在宅組み版 支援策を討議 課題は遠隔の意思疎通《オンラインで新聞製作講座》
新聞協会は10月27日から3日間、第67回新聞製作講座をオンラインで開いた。最終日には、新型コロナウイルス禍に対応した在宅勤務・在宅組み版の実施状況や支援策について朝日東京、日経、東京の担当者が話し合った。在宅組み版についてはゲラの電子化や、オンラインでの意思疎通の図り方が課題に挙がった。
討議に先立ち、技術委員会情報技術部会が8月下旬に実施したコロナ禍への制作部門の対応に関するアンケート結果が報告された。
在宅勤務の実施状況は、従前から導入していたのが87社中15社。新型ウイルスの感染が広がった2月から7月にかけては88社中58社が実施した。業務はシステムの開発・管理、トラブル対応などが多い。
在宅勤務率が最も高かったときの割合も尋ねた。システム部門(回答50社)では40%、50%との回答がそれぞれ15社で最多。整理・制作部門(回答46社)は36社が10%以下と答えた。印刷部門(回答33社)は大半の29社が「ゼロ」だった。
組み版業務の実施方法(80社回答)をみると、47社が自宅や会議室など臨時の作業場を設けていた。オンライン会議ツールについては(87社回答)、73社が「ズーム」や「チームス」などを導入した。
この結果を踏まえ、3氏が自社のコロナ対応について説明した。朝日東京は会議室やホールなどに作業場を設置。3月末には地域面や特集面を中心に在宅組み版も始めた。緊急事態宣言が出された4月にはニュース面も在宅組み版で対応した。5月下旬には紙面の約45%を在宅で組んだ。在宅での校閲作業も4月上旬、全面実施した。
隣同士で作業ができない環境下では意思疎通をどう図るかが課題。斎藤真情報技術本部情報企画部長は、「ゲラ確認を電子化するなど、これまでの新聞制作の『当たり前』を変えなければならない」と語った。
東京は文化、生活面、地方版などで在宅組み版を実施した。名古屋本社を含め最大14台の端末を遠隔操作した。藤田俊広技術局報道システム部長によると、大人数での迅速な情報共有が必要なニュース面の制作については、オンラインの対話だけでは難しいとの声が社内で上がっている。整理部デスクが出稿、整理、校閲の各部門の連絡役に入り、PDF化した校正紙をメールで共有するなど、確認作業が煩雑化している点を課題に挙げた。
日経は仮想専用線の同時接続数を大幅に増やした。遠隔での円滑な対話を促すため「チームス」を導入し、在宅勤務の環境整備に力を入れた。誰が、いつ在宅勤務をしているのかを把握・集計する仕組みも整えた。
新たなデジタル対話ツールを浸透させるための工夫についても話し合った。飛岡克久情報技術本部部次長は「社員を1か所に集めての説明会を開くのではなく、配信型の周知が効果的だ」と述べた。オンライン勉強会の模様を録画し、その映像が見られるURLを共有する工夫などを紹介した。
(2020年10月27日)