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2008年 1月29日
湯の街の人生模様 情緒込め
大分合同「別府恋歌」
湯の街・別府。今も湧出量日本一を誇る別府八湯の湯煙がたなびく。しかし、浴衣姿の客であふれ返った黄金期の賑わいは望むべくもない。店も宿も激減した。取材して歩く記者の耳に聞こえてくるのは「時代に取り残された」「寂れっ放しや」というため息ばかり。でも、この街が嫌いかと問うと、誰もが「いや、好きで。だってな...」と各自の別府論を語り始める。
夕刊社会面で昨年十月から始めた連載は、第一章「夜の街」四シリーズ(宵の口、夜更け、色街、終夜)を掲載。年明けからは第二章「宿の街」のシリーズが始まった。
登場する店、人は様々だ。「昔も今も別府は別府」と語る夜の世界六十年近い八十二歳のスナックママ。「酒は文化」とシェーカーを振るマスター。「お金をためたい」バイト感覚のホステスやソープランド嬢も「夢がかなうまでの辛抱」。実家の貸間業を継いだ元キャリア外交官は英語ホームページで外国人客を誘う。食堂や屋台、酒屋に薬屋、ストリップ劇場経営者からストリートミュージシャン、湯治客...。多彩な人生模様と別府への思いが情緒豊かにつづられる。
筆者の別府支社・首藤康記者(37)は別府生まれの別府育ち。入社後の振り出しも別府で、本社などを回って戻ってきた。「別府はこれからもどんどん変わっていく。だから今の別府のありのままの姿を、洗いざらい書きとどめておきたい」と思い立った。今後、湯や食、商い、路地裏、坂道など様々なテーマを取り上げ、二~三年は書き続ける予定だ。
一シリーズ六回続きを隔週掲載。しゃれたカットに横長ボックス。杉山和也カメラマンの工夫を凝らした写真を配したレイアウトは目を引く。文章は小説風で軟らかく読みやすい。「新聞記事が面白くないと言われる中で、従来の殻を破った、読んで楽しい企画に挑戦したかった」と小田圭之介・支社編集部長。 (審査室)