「著作権侵害の可能性高い」 検索連動型AI巡り新聞協会が声明 法整備急ぐよう求める
新聞協会は7月17日、インターネット上の検索結果をAI(人工知能)が要約してコンテンツを生み出す検索連動型生成AIサービスが報道コンテンツを無断で利用し「著作権を侵害している可能性が高い」と訴える声明を公表しました。これらのAIサービスを提供する米IT大手のグーグルやマイクロソフトなどの事業者に対し、報道コンテンツを利用する場合は報道各社から許諾を得るよう求めました。政府に向けては、著作権法の改正を含む法制度の整備を急ぐことが必要だと訴えました。
著作権法47条の5は報道機関の記事の一部を検索結果として表示することを「軽微利用」として認めています。ただし書きで「著作権者の利益を不当に害さない」ことなどを条件に挙げています。
検索連動型生成AIサービスは利用者が求める情報をAIがネット上から探し出し、それを転用・加工したコンテンツを提供しています。声明は「『軽微な利用』とは到底言えない長文の回答を生成、提供するケースが多数みられる」と指摘しました。サービス利用者の多くがAIによって生成された回答に満足し、参照元として提示される報道機関のウェブサイトを訪れない「ゼロクリックサーチ」が増えれば、報道機関に著しい不利益が生じるとしました。
検索結果を基にAIに回答を生成させ、報道コンテンツを無断で利用する行為は現行法でも「違法である可能性が高い」と強調。報道機関の著作物を利用する場合はその報道機関の許諾を得るようAIサービス提供者に求めました。
「知的財産権の軽視とも言えるような風潮」について「関係法令が整備されていないことが背景にある」と断じました。記事へのただ乗りを放置した結果として報道機関が新たに記事を発信できなくなれば、民主主義の基盤や国民の文化に不利益が生じると訴えました。
AIサービスが参照元となる報道機関の記事の文脈を考慮せずに言葉を抜き出すなどし、事実と異なる回答を示す事例があることも指摘しました。誤情報を生むサービスの提供は「元記事が誤っているかのような印象を利用者に与え、記事を出した報道機関の信頼性の毀損につながる恐れがある」と主張。AIサービス提供者に情報発信者としての責任ある対応を求めました。
公正取引委員会が昨年、ニュースポータルサイトを運営するプラットフォーム事業者について、報道機関との関係で独禁法上の「優越的地位」にある可能性を指摘したことに言及。AI事業者が報道機関に許諾を得ずにコンテンツを利用することは「独禁法に抵触する可能性もある」としました。
※声明の全文はこちらをご覧ください。
(2024年7月17日)