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2008年 4月8日
電子媒体が及ばぬ文化見据え
中国「活字の底力」
「活字が持つ力を見つめ、生かす方策を探る」。電子媒体の普及や生活環境の変化にさらされ、揺れる活字文化に真正面から取り組んだ。一月十四日から第1部(八回)、三月十日から第2部(六回)と進み、夏の第5部までの予定。初回一面、以降は文化面に移している。
第1部「漂流」では、活字を取り巻く変化を取り上げた。「子どもたちは夏目漱石や森鴎外を読まないんじゃない。読めないんです」。広島市の中・高校の国語教諭は、漢字能力の低下を理由に挙げた。一方で、携帯電話サイトから生まれた「ケータイ小説」が、「話し言葉が中心なので親近感があり、一文一文が短く読みやすい」(呉市の高二女子)と好評。若者が本を手にするきっかけになっているのも事実。読みやすい新訳出版で外国古典がヒットし、無料誌の浸透で有料タウン誌が姿を消すケースもある。 広島大の化学実験授業では、考えを的確に表現するには手書きが一番と、パソコンによるリポートをなくしたところ、論理的考察が増えたという。
第2部「原点」では、活字や印刷、紙の役割を追った。広島経済大にある、金属活字を使用した活版印刷術による世界最初の本「四十二行聖書」からは、情報革命の足音がまるで聞こえてくるようだ。広島市公文書館に残る広島平和記念都市建設法の草稿案は、広島復興の原点を再認識させてくれる。若いデザイナーに活字の味わいが注目され、厚みがあるのに軽い大竹市産の紙には出版業界から注文が相次ぐ。
第3部は教育・企業の現場報告が中心。第2部までは守田靖、伊藤一亘、里田明美の文化部三記者が担当した。藤元康之文化部長は「一月五日掲載の本社千人アンケートでも活字離れは深刻だが、活字にしか伝えられないことがある。突き詰めてみたい」と語る。(審査室)