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2008年 7月8日
温暖化で尾瀬にも異変が......
上毛「地球とともに」
昨年、日光国立公園から独立した尾瀬国立公園。ミズバショウなどが有名な湿原は今年も本格シーズンを迎えたが、その尾瀬に近年、異変が目立ち始めている。地球の温暖化問題をテーマに四月から始まった連載の第一部「異変」(六月まで計十回)は、まず地元・群馬の自然財産のシンボルである尾瀬で起きている変化に目を向けた。
かつて尾瀬にシカはいなかったという。しかし近年になって急増し、二〇〇七年には五百頭を超えた(環境省調べ)。シカはミズバショウ、ニッコウキスゲなどの植物を食べ荒らす。このまま増え続ければ、植生の乱れなどで「湿原はもたない」と関係者は心配する。急増の原因の一つに挙げられているのが温暖化による雪の減少だ。雪が減ってシカが越冬できるようになり、生息域が広がったというのだ。
尾瀬の危機はそれだけではない。連載は温暖化に伴う気温上昇や降水日の減少で地域の乾燥化が進み、低温の山岳地に自生するオゼソウなど貴重な「氷河期残存植物」が影響を受け始め、三十種に及ぶトンボなど、湿原の生物の生息が脅かされている現状も報告した。
温暖化の影響とみられる足元の異変はまだある。昨年は榛名湖の氷が十分に張らず、冬の氷上ワカサギ釣りが初めて中止に。また昨年八月、最高気温が二日続けて四十度を超えた館林市は三十五度を超す猛暑日も十四日間連続するなど熱帯さながらと化した。ナガサキアゲハなど南方系の昆虫の目撃や捕獲が相次ぎ、猛暑によるコメなどの品質低下も目立つ。
日曜日付けの一面トップに掲載。「尾瀬の異変は予想以上に進んでいる。温暖化問題への読者の関心は高い」と高橋徹・報道部次長。三部までを予定。小田川浩道・同部キャップら十人以上の記者が取材班を組む。(審査室)