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2008年 2月19日
塗り物の国から心意気つづる
北國「漆はジャパンである」
英和辞典で「japan」は「漆。漆器」とある。安土桃山時代以降、漆器は海を渡って西洋を魅了してきた。「吾輩(わがはい)は漆です」で始まる連載は、輪島塗などを擁する漆王国・石川から漆器の現状と将来を伝える。
第一部(一月、二十回)は震災復興への思いを込めて『能登が揺れた』。輪島市の市文化会館の一室では今も、約四千点の漆器が避難生活を送る。冠婚葬祭は自宅の座敷でするのが当たり前だった輪島も生活様式が変わり、漆器はいつか蔵で眠ったままに。そこへ昨年三月の能登半島地震。蔵が壊れて保管に困った家庭のため、市が預かることになったのだ。吾輩は「漆器の出番が激減した現代を映し出している」とぼやく。需要減、後継者難に加えて大地震の直撃を受け、仕事場を失った手だれの職人が廃業を決めるケースも出ている。
だが、簡単にはへこたれない。昨年十一月、輪島塗はルイ・ヴィトンと初めて連携して小物ケースに挑み、好評を博した。洋風の食卓に合う重箱など「もっと身近に使ってほしい」。漆器業者の妻たちでつくる「彩漆会」は展示会などで活躍する。県輪島漆芸美術館では三月十五日から約一か月間、「震災に耐えた膳椀展」で避難漆器の一部を展示する。漆器の「用の美」を多くの人に見てもらえる絶好の機会というわけだ。来年十一月には「全国おわんフェスティバルin輪島」が開かれる。いつまでも援助頼みではなく、「若い人が自力で頑張っていることをアピールしたい」との思いも込めて。災いを転じて福となす。「このたくましさが吾輩をもっと輝かせる力になると信じています」と第一部は結ぶ。
二月は歴史編の第二部『ご先祖さま』。小川哲哉編集局次長兼社会部長が「応援歌です」という連載は四部構成、社会部の宮本南吉、文化部の宮下岳丈両記者が「吾輩の心意気」をつづる。(審査室)