ネット事業拡大に懸念 受信料論議 経営改革が前提 メディア開発委、NHK巡り総務省に意見
新聞協会メディア開発委員会は12月24日、電波・放送政策に関する計3本の意見書を総務省に提出した。いずれも同省の意見募集に応じた。うち2本はNHK関連。「インターネット活用業務実施基準」改定案を巡る意見書では、事業費の上限が現行より実質的に高くなることから「なし崩しにネット業務が拡大しかねない」との危惧を伝えた。総務省がNHKに抑制的な事業運営を促すよう求めた。受信料制度に関する意見書では、適正な水準を実現するための経営改革が十分ではないと指摘。有識者会議で議論を深めるよう要望した。
NHKは11月、ネット基準改定案を総務相に認可申請した。改定案は事業費の上限を「受信料収入の2・5%」から年間200億円に改めることが柱。20年度予算で見ると受信料収入の2・87%に相当する。総務省は「認可が適当」との見解を示している。メディア開発委はこの見解に対する意見書で、上限を実額で定めた場合も2・5%を目安に運用する旨を実施基準に書き込むよう提案した。
NHKは21年度から3か年で、各年度189~192億円の支出を見込む。メディア開発委は、21年開催予定の東京五輪後も同程度の費用を見込む根拠が明確ではないと指摘。放送番組のネット同時配信にかかる費用も圧縮の余地があるとして、詳細な試算を示すよう求めた。ウェブサイトで番組情報を提供するなど「理解増進情報」の在り方も見直すよう訴えた。
受信料制度を巡っては、正当な理由なく受信契約を結ばないテレビ設置者に割増金を課すことには「抑制的であるべきだ」と主張した。割増金が民事上の措置であっても、ある種の「罰金」と誤解される危うさをはらむと指摘。導入するならば、NHKが抜本的な経営改革案を示し、国民・視聴者の理解を得ることが前提だと説いた。総務省の有識者会議が11月にまとめた報告書案に、受信料の支払い率向上策として割増金徴収案を盛り込んでいた。
受信料還元のため、繰越剰余金の一部を積み立てる会計科目を新設する案については「適切だ」と評価した。その上で、19年度連結決算では内部留保(連結剰余金)が3777億円に達しており、保有する現預金と有価証券の総額も増加が著しいと指摘。経営安定のための積立金は数百億円程度にとどめ、還元額を最大化する方策を有識者会議で検討するよう求めた。
NHKがグループ経営の効率化策として求めている中間持ち株会社の設置については、子会社の現状や移行に要する初期費用、費用削減効果を検証し、透明性の高い仕組みを作るよう要望した。
<NHKインターネット実施基準変更案に関する総務省の考えへの意見>
電波政策 慎重に検討を 有識者会議にも意見
メディア開発委は、電波の割り当て手法や電波利用料などを議論する有識者会議にも意見書を提出した。入札によって周波数帯を割り当てる「電波オークション」を仮に放送用帯域に適用すれば、小規模放送事業者が応札できないこともあると指摘。電波の経済的価値を過度に重視すれば、結果として言論の多様性や知る権利を損なうとして慎重な検討を求めた。
<総務省「デジタル変革時代の電波政策懇談会」における検討課題に対する意見>
(2020年12月24日)