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2008年 6月24日
分権型社会への課題と提言
琉球「沖縄のかたち 道州制の行方」
きっかけは、ある県職員のエッセーだった。二〇一五年三月三十一日。翌日から「九州道」に編入され「県」がなくなるこの日、多くの県民は大きな不安とともに沖縄の将来と、過去のどの時点で進むべき道が分かれたのだろうかに思いをはせたという描写だ。
中央集権型国家から分権型国家へ―。地方自治の在り方を根本的に変革する道州制論議に目を向けてもらいたい。沖縄の姿を大きく変えるテーマに一月から二部、二十五回にわたり取り組んだ。
県内各層で横断的に組織する沖縄道州制懇話会は、沖縄の地理的特殊性や基地問題などの課題解決のため税財制上の特例を認める「特例型道州制」の考え方を打ち出した。第一部「模索の中で」はその課題を洗い出す。
単独州として自立するための最大のネックは財政基盤の脆弱(ぜいじゃく)さだ。一一年度には沖縄振興計画が期限を迎える。米軍基地を抱える沖縄は政府からの一括計上予算など振興計画による恩恵を受けている。だがこれは国の責任の下で作成されたもので、沖縄は独自に作成した計画を持たない全国唯一の県だ。単独州を目指すなら産業構造の転換など財政問題への取り組みが必要だと強調する。
第二部「協働の時代へ」は、道州制移行に際し不可欠な県から市町村への権限移譲に反応が鈍い実情や、市町村合併意欲の弱さを指摘。新しい組織の在り方を模索している佐賀県、県が実施する事務の市町村への権限移譲数で全国一位の静岡県の実態を紹介し、住民生活に身近な基礎的自治体が行政をする方向性を住民に提言している。
「読者に道州制論議のきっかけを提供したかった」と近藤好沖・政経部長。このテーマは今後も積極的に取り上げていくと語る。小山由宇、高良由加利、宮城久緒記者が担当した。(審査室)