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2009年 3月17日
リプレース計画の〝激震〟検証
静岡「浜岡原発の選択」
中部電力浜岡原子力発電所がある静岡県御前崎市が〝激震〟で揺れている。1、2号機廃炉と6号機新設をセットで進めるリプレース(置き換え)計画が震源だ。中電の発表(昨年十二月二十二日)の九日前にスクープ、記者たちの熱情が昨年暮れからの連載を読み応え十分の力作にしている。
地元にとってリプレース計画は青天の霹靂(へきれき)だった。過去に五基の原発を受け入れてきた。「原発には慣れっこ」。そんな見方をされる御前崎市民の間にも「これまでとは別次元の問題」との見方が目立つ。浜岡原発は東海地震の想定震源域の真上にある。住民は耐震補強工事で停止中の1、2号機が二〇一一年三月までに運転を再開すると信じていた。国内初となる先駆的な計画だが、中電側から具体的な内容はまだ示されていない。「賛否の行方を決める『長い議論』は始まったばかりだ」。連載は住民たちの不安やいらだち、中電への不信感を伝える。
昨年暮れのプロローグ(三回)を経て、一月から第一部「廃炉」、第二部「新設」が各六回。浜岡にとどまらず、日本の原発が抱える課題を追う。廃炉が進行中の茨城県東海村と福井県敦賀市の原発。新設計画が白紙撤回された三重県南伊勢町、石川県珠洲市など。現地取材を通して連載は、廃炉ラッシュの時代が目前に迫る中で「いまだに道筋が見えない放射性廃棄物の処理方法」、リプレースの背景にある「新規立地の困難さ」などを浮き彫りにしていく。
植松恒裕社会部長は「原発とどう向き合うか。リプレース問題浮上を機に全否定するのではなく、冷静に考えてみてほしい」と訴える。社会部の鈴木誠之、松本直之両記者と関本豪・御前崎支局長が核になり取材班を編成。今後は浜岡の歴史を振り返るとともに、原発が観光や漁業、地域社会にどう影響するかを探るという。(審査室)