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2008年 7月1日
「母なる川」がはぐくむ文化
山形「滔々(とうとう)と 最上川今昔」
最上川は山形県の「母なる川」だ。米沢・西吾妻の源流から酒田で日本海に注ぐまで二百二十九キロ。県内のみを貫流し流域面積は県土の四分の三を占める。かつては舟運の道として栄え、今も県民の暮らしと密接に結びつきながら滔々と流れる。「最上川の文化的景観」の世界遺産登録を目指す取り組みが地元で始まったことを契機に、最上川の歴史や文化、魅力を多面的に探り紹介しようと元日から毎月、七回続きの連載が続いている。
第一部「つなぐ」(一月)は、江戸期の川絵図に書かれた地名をたどり現在の姿と比べた。舟運の難所だった五百川(いもがわ)峡谷は今カヌーの名所。船着き場として繁栄した大石田河岸の塀蔵(へいぐら)の景観が再現され往事の面影を伝える。西回り航路の起点だった酒田港は近代的な海湾港として再生しつつある。
第二部「うたう」(二月)は、芭蕉の「おくのほそ道」の名句「五月雨を集めて早し最上川」や斎藤茂吉の短歌をはじめ、校歌や民謡、演歌、フォークソングの題材にもなった最上川に光を当てた。
第三部「はこぶ」(三月)は最後の船大工や姿を消した渡し船、運ばれた青苧(あおそ)、亜炭や方言の伝達などを取り上げ、第四部「いろどる」(四月)は紅花屏風(びょうぶ)、傘福(かさふく)、鏝絵(こてえ)、被衣(かつぎ)、雛(ひな)人形といった舟運がもたらした華やかな伝統文化を紹介した。第五部「つくる」(五月)では創作料理や鋳物作り、紅花染めを、第六部「とる」(六月)ではコイ、ハヤ、アユ漁などの今昔を取材した。
「本当に知らないことが多いのに気づかされた。テーマは動詞でつなぎ、掲載月の季節感も考えた。『滔々と』の題字は毎月、県内の書家に揮毫(きごう)してもらっている」と佐藤秀之・報道部副部長。このあと第七部「いのる」(七月)は出羽三山の信仰などを取り上げ、年内いっぱい十二部まで続ける予定。取材班は小関裕之キャップ以下、報道部、支社の記者七人。(審査室)