2008年 6月17日
地球の課題示す身近な存在

愛媛「えひめ 水を知る」「えひめ 水は語る」

生きる上で欠かせない「水」を、年間テーマに選んだ。身近な生活から出発し、地球規模の課題に結びつけようと試みている。一月から五月にかけ一面で、第一部から四部まで計三十八回にわたった「えひめ 水を知る」。月内には「えひめ 水は語る」が始まる。

「水を知る」は各部とも、さんずいの漢字一文字をタイトルとして効果的に使った。第一部は暮らしをうるおす「潤」。宇和島市の三浦半島の水荷浦地区には、数メートル間隔で枯れた井戸跡がある。干からびた底を見せる松山市小村町の泉。瀬戸内に浮かぶ越智郡上島町の魚島には一九九七年に導入された海水淡水化施設。水確保に知恵を巡らせた歴史があちこちにある一方で、石鎚山に連なる山々によってミネラルウオーターに恵まれる西条市のような所もある。

第二部は水という不思議な存在の「源」に、科学的な視点から迫った。人体の60%は水。体温調節にも欠かせない。松山大薬学部の葛谷昌之学部長が水を「すかすか」と言うのは、空気に触れた瞬間に二酸化炭素や酸素を溶かし込む水の構造を示すためだ。透析医療では、水の特性が患者の命をつないでいる。

第三部はあらゆる分野でいかされるので「活」。発電、米作り、酒造り。今治市の波方国家石油ガス備蓄基地のトンネル状貯槽は、地下水の圧力でLPGを閉じ込める。第四部は人々の生き方につながる「流」。清流で心身を清める「水行」。島を取り巻く潮流は観光資源でもある。水は食文化や習俗も生み出す。

これまで社会部、支社、支局の七人が担当し、各自が写真も添えた。「水は語る」では過疎や地球温暖化にも迫る予定。統括する奥村健・社会部副部長は「水は一番身近な存在で、さまざまな問題をはらみ、切り口もいろいろある」と語る。(審査室)

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