女性管理職増 発信に寄与 メディアの多様性確保議論 ニュースパークがシンポジウム開催
ニュースパーク(新聞博物館)は7月15日、メディアの組織内に多様性を取り入れる意義などを考えるシンポジウムを開きました。神奈川新聞社・統合編集局報道部の蓮見朱加記者は、メディア企業が管理職に占める女性の割合を増やすことで「社会に発信するテーマの多様化に結び付く」と話しました。
2021年、米メディアの多様性に関する取り組みを取材した蓮見記者。ロサンゼルスのラジオ局が「ヘイトを許容しない」など多様性の確保に向けた経営目標を掲げる事例をシンポで紹介しました。フィラデルフィアのラジオ局で、取材対象者の性別や人種などを数値化して把握、バランスを意識した発信に生かしている事例も挙げました。その上で、日本のメディアについて「意思決定に関わる経営層が多様性を重視したビジョンを迅速に打ち出す必要がある」と強調しました。
東大院の林香里教授は「メディアには多様な視点で報じる姿勢が求められている」と指摘。記者は政府などを取材対象とし客観性や速報性を重視した従来型の報道を追い求めるだけでなく、個人が抱える苦悩や悲しみに耳を澄ませる意識を持つことが必要だと語りました。ジャーナリストでメディアコラボ代表の古田大輔氏は、記者には当事者の悩みに近づく努力を重ね、読者に理解してもらう工夫が求められると述べました。
国内メディアの取り組みも紹介されました。NHK報道局の長尾香里チーフリードは、21年に社内に設けた「D&Iワーキンググループ(現DEI推進ワーキンググループ)」について説明。「DEI(ダイバーシティー・エクイティー&インクルージョン)」は、人材の多様性や公平性を重視することを意味します。グループは制作や報道など各局から社員が集まり、多様性に関するコンテンツ制作などに取り組みます。部を越えて問題意識を共有することで、独創性のある発想や解決策を生み出す効果につながっているといいます。
イベントは開催中の企画展「多様性 メディアが変えたもの、メディアを変えたもの」の一環。オンラインを含め78人が参加しました。
企画展の概要はこちらでご覧いただけます。
(2023年7月15日)