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2009年 3月10日
厳しい現場、体当たりで取材
河北「漁場が消える―三陸・マグロ危機」
日本人の食生活に欠かせないマグロ。しかし、すしブームなど世界的な需要増で資源が減り、漁獲規制で減船を迫られるなど、マグロ漁は危機に直面している。新年からの企画は、東北と世界を舞台にしたマグロ漁の現実を生々しく伝える。
元日別刷り特集とプロローグに続く第一部「魚影を追って」(十回)は、気仙沼の近海はえ縄船「海青丸」(一四九トン、十四人乗り組み)に昨年末一か月間、沼田雅佳記者が同乗した記録だ。「波が爆発した」「海に鉛色の壁が...」「風がうなる」などの描写や迫真の写真が、冬の太平洋の荒波の中で昼夜の別なく続く過酷な仕事ぶりを伝える。「陸(おか)では想像もつかない驚きの連続だった」という。しかし厳しい漁で得たマグロの生産者価格は低く抑えられ、乗組員からは「努力がなかなか報われない」「稼ぎも陸の仕事に負けちゃった」とのぼやきが聞かれる。「明らかにマグロは減った」という危機感も、彼らは肌で感じている。
第二部「帰らざる船」(七回)は、遠洋マグロ漁の海外基地ケープタウン(南アフリカ)を拠点に操業する三陸の船を、大友庸一記者が現地取材した。漁獲効率の低下で、十か月程度だった一航海が今は一年を超える。船が帰国する回数は減り乗組員が空路往復する。インドネシア人乗組員も多くなった。人件費の安い台湾船に対抗しなければならないからだ。国別漁獲枠の制限などを免れるため、日本船の南アへの転籍も検討されている。
第三部「陸の闘い」(七回)は転職した元漁師らの苦闘。第四部以降は揺らぐ漁港や減船政策、台湾やインドネシアにも取材を広げる。「マグロ漁の厳しい現実を世界的な視点で知ってもらいたい。その上で将来を考える材料が提供できれば」と大江秀則報道部デスク。取材班は他に昆野勝栄キャップと坂井直人、山崎敦記者。(審査室)