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2008年 8月26日
消えることのない思いつづる
福島民友「今に生きる会津の魂―戊辰戦争140周年」
戊辰戦争で白虎隊の悲劇を生みながら敗れた会津藩。「賊軍」とされ斗南(となみ)(下北半島)に転封、明治以降も不遇をかこつという苦難の道をたどったが、「義」を重んじた行動に共感する人も多い。四月から週一回の連載(現在十七回)は、毎回ゆかりの人々にインタビューしながら、戊辰の精神が現代の会津人にどう継承されているかを探る。
会津藩の歴史を「塗炭の苦しみ」と表す会津史談会長は、山口(長州)との交流について「仲良くするのはいい。だが仲直りはできない」との古老の言葉を引き、「まだ百四十年しかたっていないのだから」と今も消えることのない思いを代弁する。会津若松の子ども会が毎年夏に行う県外研修は全国の会津ゆかりの地を訪ねているが、萩にはまだ足を踏み入れていない。「会津と薩長との握手には、なお理解のための時間が必要」(会津戊辰戦争慰霊のつどい実行委員長)との意見は根強い。
一方、蛤御門の変では会津が長州をいじめたなどの史実を指摘し「いつまでも恨んでいることはない。維新を導いた功労者として互いに握手するべき」(秋月悌次郎顕彰会長)とする意見もある。戊辰戦争を教える中学教諭は「薩長など、いろいろな視点があることも教えたい」という。「こういう見方が会津にも生まれてきているのは意外だった」と菅野篤報道部長。
「ならぬことはならぬものです」で知られる、藩士子弟の心構えを説いた「什(じゅう)の掟(おきて)」は会津の魂そのもの。それを基に六年前「あいづっこ宣言」が作られ今も小中学校で活用されている。「ひきょうなことをやらない正直さ、純粋さ、まっすぐ生きるという教えは、現代にも受け継がれているはず」(藩校日新館長)。
若松支社報道部の佐藤掌部長ら四記者が担当。九月には記念シンポジウムも開催する。(審査室)