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2008年 1月22日
変わる郷土 誇りと価値問う

山陽「ふるさとよ」

「あえて私たちの地域そのものをタイトルにしました」という大型企画。首都圏への一極集中で、疲弊する一方の地方を直視し、ふるさとの誇りと価値を問い直す。

岡山市に帰郷した俳優の八名信夫さん(72)は、高校時代まで過ごした表町商店街を歩き、「街は変わったね。つらいもんだな」とつぶやいた。「日本中で一番ほっとできる場所」が、かつてのにぎわいを取り戻してほしい。八名さんの願いも込めた元日の別刷り特集で企画はスタート。七日から「序章 この街に生きる」(七回)が一面に掲載され、近く第一章が始まる。

序章の主役は岡山県美作市在住の作家・あさのあつこさん(53)。「この地にいるからこそ書ける」一作に心血を注ぐあさのさんは、同市の湯郷温泉の名物女将だった祖母を書いた「ほたる館物語」や、「バッテリー」の作者として知られる。少女時代、山や川を駆け回った日々を懐かしむが、ふるさとは様変わりした。荒れる里山、護岸工事で河原のアシ原はめっきり減り、棚田は荒廃が進む。あさのさんは「都会への憧憬(しょうけい)が退屈な田舎への反発となった自らの学生時代を振り返ると、複雑な気持ちにもなる」が、ふるさとは切実な生活の場だとつくづく思う。地域活動に一緒に汗を流してきた母親仲間がいる。「バッテリー」の映画化の過程で、地域にはかつてない団結力も見えてきた。

第一章「人が消える」は第一部「オールドタウン」から。建物は古くなり、居住者は高齢化した団地をリポート。同じ章では離島や限界集落などを扱う。夏をめどに第三章まで進める予定だ。

序章の清水玲子編集委員ら五人が執筆。総括デスクの国定啓人編集委員は「良いところも悪いところも見て、なぜ住み続けるのか、人と土地との根源的なかかわりを探りたい」と語る。(審査室)

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