《販売労務担当者全国会議》顔の見える交流で購読維持 野菜の宅配で講演 NSN都立大学・長谷川所長
新聞協会販売委員会は11月12日、第46回販売労務担当者全国会議を新聞協会会議室で開いた。ニュースサービス日経(NSN)都立大学の長谷川孝夫所長らが、読者に野菜などを宅配する事業「NEWSマルシェ」について講演した。顔の見える交流が増えることで「読者との結び付きを強め、購読の維持につなげられる」と話した。新聞販売所が持つ配達網や読者データは、商品の宅配などを検討する他業界にとり「宝の山」だと指摘。新聞社の協力を得て「販売所が持つ可能性を広く知ってもらう必要がある」と訴えた。
NSN都立大学は飲食店に野菜を卸すべジクル(東京都大田区)と提携。ベジクルが仕入れ、店舗に届いた野菜を夕刊配達の前後など隙間の時間を使って配達している。
営業は週4日。配達前日の午後6時まで注文を受け付け、午後2~7時の配達時間指定に対応する。注文は無料通信アプリ「LINE(ライン)」などで受け付ける。1台のバイクで約10分間に2軒回れるという。緊急事態宣言下では1日100軒以上に届けた。
長谷川氏は「なるべくお金を掛けない。新たに人を雇わない。今、あるものでできる副業」が基本だと述べた。従業員に手当などは支給していない。時には自ら野菜を配る。成功の秘訣は店主が率先して取り組むことだと強調した。
月500~600件の注文があるベジクルの野菜に加え、群馬県沼田市の産地直送野菜なども扱う。「新規投資をしない副業で大きな収益は上げにくい」(長谷川氏)中で、商品を増やして売り上げ増を図る。11月にパン、牛乳の配達も始める。店舗に冷蔵庫は置かず、牛乳は近隣の代理店まで取りに行く。
物販の売り上げは総収入の約3%。折り込みチラシの手数料収入の5分の1程度ながら「十分に継続できる」と述べた。
長谷川氏はまた、物販事業の利点に「読者との関係を深められること」を挙げた。配達員が80歳の利用者宅で家に上がるよう頼まれ、卓上に野菜を運んだ話を紹介。利用者は「生きている限り、お宅から新聞を取る」と話したという。配達員の側も「ありがとう」と直接声を掛けられることで、意欲が高まると述べた。
事業に協力している食の企画会社FRIDGEの大西浩嗣氏、ベジクルの岩崎亘氏も登壇した。このほか、BCP/BCM策定支援アドバイザーの昆正和氏が、新聞販売所で新型コロナウイルス感染者が出た場合の対応などについて講演した。
会場、オンライン、見逃し配信を含め30社54人から申し込みがあった。
(2020年11月12日)