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紙媒体の教育利用促進 新聞協会などが懇談会設立

 新聞協会、文字・活字文化推進機構などが6月11日、「活字の学びを考える懇談会」を設立した。文部科学省が学校教育への情報通信技術(ICT)導入を進める中、印刷媒体の有用性を訴える。同日の初会合で「電子メディアと印刷媒体がそれぞれ持ち味を活かし、補い合うバランスのとれた学校教育の実現」を政府に求めるアピールを採択した。

 会合では作家の阿刀田高氏を会長に選任した。新聞協会の山口寿一会長、文字・活字文化推進機構の肥田美代子理事長、書籍出版協会の相賀昌宏理事長、東北大の川島隆太教授ら16人が委員を務める。

 活字文化議員連盟の細田博之会長、子どもの未来を考える議員連盟の河村建夫会長、学校図書館議員連盟の笠浩史事務局長の国会議員3氏が顧問に就いた。

 山口氏は「デジタルと活字のバランスの大切さを多くの人に思い起こさせる努力が必要。子供が活字、読書に親しむ機会を提供したい」とあいさつした。阿刀田氏は「デジタルに熟達するのは重要だが、キーボードを打ってポンと出てきた情報を読んだだけでは物事を深く考える力は育たない。活字文化の地盤を次の世代に残したい」と語った。

 文科省は小中学生ら一人一人に電子端末を提供する「GIGA(ギガ)スクール構想」を推し進める。会合でこの政策を説明した芦立訓審議官は「懇談会の知恵を借り、紙とデジタルを車の両輪として教育に生かしたい。ICT教育一色にならないよう努める」と語った。

 アピール全文は以下の通り。

 文部科学省の「GIGAスクール構想」が動きだし、学校教育はいま、急速に変わりつつあります。この構想のもとで、全国すべての小中学生に1人1台のタブレット端末やパソコンの配布が始まっています。これらの施策は、インターネット社会に対応したものとして国民の合意を得ることができましょう。タブレット学習は、教師が画像に情報を書きこみ、端末で全員に配信され、授業の時間短縮ができること、また、情報が画像で表現されるため、子どもの授業への興味を高める効果があることなどが評価されています。

 デジタル授業の普及は、一方で印刷メディアによる学習の重要性が増すことでもあります。紙に触れ、筆記具を使って考えながら学んだり、自分の思いや意見を文章にしたりする読み書き能力の取得に割く時間が必要になるからです。私たちはいま、明治以来の紙の教育からデジタル技術を導入した学校教育への転換期を迎え、電子メディアと印刷メディアの共存する学校教育はどうあるべきかという新たな課題に直面しています。

 昨今の教育現場の新しい現実を直視し、デジタル技術に偏重することなく、電子メディアと印刷メディアとが、それぞれの持ち味を活かして足らざるところを補い合うというバランスのとれた学校教育の実現に、政府が取り組むことを強く要望いたします。私たちは今後、子どもの教育にかかわる多様な分野の人びとと連携し、豊かな学びを保障する学校教育の確立をめざして、シンポジウムや講演会を開くなど、息の長い取り組みを続けてまいります。

(2020年6月11日)

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