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2009年 3月3日
困難を乗り越えた向こうには

琉球「その先にあるもの」

困難に遭遇しても、前に進むために「今」と向き合い、一歩を踏み出そうと試行錯誤する。そんな人たちの「その先」にあるものを描いた連載は元日紙面から二十二回、十三人を紹介した。

昨年の大みそか。完全復活しNHK紅白歌合戦の舞台に立った人気グループSPEEDのメンバー、今井絵理子さんは、「愛してる」の歌詞を手話で表した。息子の礼夢(らいむ)君(4)へメッセージを込めたのだ。二〇〇四年十月。出産から三日後に医師から、礼夢君に音がほとんど聞こえない重度の障害があることを告げられた時、止めどなく涙がこぼれた。だが泣いたのは一日だけ。息子を抱きしめ「今いる息子を見詰め、すべてのことを受け止めよう」と誓った。

六か月後、ギターを弾いて歌う自分の姿をじっと見ていた礼夢君がはじける笑顔を見せた。今井さんが再びマイクを持つことを決心した瞬間だ。今年は「歌を放つ年にしたい」と言う。歌を子どもたちの笑顔につなげたいと願っている。

一九九六年に次男(当時高校二年生)を、同級生らによる集団暴行事件で亡くした石垣市の五十四歳の女性は事件当時、「少年法の壁」に阻まれ事件の詳細を知り得なかった。この不条理に直面し「少年犯罪被害当事者の会」を設立。被害者の声を上げ続けた。少年法の改正で遺族に事件記録の閲覧が可能となったいま、次男の死を乗り越え、沖縄県内の学校で「命の授業」を開いている。

連載では病気や事故で突然、日常生活が困難になった人々の社会復帰の姿、人生模様も描かれる。いずれの場面にも周囲の支えや、本人の強い意志が映し出されている。「暗雲立ち込める社会で、希望の兆し、光を読者に感じてもらいたかった」と社会部の新垣毅・遊軍キャップ。記者九人が取り組んだ。(審査室)

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