバー間のやりとりの履歴が残るため「チームに後から参加した人がこれまでの流れを把握しやすい利点もある」という。

 日経は約20体のロボットで、海外通信社のデータ取り込みなどを自動化した。ロボットは火曜から土曜まで、毎朝午前7時に国債価格などのデータを自動でダウンロードする。

 産経の佐藤健技術第二部長は、外部からの問い合わせを専用フォームに書き込む方式とし、電話応対業務を省力化した例を紹介した。講座には2日間で532人が参加した。

(2019年11月28日)

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