投稿の安易な削除懸念 インターネットで中傷 法規制巡り 総務省に新聞協会
新聞協会は1月26日、総務省のワーキンググループ(WG)が検討しているインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷など有害な情報への対策を巡り同省に意見書を提出しました。SNSなどでの人格権を侵害するような投稿の削除をプラットフォーム事業者に求める「削除請求権」を法律に明文化する案について「安易な削除を認める風潮を助長しかねず、表現の自由や国民の知る権利に悪影響を及ぼす懸念がある」と表明。懸念が解消されない限り、同意できないとしました。
WGは26日まで、違法・有害情報を巡りプラットフォーム事業者がとるべき対応に関する意見を募集。削除請求権の明文化を論点に挙げていました。新聞協会はこれに関し「請求が乱発され、投稿の内容の真偽などを判断できない事業者が安易に削除に応じる事態」に懸念を示しました。
投稿の元となった記事などに影響が広がる恐れもあると指摘。取材に基づいた批判や論評は「有害な誹謗中傷とは明らかに異なる」と強調した上で、検討に当たっては報道の自由が侵されることのないよう求めました。
また、削除請求権を新たに設けた場合、「プライバシー侵害や名誉毀損(きそん)、肖像権侵害などへと拡大して適用される事態を招きかねない」との懸念を示しました。誹謗中傷について「野放しにするわけにはいかない」としました。その上で「事業者が迅速かつ自主的に取り組むべき課題だ」と強調しました。事業者の対応が不十分だとしても、法規制など政府の干渉は避け「司法判断の積み重ねを待つべきだ」と訴えました。
WGは財産上の権利を侵害する投稿や「個々の投稿には違法性がないものの全体として人格権を侵害している投稿群」への削除請求権も論点に挙げていました。新聞協会はこれに対し「現行の法的枠組みを超えた措置」だとし、容認できないと表明しました。
事業者に対しては、削除請求権を明文化する議論を招いたと指摘。情報流通を担う責任を自覚し、健全な情報空間の確保に向けた主体的な対応を求めたいとしました。
意見書の全文はこちらでご覧いただけます。
(2023年1月26日)