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2008年 9月30日
過酷な医療現場、課題示す
高知「医師が危ない 密着、高知医療センター脳外科」
高知県立中央病院と高知市立市民病院が統合、県下の医療をリードする基幹病院として三年前に設立された高知医療センター。ほぼ四か月間にわたって密着取材した一人の記者が見たのは、一人何役もこなし、いつ倒れてもおかしくない脳神経外科医たちだった。二月から七月まで夕刊一面、社会面で計五部、四十七回。医師不足の中での医療の課題が見えてくる。
第一部「残業200時間の世界」は、掛水雅彦編集委員が同センターの溝渕雅之医師(48)に二年前、会ったところから始まる。脳神経外科と救命救急科に属し、残業続きの上に夜に救急で何回も呼ばれ、一睡もせず朝から外来診察という生活に疲れ、医師は辞表を提出したばかりだった。医師の増員があり、気を取り直して辞表は取り下げたものの、他の病院のしわ寄せもあって長時間残業は変わらなかった。
第二部「過酷な現場」は、一刻を争う疾患を多く扱う脳神経外科の激務を泊まり込みで紹介、第三部「みんな忙しい」は他の科の奮闘に触れる。第四部「驚きの『防波堤』」では、専門医を守る仕組みが機能する他の病院を見た。高知赤十字病院には救急車の患者に初期対応する部があり、専門科の負担を減らしていた。
第五部「難局の向こうに」では、同センターを去った溝渕医師が岡山市の民間病院勤務として登場。県民のための政策医療を抱え過ぎる旧職場を心配する。かつて同じように一か月二百時間を超す残業があった青森県立中央病院脳神経外科は、手術患者中心に特化され、負担を減らしていた。高知医療センターでも、救急外来の当直体制が六月から変わるなど、少しずつ改善されつつある。
掛水編集委員は「医師の大変さを患者側などに知ってもらい、現場の改善につながればと考えた」と語る。(審査室)