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<NIE札幌大会>生きるための思考力育む 新聞がある生活の意義を議論

 第26回NIE全国大会札幌大会が8月16日、オンラインで開かれました。大会スローガンは「新しい学びを創るNIE~家庭、教室、地域をむすぶ」。パネル討議では地域の教育関係者らが、新聞が身近にある生活の大切さについて話し合いました。子供が普段から新聞に触れられる環境を整えることで、社会で生きるために必要な考える力を養うことにつなげたいなどの意見が出ました。

 新聞協会の丸山昌宏会長(毎日新聞社)は開会あいさつで、子供たちがSNSなどで真偽不明の情報をうのみにする状況が生まれていると述べました。その上で「新聞を読んで情報リテラシーを高め、読解力を向上させることが子供たちの学びの基礎になる」と説きました。北海道新聞社の宮口宏夫代表取締役社長は「新聞を教材として幅広い情報に接し、主体的・対話的で深い学びを実現する方法を考える大会にしたい」とあいさつしました。

 パネル討議ではプロ野球北海道日本ハムファイターズの元選手で、来春に小学校を開校予定の田中賢介氏らが登壇。田中氏は全国学力・学習状況調査で、新聞をよく読む層ほど各教科での平均正答率が高いとの結果が出ていることを受け、自身の学校でNIEに取り組む狙いが明確になったと話しました。新聞があらゆる教科を学ぶのに必要な「問題を読み解く力」を育むことを期待していると述べました。

 別海町立野付中学校で「スクールサポートスタッフ」として図書室を整備する鈴木桃子氏は、生徒が興味を持った記事を集めてオリジナルの新聞を作る取り組みを紹介しました。生徒の選ぶ記事が重複することはなかったといいます。新聞を使うことで「彼らの関心が想像していた以上に多様であると気付いた」と振り返りました。

 市立札幌藻岩高等学校の古畑理絵教諭は古典の授業での新聞活用例について話しました。鎌倉中期の説話集「十訓抄」に歌合(うたあわせ)に関する描写が登場することから、宮中行事「歌会始の儀」の解説記事を配布。一緒に登壇した同高の生徒2人は「新聞で歌会の事例を知ることで、教科書を暗記するより理解が深まった」「もっと知りたいと興味が湧いた」と話しました。

 女性農業者団体「リンクス」を主宰する内山佳奈氏は、家の居間などに新聞を置くことを習慣付けたと述べました。その結果、子供が記事を自然に読むようになったといいます。成長するにつれ「こんなニュースがあった」と親に教えてくれるようにもなったと説明しました。

 このほか、北海道別海町で漁業を営む、鈴木氏の夫の翼氏も登壇しました。

 討議に先立ち、ノンフィクション作家の梯久美子氏が基調講演に立ちました。「新聞には世界の『今』が載っていて、それを積み重ねると歴史になる。長期的に物事を捉えて歴史観を養うために有用なツールだ」と語りました。

(2021年8月16日)

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