生成AI巡り 知財保護へ 法整備求める 政府計画に意見
新聞協会は12月18日、知的財産の保護や活用に関し政府が策定する予定の「知的財産推進計画2025」に対する意見書を内閣府に提出しました。生成AI(人工知能)と知的財産権を巡る懸念やリスクは払拭されていないと指摘し、「現行の法体系が生成AI時代に沿っていると言い難く、著作権法の改正を含めた新たな法整備を打ち出すべきだ」と訴えました。著作権法や競争法以外の法規制も排除すべきでないと主張。既存の法令で対応が難しい問題を複合的に検討すべきだとしました。
知的財産推進計画(知財計画)は内閣府が毎年策定します。25年は、AIの活用を主眼に置き議論を進める方針。意見書は24年の知財計画が積み残した課題として、「法・技術・契約の相互補完性」に言及しました。法整備が不十分なため権利者とAI事業者の契約は進展しておらず、機能していないと指摘しました。
具体例として、インターネット上の検索結果をAIが要約してコンテンツを生む検索連動型生成AIサービス(RAG)を挙げました。RAGは、現行の著作権法47条の5が認める「軽微利用」の位置付けで新聞記事などを権利者に無許諾で回答として提供しています。意見書は、RAGが軽微利用の条件を満たさないと指摘し「著作権侵害に当たる可能性がある事例は多い」としました。「RAGサービスの広がりはゼロクリックサーチを招き、コンテンツ発信者の収益機会を不当に奪っている」と主張しました。
知的財産を十分に保護せず一面的に生成AIの発展を促せば、「コンテンツ再生産の経済サイクルが機能しなくなる」と指摘。報道機関が取材体制を維持できなくなる恐れがあるとの見方を示し「国民の『知る権利』を阻害しかねない」と警鐘を鳴らしました。
データの学習に関しては、権利者の許可を得ずに情報取集し事業を展開する海外事業者もいると指摘。「法整備を進め、競争条件の不均衡を是正することは喫緊の課題」だと訴えました。
偽・誤情報の流通や拡散にも言及。「無秩序なデータ収集・学習利用による生成AIの構築が、偽・誤情報の発信を容易にしている」としました。権利者の同意を得た質の高いデータをAI開発に使うよう方向づけることが有効だと述べました。
※意見書の全文はこちらでご覧いただけます。
(2024年12月18日)