記者の問題意識が重要に 被災地の課題議論 ニュースパークで地元4紙報道部長が講演
ニュースパーク(新聞博物館)は8月21日、発生から10年となった東日本大震災の被災地の課題について地元4紙の報道部長が議論するオンラインイベントを開きました。住宅再建や災害公営住宅での孤独死など多様化する課題を拾い上げるため「記者個人の感性や問題意識が問われている」(河北新報社・今里直樹報道部長)との指摘が出ました。
岩手日報社の熊谷宏彰報道部長は、再建した公営施設の管理や住民間交流の維持を被災地の課題に挙げました。10年という年月は「ゴールではない」とし、被災者の実情に沿ったきめ細やかな取材・報道が一層求められると述べました。また被災者が取材に対し語る教訓は震災を経験していない人に向けられたものだとし、紙面で伝え続ける意義があると話しました。
一方、震災の記憶を語ってもらえる人を年々見つけにくくなっているとの指摘も。東京電力福島第一原発事故後の福島県外の避難者はいまだ2万8千人に上ります。福島民友新聞社の中田和宏報道部長は避難後の足取りがつかめない人も多く、被災者の声を幅広く伝えることが難しくなっていると説明。また廃炉は数十年先と言われる中、専門知識を持つ記者を継続的に育成することも課題だと述べました。
福島民報社の円谷真路編集局次長兼報道部長は、原発事故の現状を伝え続けることが福島への風評の抑止につながると説きました。それを怠れば「誤った理解が固定化される」との懸念を示しました。
イベントは、開催中の企画展「伝える、寄り添う、守る――『3・11』から10年」(概要はこちら)の一環です。早稲田大学大学院の瀬川至朗教授が進行役を務めました。
関連講演の詳細はこちらでご覧いただけます。
(2021年8月21日)