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2009年 2月3日
激変する一次産業の現場から

デーリー東北「食を創(つく)る 生産基地・北奥羽」

青森県の食料自給率は118%。同県を含む北奥羽は日本の「食」を支える屈指の供給基地だ。しかし国際的な食料争奪激化など食をめぐる環境は激変、この地域にも荒波が押し寄せる。そんな状況下、あらためて「食を生産する意義」を問い直そうとする年間企画が新年から始まった。

元日一面から三回連載のプロローグでは二〇XX年という近未来を想定、農畜産業や水産業が課題を克服して「もうかる仕事」となった姿を描いた。小麦などの輸入が困難になりコメの価値が向上、農業をビジネスとして取り組む営農組合が高品質のコメ作りや米粉商品開発などに成功する。県産牛はブランド名を統一しての売り込みが当たって人気を呼び、八戸港の冷凍イカは資源管理や衛生面の安全向上が奏功して海外でも評価を高める。

しかし現実は厳しい。第一部「このままでは...」(五回)は一転して生産現場の苦境を伝える。年末に八戸港を出た小型イカ釣り船の十三時間に及ぶ漁の水揚げは数万円。燃料代は六万円。船長は「燃料代にもならない」と嘆く。漁船の老朽化も進む一方だが更新する費用がない。「自然淘汰(とうた)されるかも」と漏らす船主。

消費減退による価格低迷が響き、同県の稲作農家が二〇〇七年にコメ販売で得た平均年収は五十六万円。農外所得と年金収入でようやく総所得三百三十万円余。農業離れに歯止めがかからず県内農家は一九七〇年当時から半減。三人に一人は六十五歳以上だ。農業を若者が安心して選択できる職業に変えられるのか。

第二部以降、流通や食卓など幅広い視点で取り組んでいく。「食の重要さは増す一方なのに生産現場は青息吐息。それでいいのか、どうすればいいのか。みんなで考え直す契機にしてもらいたい」と木村和彦報道部次長。取材班は熊谷勝之、根市大樹記者ら。(審査室)

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