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2008年 9月9日
教訓伝え、地域の課題を探る
下野「豪雨と濁流の記憶 那須水害から10年」
「ゲリラ豪雨」。この夏を特徴づける言葉だ。全国各地で局地的な大雨が降り、予期せぬ被害が相次いだ。そんな中で、連載(八月二十一日から六回)は十年前、記録的集中豪雨で栃木県の那須地方に大きな被害をもたらした「那須水害」に焦点を当て、水害の実相を伝えるとともに防災に向けた新たな課題を探った。
一九九八年八月二十六日から三十一日まで六日間の連続雨量が一二五四㍉に上った那須町。二十七日には最大時間雨量九〇㍉、日雨量六〇七㍉を記録。この集中豪雨で町内の川がはんらん、濁流が橋や道路、住宅、田畑などをのみ込み、同町と旧黒磯市だけで四人が死亡、二人が行方不明になった。
「四千年に一度」ともいわれた豪雨は「濁流と化した余笹川が、窓から助けを求める夫婦を家ごと押し流していく」といった悲惨な光景を生んだが、気象庁のデータでは国内の集中豪雨発生数は九八年以降の十年間で大幅な増加傾向を示し、大規模な水害がいつ起きてもおかしくない状況だ。
変わったのは気象だけではない。那須水害時、那須町では被災を免れた地区の農家らが早々と炊き出しを始めるなど農村に根付く互助精神が復興の力になった。しかし、人口が約二万七千人の同町は今「高齢化や生活様式の変化に伴う自治意識の低下が懸念されている」という。高原地域の別荘などへの転入者が増えたが自治会加入が少ないなどコミュニティー内の住民連携が当面の課題だ。連載はこのほか、災害時に欠かせないボランティア活動や心のケア問題なども取り上げた。
佐藤洋・那須塩原支局長は「住民意識の変化なども踏まえながら水害の教訓を風化させないことが大事」と語る。河又弘子・地域報道部デスクの下で佐藤支局長のほか福田守、根津知広、永島理絵記者が担当。(審査室)