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2009年 2月24日
書いて深めたい家族のきずな
中国「サポートブック 親子のうたがききたくて」
がん患者らと家族が思いを書き込む絵本仕立ての小冊子「サポートブック」が広島に誕生した。医療関係者や市民たちでつくるチームが制作、無料で活用を呼びかけている。冊子に書かれた言葉を軸にした連載は、家族のきずなが感動的だ。
元日から社会面で始まった第一章は「がんとの日々で」、八回。呉市の乳がんの女性(38)は長男へのメッセージを夫婦で書き込み、夫が読み上げた。「十八歳になった僚太郎へ―。好きな人はできたか。友達は多いじゃろうの!」「悩みごとがあったら話してくれよ」。まだ十歳の長男は照れ笑いを浮かべていた。広島市内の訪問看護師は、卵巣がんで母を亡くした小六女児に、母の闘病中の言葉を書いて渡したいと思った。「ありがとうすら言えていない。大きくなっても喪失感を埋められない」。負担をかけまいと、病気のことを子に知らせなかった母の心は揺れていた。通夜から三か月、女児は母のことを書いた。「やさしくて、あたたかくて、わたしの目標の人」
二月十二日から掲載中の第二章「日赤小児科病棟」は十五回。広島赤十字・原爆病院に入院した四人の子と家族を取り上げた。悪性リンパ腫の小四男児には、小六の兄が骨髄移植。でも再発。「出来る事は言ってくれれば何でもするよ」。弟を思う兄へは母が書いた。「頑張りすぎないでね」。骨髄性白血病の四歳女児は、離婚した父(32)に引き取られた後に発症して二年。父は書いた。「形や言葉では表現できない大切なものをこの子が、この病気が与えてくれた」
報道部の木ノ元陽子、平井敦子、城戸収記者とカメラの高橋洋史映像部記者が担当し、半年続ける予定。キャップの木ノ元記者は「ストーリーをつづることで親子、家族関係を見つめ直してもらいたい」と語る。(審査室)