特派員ビザ短縮 再考を 滞在制限 実務に影響 新聞協会が米政府に意見書
新聞協会は10月26日、米政府が外国報道関係者向けの査証(Iビザ)に基づく滞在期間を原則240日に短縮する案に対し、再考を求める意見書を米国土安全保障省に提出した。特派員の任期は通常4、5年程度で、短期間の滞在許可では実務上の影響が大きいとし「深刻な懸念を抱く」と伝えた。
Iビザは5年間有効で、滞在期間は「権利を有する期間」として特段の定めがない。国土安全保障省は9月、Iビザ保有者の滞在期間を240日とし、延長も1回限りとする方針を示した。法改正が要らない連邦規則を変更する。10月27日まで意見を募っていた。
新聞協会は特派員が米国の慣習や規則、政治構造を理解し「有意義な報道」を手掛けるには最低2年はかかると主張。滞在期間が短くなれば、同行する子供が年度途中に帰国を求められたり、最低12か月分とする家賃支払いの慣行に従い滞在期間より多く請求されたりするなどの恐れがあると指摘した。また、同行する家族についても特派員と同じ期間滞在できる旨修正規則に明示すべきだと訴えた。
意見書によると、10月現在の新聞協会加盟各社の米国特派員は計159人ほど。特派員発の経済情報は日米貿易を進める企業などから注目されているとし「時宜を得た情報と分析を提供することで、日米両国の懸け橋となる重要な役割を果たしてきた」と説いた。各社は現地で計213人の職員を雇っており、米国内での雇用創出にも貢献していると記した。
新聞協会はまた、2年間の滞在を認め、必要な資格を持つ限りは5年ごとに更新できる投資家向けの査証(E―2ビザ)とIビザの要件をそろえることも提案した。
米国に取材拠点を置く日本の新聞・通信・放送14社も26日、連名で同趣旨の意見書を出した。
(2020年10月26日)