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2008年 4月29日
長い老後をどう生きるか
北日本「夕陽を織る」
「老い」はだれにも平等に訪れる。高齢化が進み、確実に長くなった老後をどう生きるか。元日から一面で始まった連載が、八十を超えた人たちのさまざまな生きざまから探る。連動して毎回、介護、福祉、医療制度などの現状や課題を追う『断面』を三面に掲載、理解を助ける。
自らの「居場所」を定め、今を精一杯生きる人がいる。第一章『夫婦の航跡』。認知症の妻は施設に入り、富山市の自宅で一人暮らしの夫はがんを患う。残された夫婦の時間は分からない。そんな現実を受け入れ、夫は一日おきに妻を訪ねて日中を過ごす。車イスの妻に夫が寄り添い、廊下の窓から庭を飽かず眺め続ける二人は「今も新しい思い出を紡いでいる」。
第三章『老いる地域』は、半世紀以上を夫婦で歩んだ「古里」にこだわる人を追う。過疎と高齢化が進む南砺市の上畠。病気がちの妻が高岡市の長男宅で暮らす冬の間、夫は雪深い山里で一人過ごす。「また一緒に畑仕事をしよう」「山でどうしとるかねぇ」と、互いに春を待ちわびながら。魚津市中心部のシャッター商店街では、夫の死後も妻が二人で始めた小さな紳士服店を守り続ける。
「自立」が困難な人も多い。共働きが多い富山で親の介護は重い。認知症の親を施設に預けるとき、家族は「自分たちの都合だけで決めているのではないか」と悩む。第二章『家族の絆』はそんな夫婦の姿を、心の動きにまで踏み込んで描く。第四章『独りの周辺』は孤独死に切り込む。
『断面』と併せ社会・経済・政治部の六人が担当。キャップの光安勝人・社会部次長が「老いを自然なものとして受けとめ、豊かに生きるために家族、社会、そして本人が考えるきっかけにしたい」と語る連載は、四月二十六日から第五章『最期をどこで』を掲載。(審査室)