2008年 5月27日
米作の担い手 再生に向け

河北「田園漂流 東北・兼業農家のあした」

下落する米価、疲弊する地域経済。小規模の稲作収入を農外収入で補ってきた兼業農家が危機に直面している。国は大規模専業農家育成を目指すが、農家の八割は兼業農家でコメ生産の六割を担っているのが実態だ。中でも東北は兼業比率が高い。昨秋から続く長期企画は、兼業農家の苦境に目を向けるよう訴える。

第一部「暴落の秋」は「一俵たった一万円。もう作る気力がなくなった」と、ピーク時の半値以下になった米価に、半世紀近く続けてきたコメ作りをやめる農民の嘆きから始まる。赤字穴埋めも限界だ。「コメ作りを継がせるつもりはない」。

第二部「格差の嵐」では誘致工場の撤退、公共事業削減、非正規雇用の拡大などで、兼業農家を支えてきた農外収入が細る現状を報告。二十年ぶりに出稼ぎを再開した農民は「地元には働く場所が少ない」と話す。第三部「危うい継承」は高齢化と後継者難、第四部「揺らぐきずな」は弱体化する集落を取材した。

第五部「農政破たん」は、規模の大きい農家だけに補助を限定したり、規模拡大で逆に経費がかさんだりする矛盾、減反に協力しても得にならない現実などコメ農政の欠陥を追及。第六部の座談会では「自給率を支えるのはコメなのに、兼業農家が疲弊すれば将来が危うくなる」と指摘した。

第七部の「雇用拡大」は、自治体が農家を雇用する業者を入札で優遇するなど農外収入確保の模索例を紹介。四十回を超えた連載は第八、九部で農業ビジネスや農村の価値を取り上げ、第十部の提言で終える予定だ。

取材班デスクの長谷川武裕・編集委員は「規模拡大路線は水田農業という日本の現実を無視していないか、兼業農家こそが本当の担い手ではないかという思いで取り組んだ」という。取材班は報道部の須藤宣毅、元柏和幸、肘井大祐、柏葉竜、大泉大介記者。(審査室)

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